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究極の暖房 Wärmepumpe(ヒートポンプ)とは?

投稿日:2023年5月10日 更新日:

究極の暖房 Wärmepumpe(暖房ポンプ)とは?

ドイツでは Wärmepumpe が究極の暖房と言われている。

ガス(軽油)を使ったセントラルヒーティングよりエネルギー効率が

「比較にならない」

ほどいい。

おまけに二酸化炭素を出さない。

これからは

“Wärmepumpe”

が主流になる。

その”Wärmepumpe”を巡って独・米・中・日本企業の間で市場獲得競争が勃発した。

建造物エネルギー法の影響

ここで紹介した通り

“Gebäudeenergiegesetz”(建造物エネルギー法)

が施行され、オイルやガスを使った暖房設備の廃止が決まった。

環境を救え! “GEG” 建造物エネルギー法施行

正確には病院や学校など、一部、例外措置はある。

それ以外のケース、アパートや戸建て、あるいはオフィスビルまで新築物件は

「環境にやさしい暖房設備」

を設置しなくてはならない。

既存のアパートや戸建て、あるいはオフィスビルも今の暖房設備が壊れたら終わり。

環境にやさしい暖房設備を導入しなくてはならない。

結果、

「それ急げ!」

と、ドイツ人が環境に優しい暖房機器に

「津波」

のように押し寄せている。

環境にやさしい暖房① Fernwärme

では環境にやさしい暖房とはどんなものがあるんだろう?

一番便利なのは、皆さんが住んでいる町の

「ごみ焼却場」

で発生する熱を利用して、各家庭に熱いお湯を送る

“Fernwärme”(遠距離暖房)

を提供しているケース。

そんな運がいい町に住んでいると、ごみの価格は上昇していないので、安価な暖房を導入できる(筈)。

環境にやさしい暖房② ペレッツ暖房

次善がペレッツ暖房。

木材加工の際に出る廃材を固めた

“Pellet”(ペレット、複数形でペレッツ)

を暖房に使用する。

ロシアがウクライナに侵攻、ガス価格が爆発すると、

「ペレッツが安い!」

と、大勢がペレッツ暖房に殺到した。

お陰でペレッツの価格は一時、3倍になった。

今では2倍程度に落ち着いているが、建造物エネルギー法の導入で需要はさらに増す。

結果としてペレッツ価格は高値安定しており、

安価な暖房手段とは言い難い。

ただ環境には優しい。

環境にやさしい暖房③ Wärmepumpe

残る環境に優しい暖房が

“Wärmepumpe”(ヒートポンプ)

という装置。

日本に住んでいると聞いたことがないだろうから、詳しく解説します。

究極の暖房 Wärmepumpe(ヒートポンプ)とは?

まずは名前から始めよう。

“Wämepumpe”

をそのまま訳すと、

「暖かいポンプ」

で意味が分からない。

日本では

「暖房ポンプ」

あるいは

「ヒートポンプ」

の名前で呼ばれている。

 

導入費用は高いが、エネルギー効率が素晴らしく高い。

質問
だから?

 

ランニングコストが低く、4年ほどで高価な投資費用を回収できる。

以降は安価に暖房できる上、二酸化炭素を出さない。

これ以上に理想的な暖房はない。

暖房ポンプ戦争勃発!

ドイツには約4000万の家庭がある。

その大多数が

「暖房ポンプが欲しい!」

と問い合わせを始めたから、暖房ポンプ業界は

「もう問い合わせを送るのは辞めて!」

というくらいの活況に沸いている。

これをみたアメリカの会社、

「ぼろ儲けのチャンス!」

とドイツの”Wärmepumpe”メーカーの最大手、”Viessmann”を買収した。

流石

「気を見るに敏」

で知られるアメリカ人。

金儲けのチャンスがあると、日本人みたいに

「買おうかな、買わないかな?」

と迷わない。

一気に勝負に出る。

ドイツの最大手のヴィスマンの買収で、”Wärmepumpe”戦争が勃発した。

ドイツには中国、米国、ドイツ、そして日本企業が暖房ポンプ市場で

「四つ巴の戦い」

を展開している。

最大の市場占有率を誇るのは、日本人の好きな言葉を使えば

「コストパフォーマンス」

が最高の中国企業。

これにドイツメーカーと米国メーカーが続く。

そう、日本のメーカーは最下位だ。

が、今回の買収で形勢が変わった。

アメリカ企業がドイツを抜いて、第二位に躍り出た。

アメリカ人の狙いは

「”Made in China”は嫌だ。」

という富裕層のドイツ人を狙ってる。

今後、大量生産にものを言わせて価格を下げると、とりわけ日本メーカーは辛い。

またしても日本勢は負け組?

そもそも”Wärmepumpe”は日本のエアコンのようなもの。

機能はちょっと複雑だが、日本企業の

「お家芸」

である筈だ。

なのに、出遅れている。

その日本勢で一番元気があるのは

「空調のダイキン」

だ。

が、ダイキンは

「超高級路線」

を採用している。

折角、デユッセルドルフに事務所があるんだから

「これからはWärmepumpeが売れるぞ!」

と本社を説得、販売路線を拡大、安価なモデルを用意してくるかと思いきや、

「まずはカタログをご請求ください。」

とまるで高級車の販売方法。

今時、メルセデスでもBMWでもホームぺージ上で好きなエンジン、色、車体、装備を選んで、車が買える時代だ。

なのに

「カタログ販売」

はなかろう。

これでは台数は売れない。

ここでも中国企業の”Midea”、それに”Hisense”が、おいしい商売を独占しそうだ。

売れないヒートポンプ

2023年は

「飛ぶ鳥を落とす勢い」

だったヒートポンプが2024年

「全然売れない。」

という状況に陥っている。

最大の理由は冒頭で述べた建造物エネルギー法。

法律の草案策定の段階で、

「ガス・軽油暖房は環境保護の観点から、禁止すべきだ。」

などと無茶苦茶な要求を上げる緑の党。

政府が

「禁止」

というとこれに殺到するのが国民で、

「禁止される前に我が家の暖房を入れ替えておこう!」

とガス・軽油暖房の人気が急上昇。

加えて信号政権は

「2024年の国会予算が足りない!」

金の切れ目が縁の切れ目?信号政権破綻の危機

と数々の補助金を廃止した。

電気自動車の購入補助金がいい例で、まだ2年先まで続くはずの補助金を12月末で終了した。

国民は

「Wärmepumpe補助金も同じ運命に遭う。」

と購入を控えた。

結果、環境に優しいWärmepumpeの代わりに、二酸化炭素を大量に出すガス・軽油暖房が馬鹿売れしている。

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執筆者:

nishi

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