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環境を救え! “GEG” 建造物エネルギー法施行

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環境を救え! "GEG" 建造物エネルギー法施行

脱二酸化炭素の波が、いよいよ一般家庭にも押し寄せた。

それは”GEG”と呼ばれる法律。

だだでも複雑な内容なのに、法律施行後もまだ

「要手直し」

で、修正が加えられた。

結果、ネットには改定前と改定後の情報が錯綜。

まるで迷路のよう。

と~っても複雑で、一般市民が理解できる代物ではない。

そこでできるだけわかりやすく解説しておきます。

事の始まり

事の始まり

人間が作り出した地球規模の問題、地球温暖化。

日本でも毎年、

「異常気象」

で多くの人が命を落としている。

なのに日本では若い新人タレントが売り込みの一環で、

「SGD’Sは大事です。」

とテレビ番組で下書きを棒読み、好感度を増す努力をするだけ。

国民はからっきし関心がない。

我が子の将来が脅かされているのに、両親は全く気にする様子がない。

その若い世代は自分たちの未来が脅かされているのに、携帯に熱中するだけ。

環境には全く興味がない。

これが西欧になると、全く逆。

“Letzte Generation”(最後の世代)

と呼ばれる若年層が美術品・芸術品にペンキをぶっかけたり、道路を封鎖するなどして、抗議行動に出ている。

正直、

「邪魔するな!」

と腹が立つ。

出勤ラッシュの道路を封鎖しても、地球を救うことはできないからだ。

が、若者は彼らの世代が破壊された環境の

「ツケ」

を払わされるのに抗議、

「なんとかしろ!今すぐ!」

と訴えている。

EU-Gebäuderichtlinie EPBD & EU-Energieeffizienzrichtlinie EED

環境保護運動の高まりを受けて、EUがさまざまな環境保護政策を決定した。

二酸化炭素は

  • 交通
  • 産業
  • 暖房

の三分野で最も大きく排出される。

交通部門では、内燃エンジンの販売を2035年で終える事が決まった。

産業は二酸化炭素を排出しない製造方法に、転換中。

残るは暖房のみ。

ドイツではガス暖房とオイル暖房が圧倒的に多く、この分野で大きく二酸化炭素の排出量を削減する

「伸びしろ」

があった。

そこでこの分野で二酸化炭素の排出を削減する規定

“EU-Gebäuderichtlinie EPBD” &EU-Energieeffizienzrichtlinie EED

をEU議会で決議、加盟国に

「2023年までにこの規定に沿った、法整備をしなさい。」

となった。

“GEG” 建造物建造物エネルギー法施行

"GEG" 建造物暖房法施行

そこでドイツ政府がとった政策が、

“Gebäudeenergiegesetz”(建造物エネルギー法)

略してGEG。

簡単に言うと、この法律で建造物の中に設置される暖房設備を

「これにしなさい!」

と法律で定めたもの。

すなわち!

あなたが不動産を所有しいなければ、直接には関係ありません。

ただ間接的には関係あります。

質問
どうしてですか?

 

あなたのアパートにも暖房設備が有りますよね。

これが入れ替えになるかもしれないからです。

右往左往

ここからドイツ政府の右往左往が始まる。

環境大臣に就任した緑の党のハーベック氏は、ちゃんと考えないで発言をする事で有名だ。

そのハーベック大臣はここでもその威力を発揮、

「2024年までにすべての暖房を、環境に優しい暖房設備に取り換えろ!」

とやった。

一軒家の暖房設備でさえ、1000ユーロや2000ユーロで変えられる代物じゃない。

何万ユーロもかかる。

これが複合住宅なら、もっと費用がかかる。

それを

「2年以内にすべて取り換えろ!」

と言い出したものだから、たまったものではない。

真っ先に反対したのが、大家の声を代弁する連立パートナーのFDP。

SPDでさえも、

「そんな無茶な。」

とハーベック大臣の方針には懐疑的。

連立政権はメデイアを通じての非難の応酬、ボロボロの姿を国民に誇示した。

無口なショルツでさえ、

「これは辛抱たまらん。」

“Klasur”(作戦会議)

の開催を下達、三党が集まって妥協策を探すことになった。

数日にわたって行われた会議(けなし合い)の結果、ハーベック案は

「ボツ」

になった。

オイル・ガス暖房の不動産を所有する大家は、そのまま暖房設備を使ってもいい事になった。

現存の暖房設備が壊れても、修理できるなら、修理してもいい。

環境に優しい暖房設備に交換が必要になるのは、

「もう修理不可能。」

となってから

さらに!

「壊れたけど、環境に優しい暖房施設を導入する大金がない!」

という大家は3年間だけの使用に限り、オイル・ガス暖房に入れかえることも可。

加えて80歳以上の高齢の大家は、そもそも暖房設備の交換義務から外される。

環境に優しい暖房施設を導入する

「義務」

があるのは、断熱処置を施した家屋・アパートを新築するときだけ。

環境に優しい暖房設備とは?

では環境に優しい暖房設備とは何だろう?

そのひとつが

“Wärmepumpe”(暖房パイプ)

だと言われている。

簡単に言うと、周囲の環境から暖房に使用するエネルギーを得る暖房システム。

当然、化石エネルギーを燃焼しない。

が、欠点もある。

まずは費用。

1万ユーロで済むことはまずない。

2万ユーロ近くかかる。

そして日本の石油ストーブのように、

「一気に暖かくなる。」

というものではない。

寒い日にはパイプが凍って、作動しないこともある。

この暖房パイプが向いているのは、壁に断熱材が入っている比較的に新しいアパートに限られる。

断熱材が施されていない古い家屋、言い換えれば日本のような隙間だらけの家屋では、暖房パイプで得られた暖かい空気が逃げて、暖房の役を果たさない。

そのような家屋の所有者は、ガス+水素で暖房できるシステムに変えなくてはならない。

が、欠点もある。

そもそもドイツ中の家庭で水素を使って暖房できるほどの

「グリーンな水素」

が存在していない。

そこでハーバック案では、

「水素の割合が75%以上である事。」

となっていたが、

「水素の割合が55%以上である事。」

とハードルが下げられた。

もっと詳しく知りたい方は、こちらの消費者団体のホームページをご覧ください。

残る争点

これで一件落着とはならなかった。

国民に何万ユーロもの設備投資を要求する国は補助金を出して、国民が環境に優しい暖房に投資するように説得したい。

が、問題は財源。

来年は、国防費の大幅増額は避けられない。

加えて高騰したエネルギー価格を抑制するための補助金に大金が要る。

国民健康保険はコロナ禍で大赤字。

国が税金を出して支える必要がある。

さらには”Kindergrundsicherung”(子供基本給金)もやってくる。

財務大臣は、

「補助金に回せる金はない。」

と発言、ハーベック環境大臣と犬猿の仲。

結果として国民は、補助金が出るかどうかわからないので、環境に優しい暖房への投資を控えている。

連立政権の次の大喧嘩は時間の問題だ。

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執筆者:

nishi

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