
今回はドイツの車メーカー VW がテーマです。
会社側は人員削減と工場閉鎖を要求して、労働組合と対立。
当然、
「合意なんて、絶~対無理!」
と思っていたんです。
ところが2026年9月3日、フォルクスワーゲン社の役員会議で、
“Sanierungsplan”(再生案)
が合意を見た。
この予想外の出来事に、株価は大いに上昇。
労働組合は何故、同意したのだろう。
この記事の目次
落ち目になったワケ
かってはトヨタと
「どっちが世界一?」
を競ったVW。
今やその面影すらなく、すでにジリ貧状態。
このまま放っておけば、ドカ貧は目に見えている。
そこでまた、人員削減が必要になった。
まずは排ガススキャンダル。
これがトラウマになった。
そこでVWは他社に先駆けて、
「電気自動車への転換」
を早急に推し進めた。
これが失敗だった。
皆さん、ご存じの通り初期の電気自動車は
- 滅茶苦茶高い
- 充電に時間がかかる
- 充電柱などのインフラが不十分
などの理由で、期待したほど売れなかった。
同じ失敗を犯したのはメルセデス。
ケレーニウス社長は
「2030年にはすべてのモデルを電気自動車にする。」
と豪語。
その後、この約束をこっそり取り消した。
唯一、BMW だけは
「ゆっくり電気自動車へ転換していく」
という戦略を採択。
これが功を奏した。
増え続ける歳出
さらに!
VW は肝心要のソフトウエアの開発に失敗した。
- エラーばっかりで
- 高価で
- 充電する場所に欠ける電気自動車
なんぞ、売れるわけがない。
そこで VW は高い金を払って、ソフトウエアを他社から買い入れた。
こうして歳出は膨らんだが、電気自動車が売れないので、財政悪化。
さらに!
「電気自動車で一番高価な部品」
である充電池は、中国製。
言い替えれば、
結果、高価な電気自動車が売れても利鞘が低く、儲からない。
その
「売れても儲からない電気自動車」
は大量に売れ残り、財政悪化を招いた。
中国市場での販売減退
しかし、何といっても最大の
「ローブロウ」
は、中国市場での販売減退だった。
かっては中国市場で市場占有率No.1だったのに、今や市場占有率は13.9%。
10年前はまだ16.2%だった。
わずかな差のように見えるかもしれないが、世界一の自動車市場では133万台もの差になる。
比較を出してみよう。
今、日本では
「マツダの新モデルが1万7000台売れた!」
と大騒ぎしている。
文字通り、桁が違う。
まとめると
- 製造コストの高いドイツで
- 電気自動車を作っても売れず
- 売れても儲からず
- 大量に売れ残り
- 中国市場での販売減で
- 100万台の過剰生産能力を抱えて
VW はジリ貧に陥った。
VW 法
同じように窮地に陥った日産は、
- 本社ビルを売却
- 生産工場を閉鎖
- 人員削減
を実施した。
しかし VW では
「人員削減」
すら、容易にできない。
ドイツには二つの法律がある。
ひとつは
“Grundgesetz”(基本法)
というドイツの憲法。
で、もうひとつは
“VW-Gesetz”(VW 法)
だ。
この法令はそもそも、
「敵対買収を防ぐ為の規則」
として導入された。
が、出来上がったのは
「社会主義の経典」
で、VW 内であらゆる競争を禁止している。
会議で注文するコーヒーの注文先まで
「労働組合が経営するカフェに注文すべし」
と決まっている。
足元を見た労働組合は、スターバックスよりも高い料金を要求している。
これがどんなに理不尽でも、変更は不可能。
さらに!
VW 法で州政府が、取り締まり役員を送り込む事を認めている。
結果、
さらに!
ドイツでは労働組合の代表が、取り締まり役員に就任する。
彼(女)が、人員削減に同意することはない。
この為、2026年7月に社長が出した
「VW 再生案」
は、労働組合の猛烈な抵抗に遭い、失敗に終わった。
VW 再編案
ところがである。
社長のブルーメ氏は8月、さらに過激な再編成を出してきた。
それは
VW 法は、本社だけに効くので、
「車を製造している部署は子会社にしてしまえ!」
というわけだ。
すると人員削減は子会社の決定なので、VW法令の束縛を受けない。
加えて会社側は
- 10万人の人員削減
- 採算の取れない4工場の閉鎖
を要求した。
勿論、労働組合はこの案に猛反対した。
「とてもじゃないが、合意は到底無理。」
と思っていたら、9月3日の夕刻、
「役員会は全会一致で、再生案を採択した。」
と報道された。
このニュースにVWの株価は一気に高騰。

何故、労働組合、それに州選出の役員は再生案に同意したのだろう?
VW 再生案合意でも危機脱出には程遠いワケ
やっとここからが本題です。
労働組合がVW 再生案に同意したのは、
「最悪の事態を避けるための譲歩」
の賜物です。
まるでレーニンのように会社の上層部を攻撃していた労働組合の代表だが、
「このままでは VW はオワコン。」
とわかっていた。
ここで要求を完全拒否すれば VW は
「ドカ貧」
になり、労働者はもっとひどい目に遭う。
そこで
- 工場閉鎖を現時点では見送り
- ホールディング化を棚上げ
する事を条件に、5万人の人員削減に同意した。
もし労働組合の代表が工場閉鎖に同意していたら、労働者から
「裏切者!」
とみなされて、支持を失っていただろう。
そこは社長も承知の上。
そこで
「工場閉鎖については今後の協議で決める。」
という内容で同意した。
お陰で労働組合の代表は
「工場閉鎖を回避することに成功した。」
と、成果を報告できる。
避けられない工場閉鎖
問題はこれから。
VW は未だに100万台もの
「過剰な生産体制」
を抱えている。
さらに!
膨大な設備投資をした工場が9時~18時までの
「8時間操業」
で車を組み立てても、ドイツの高い人件費では赤字です。
最低でも
「16時間労働」
で生産しないと、利益が出ない。
しかし16時間労働で車を生産すると、売れ残ってしまう。
結局、生産性の低い工場の閉鎖は避けられない。
これが実施されない限り、5万人を削減しても
「大きな節約効果」
は出てこない。
言い替えれば
に VW の将来はかかっている。
工場売却
その
「生産性の低い工場」
のひとつが、オスナブリュックにある工場だった。
この工場に目を付けたのが、イスラエルの防衛産業だった。
ドイツはイスラエルと米国が共同開発した
“Iron dome”
の導入を決めている。
イスラエルはその製造拠点をドイツで探しており、
「相思相愛」
となった。
残る3っの工場は、VW の中国でのパートナーに
「レンタル」
することが協議されている。
これなら労働組合もそれほど反対はしない。
勿論、最初はレンタルで初め、
「ほとぼり」
が冷めたら売却する。
その後、中国人オーナーが
「採算が取れない。」
と工場を閉鎖しても、もうVW法は届かない。
これに成功すれば、電気自動車ブームを迎えた今、
VW が復活する可能性は十分にある。
でも株は買いませんけどね。


