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【ドイツ経済】原発廃止が景気後退を招いた?

投稿日:2025年1月9日 更新日:

【ドイツ経済】原発廃止が景気後退を招いた?

ドイツ経済がドツボにはまっている。

それも膝までどっぷり深く。

元旦あたりに

「原発廃止による電気代高騰が、景気後退を招いた。」

という日本語の記事を読んだ。

間違いです。

何処が間違いなのか、ここで解説します。

戦後最悪のドイツ経済

2023年、2024年に続き、2025年もドイツ経済の景気後退が予測されている。

参照 : Handelsblatt

 

ドイツの戦後史で

「2年連続の景気後退」

というのは2002年と2003年にあった。

が、3年連続というのは始めてになる。

細かい数字を見なくても、どれだけドイツ経済がひどい状況にあるか、おわかりいただけるだろう。

出鱈目記事

日本の記事が言っているように、

「高い電気代がドイツ経済没落の原因」

だと仮定しよう。

だったらドイツよりも電気代が高い国は、ドイツよりもボロボロになっている筈だ。

ヴィキペデイアで2023年の世界の電気料金の比較を見ることができるが、

電気代金比較

 

イタリアの電気代はドイツの1.3倍だ。

しかしイタリアの経済は成長している。

電気代が二番目に高い英国でも、経済は成長している。

この事実が示す通り、

「原発廃止による電気代高騰が、景気後退を招いた。」

という主張は出鱈目です。

では、一体どうしてドイツ経済は膝まで

「どつぼ」

にはまっているのだろう?

ドツボにはまったドイツ経済 その原因は、、

国の経済がボロボロになると、それがドイツ経済だろうが、アルゼンチン経済だろうが、原因は複数ある。

以前、似たようなテーマで記事を書きましたが、

景気後退のドツボにはまったドイツ経済 その原因は?

ドイツ経済がジリ貧になっている主な理由を挙げると

  1. 電気価格の高騰
  2. ガス価格の高騰
  3. 硬直した官僚システム
  4. 専門技能者不足
  5. 手厚い社会保障
  6. 移民政策の失敗

になる。

以下に個々に詳しく説明しよう。

電気価格の高騰

ドイツの電気代高騰の原因は原発廃止だけではない。

そもそも今、

風力発電や太陽発電により、原発よりもお安く発電できる。

 

 

これを知られたくない電力会社。

そこで経済新聞社にお金を払い、

「原発廃止による電気代高騰が、景気後退を招いた。」

と主張する出鱈目記事を掲載した。

「ドイツの失敗例を見て、間違っても日本で原発廃止なんて言わないように!」

という思惑が見え見えだった。

しかし

質問
だったらなんでドイツでは電気代が高騰したのか。

 

それは簡単。

ドイツ政府はまず最初に、使用期限も迎えていない現役の原子力発電所を廃炉にした。

普通ならまず最初に

「原発の廃炉により不足する電力を補うガス発電所」

を建設する。

これが完成してから原発の廃炉ならまだわかる。

が、ドイツ政府は

「脱原発」

の理想に追われ、先に原発を廃炉にした。

おまけにロシアのウクライナ軍事侵攻の最中に。

それだけでも、

「自殺行為」

だったが、ドイツ政府は石炭発電所の廃炉も決める馬鹿っぷり。

当然、発電量が足らない。

幾ら水力発電所や太陽発電所のコストが安くても、足らない電力を補うことはできない。

結果、近隣諸国から輸入。

こうして電気代の高騰を招いた。

原子力発電の廃炉が、電気代価格を招いたわけではない。

 

愚かな政治家の人気取りの決断が、ドイツの電気代高騰を招いた。

ガス価格の高騰

間抜けな政治家のエネルギー政策にも拘わらず、ロシアのウクライナ軍事侵攻がなければ、ドイツはここまでボロボロにならなかった。

高いお電気代に加えて、ガス代金も高騰した。

ロシアから安いガスが届かなくなると、化学品産業を始めとするドイツの基幹産業は業績が悪化した。

中国がロシア産の安いガスで安い化学製品を製造して、ドイツに輸出するともうドイツ企業に勝ち目はなかった。

加えて暖房費(ドイツの暖房はガスが主流)の急騰は、消費者の消費気分を大いに害した。

その結果、国内消費は落ち込み、電気やガスと関係のない分野まで業績が悪化した。

硬直した官僚システム

私が名古屋で住んでいるアパートの近くに、コンクリの魚の卸業者の廃墟があった。

「あ、取り壊してる!」

と思ったら、数か月で新しいアパートが出来た。

ドイツでは建築許可を取るまで、早くて1年、長いと3年かかる。

アパート建築では数十億の金を銀行から借りて建設するが、肝心のアパートの完成に4年もかかると金利で大赤字だ。

質問
なんでドイツではそんなに時間がかかるの?

 

官庁の仕事が遅いのが最初の理由。

ついでドイツでは何をするにしても無数の規定があり、これを全部クリアするのに時間がかかるのが次の原因だ。

日本だと取り壊しから建設まで1年できるのに、ドイツでは建設予定地には長い期間ペンペン草がおいしげっている。

ドイツに行かれたら、きっとそんな光景をあちこちで見かけるはずだ。

スイスに工場新設

景気後退にも拘わらず

“Made in Germany”

をウリにしている電動のこぎりメーカーが、

 

ドイツ国内工場の

「拡張工事」

を申請した。

すると、

「不景気なこの中、この辺鄙な街に投資してくれてありがとう。」

とお礼を言わないで、官庁は次から次へと難題をふっかけた。

怒った社長は

「スイスに新工場を作る。」

とドイツを見限った。

それほどドイツの官僚はひどい。

投資する理由が見当たらない

流石に危機感を感じたドイツ政府、何度か経済界の重鎮を招いて、

「ご意見」

をうかがっている。

その会議には当然、ドイツを代表する企業ジーメンスの社長が出席している。

その社長は見解を問われると、

「ジーメンスは目下、投資はすべて海外で行っている。」

と言い、

「ドイツ国内で投資する理由が見当たらないからだ。」

と政治家にはっきり言った。

参照 : focus.de

 

それほどまでにドイツの官僚システムはひどい。

これはドイツに住んだことがないと、日本人には理解できないだろう。

専門技能者の不足

ドイツは二酸化炭素の排出ゼロに向けて、ガス&オイル暖房を廃止した

究極の暖房 Wärmepumpe(ヒートポンプ)とは?

環境に優しいヒートポンプ設置を補助金を出して、奨励している。

が、ドイツでヒートポンプを設置すると、フランスの倍も金がかかる。

理由は簡単。

設置できる技師がいないのだ。

大学生や失業者は腐るほどいるが、日々の生活で必要になる職人がいない。

勿論、プログラマーも看護師も居ないのだが、暖房機器を設置できる人さえいない。

国の政策が間違っている。

手厚い社会保障制度

現政権が導入した新しい生活保護

Bürgergeld

Hartz IV 改めBürgergeld 何が変わる?

あまりに制度が充実しているために

「毎日、朝の6時に起きて働かなくても、生活保護で生活できる。」

と、辞職するZ世代が後を絶たない。

現政権は働く人の為ではなく、

「働きたくない人の為のシステム」

を作ってしまった。

あまりに社会保障費の出費がかさんだので、経済対策に回す予算がないという本末転倒振り。

移民政策の失敗

最後に移民政策の失敗も挙げておこう。

というのも

「ユートピア理想」

を掲げたドイツ政府は、

「国内で虐待を受けている人は、難民申請をする権利がある。」

 

と憲法で謡っている。

結果、

  • 精神を病んだ病人
  • 小さい子供も4人もかかえたシングルマザー
  • 紛争で四肢を亡くした人
  • 日本国内で同性婚を認められない人*

がやってくると、難民認定をしなくてはならない。

しかし、同性婚者を除き、働ける人は居ない。

精神病患者に至っては、クリスマスのマグデブルクテロのように、ドイツで人を殺す。

こんなお荷物を何十万も抱えている。

皆、”Bürgergeld”で悠々自適の生活だ。

一方で税金を納めている私が自営業申請をすると、

「大学で経済学を専攻していないと、自営業は認めない。」

と意地悪をする。

ドイツで法学部を卒業、弁護士の国家試験の前に外人局での

「見習い」

を課された友人が、その仕事ぶりをよく報告してくれた。

彼は

「ドイツは誤った外国人ばかり受け入れている。」

と嘆いていた。

上で専門技能者が欠けると書いた。

しかしドイツ企業がそんな人を採用しようとすると、官庁(外人局)が意地悪をして1年以上も許可を出さない。

その一方で

「お荷物になる外国人」

ばかり増えている。

ドイツ人が

「外国人は出ていけ!」

という極右政党に投票するもの無理はない。

ドイツ経済がボロボロのワケ

これらがドイツ経済がボロボロの主要な理由だ。

他にも原因は

「ごまんとある」

が、主要な物に限らないと、キリがない。

なのに日本では

原発廃止による電気代高騰が、景気後退を招いた。

 

という見当違いな主張が

「正論」

とされ経済新聞に掲載される。

毎回書いていますが、ドイツに関する記事は9割がデマです。

正しいのは、

「ドイツの首都はベルリンです。」

という報道だけ。

ドイツ語もできない人間が日本に居ながら

「ドイツ経済」

を解明しようとしても、必ず失敗に終わります。

注釈

*

勿論、冗談です。

もっともカナダ政府は日本人の同姓カップルを

「国内で差別にさらされている。」

として難民申請を認可したが、ドイツはそこまで甘くない。

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執筆者:

nishi

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