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景気後退のドツボにはまったドイツ経済 その原因は?

投稿日:2024年2月28日 更新日:

景気後退のドツボにはまったドイツ経済 その原因は?

ドイツ経済は今、景気後退のど真ん中。

コロナ禍を除けば、ドイツ経済が景気後退に陥ったのは、東ドイツ吸収後の90年代以来だ。

「当時のドイツ」

を知る私には、

「これは長引くぞ!」

と警告音が鳴りっぱなし。

景気後退のドツボにはまったドイツ経済

景気後退のドツボにはまったドイツ経済

まずは事実確認から始めよう。

2023年、ドイツの国内総生産高は日本を追い越して

「世界第三の経済大国」

になった。

が、経済成長率はマイナス0.3%。

ドイツ経済は2023年10月以来、マイナス成長が続いており、

 

「回復の兆し」

さえも見えてない。

ドイツ政府が先週、2024年の経済成長率予測を1.3%から0.2%に下方修正したのも、

無理もない。

もっとも政府の広報には、

「危機に負けない豊かさ!」

などと

「お門違い」

の文句を語っている。

岸田政権の

「災害地域の復興と万博の準備は平行してできる。」

に通じるものがある。

その原因は?

ドイツ経済が景気後退のドツボにはまっている原因を一言で言えば、

「プーチンの戦争」

となる。

もっとプーチンの戦争で苦しんでいるのはドイツだけではない。

他のEU加盟国も同じだ。

なのにドイツの経済成率が

「EU加盟国内でビリから2番目」

なのは

“strukturelle Probleme”(構造的な問題)

だと言われる。

“strukturelle Probleme”(構造的な問題)とは?

まさにこの

“strukturelle Probleme”(構造的な問題)

という言葉を90年代、

「耳に胝ができるまで」

何度も聞いた。

いみじくもまた

「構造的な問題」

が、ドイツ経済の張本人だという。

もっとも問題はそれだけじゃない。

私に言わせれば

  • エネルギー価格の高騰
  • ドイツ名物の官僚主義
  • 中国経済の減速
  • 金利上昇
  • 物価の高騰
  • 人手不足

が主要な原因だ。

以下にここの原因を解説しておこう。

エネルギー価格の上昇

イケイケドンドン!

のドイツ経済は、ロシアからの安いガスに支えられてきた。

ケミカル業界はいうに及ばす、鉄鋼、セメント、発電、暖房まで、ロシア産のガスなしでは

「世界第三位のドイツの経済発展」

は不可能だった。

そのロシア産のガスがプーチンの戦争で、全く入ってこなくなった。

ドイツ政府は

「国家の安全を左右するエネルギー危機」

を宣言してLNGターミナルを大急ぎで建築。

これで経済破綻は避けられた。

が、ガスの市場価格がプーチンの戦争前よりも安くった今でも、

ドイツのエネルギー価格は、プーチンの戦争前よりほぼ40%も高い。

 

ドイツ企業は生産コストの上昇分を

「110%」

消費物価に上乗せした。

質問
100%じゃなくて?

 

10%はドイツ名物の

「便乗値上げ」

です。

文字通り

「あらゆるもの」

が高くなりました。

「飯か暖房か?」

に二者択一を迫られる国民が、出費を控えるのは当たり前。

ドイツ名物の官僚主義

日本の官庁もなかなかの

「無駄の塊」

です。

ひとつだけ例を挙げよう。

戦後、70年にもわたって全生徒の

「座高」

を測ってきた。

70年後、

「使い道がない。」

とわかって測定は廃止された。

役人(教師)は

「意味があるかどうか」

を考えるのが仕事ではなく、規則を実行するのが仕事。

だからこうなる。

ドイツもほぼ同じレベルです。

問題は日本よりも

「規則」

が多いこと。

それもべらぼうに多い。

ドイツで仕事をすると、全部記録に取る必要がある。

何月何日に誰がきて、どんな仕事をしたか記録する。

請求書は

「通しの番号」

で入れる必要があり、キャンセルが出ると

’Gutschrift”

を発行しないと売り上げとみなされて、税金が課される。

1セントも儲からないのに、キャンセルの度にGutschriftを10分かけて発行する。

なんという無駄!

ドイツには有名なチェーンソーメーカーの

”Stihl”

がある。

「高いが性能がいい。」

のでよく売れる。

そこで社長は古い工場を壊して、拡張するとにした。

ところがここで

「ドイツの官僚」

が意地悪をした。

もうすっかりやる気をなくした社長は、

「ドイツではなくスイスに工場を作る。」

と言っている。

「スイスの人件費は高いが、規則が少ないのでドイツよりも安く製造できる。」

そうだ。

これが

「ドイツの構造的な問題」

の筆頭だ。

”Made in Germany”

をウリにしていた企業が、

「ドイツから出ていく」

ほど、ドイツの官僚主義はお手上げだ。

中国経済の減速

ドイツ経済は日本と同じ輸出依存型。

日本と同じく基幹産業であるドイツの車業界は、中国市場で最も多くの車を販売してきた。

その中国経済が落ち目。

理由は言わずとしれた不動産バブルの崩壊だ。

中国における車の販売台数が減少。

アデイダスを始めとするスポーツ用品メーカー、HugoBossに代表される衣料品メーカー、これまで中国市場の恩恵を受けてきた企業の売れ行きが軒並み鈍化。

これがドイツ経済に影を落としている。

金利上昇

インフレ対策でECB(欧州中央銀行)が急激に金利を上げた。

結果、

「かってない不動産ブーム」

に沸いていたドイツの不動産業界は

「大不況」

に陥った。

ドイツで大型投資をしていたオーストリアの不動産王、ベンコー氏の

「シグナホールデング倒産」

は記憶に新しい。

物価の高騰

不動産業界に

「とどめ」

を指したのが物価の上昇だ。

今、アパートを建てると建築資材の高騰で

「平方メートル家賃を30ユーロにしないと、赤字になる。」

と不動産業界はいう。

20平米の小さなアパートでも、600ユーロ。

10万円。

これに雑費(電気、暖房、水道、管理費)が加わると13万円。

誰が借りる?

お陰でアパートの建築はドイツ全土でストップ。

建築現場で働く労働者は軒並み失業だ。

人手不足

ドイツ経済を停滞させている最後の要因が人手不足。

病院の看護師から、IT専門家、電気工事士、暖房設置技師、教師など、専門教育をする部門で、人手が全く足りてない。

病院はベットがあいているのに、看護師がいないから入院患者を受け入れられない。

IT企業はプログラマーがないから、新しい仕事を受注できない。

ドイツで余っているのは、なんの資格もない労働力。

建築業界が活況なら受け皿があるが、今、まさに建築業界が大不況。

もっとも人手不足はドイツ政府が、

「自ら撒いた種」

でもある。

例えばあなたが医師で

「ドイツで働こう!」

と思ったら、滅茶苦茶大変です。

質問
何が?

 

提出する書類の量と種類が半端ないです。

かってシリアで反政府派の負傷者を助けていた医師が、

「抹殺リスト」

に載ってしまった。

ドイツに命からがら逃げてきた。

ドイツで医師として働きたい!

と思い申請すると、

「シリアに帰って、書類を政府からもらってきて。」

と言われた

「笑えない笑い話」

がある。

官僚は規則しかみない。

書類を揃えるために帰国したら処刑されようが、そんなことはど~でもいい。

書類がなければ駄目!

これがドイツ、そして日本の官僚だ。

経済の足を目一杯ひっぱっている。

ドイツ経済 不況の長い冬の時代突入?

さらにもうひとつ

「ドイツ経済ドツボの原因」

を上げると、ドイツの国家予算に占める社会福祉関連歳出が40%に達するという問題もある。

 

90年代の空前の大不況の元凶が、40%を超える社会福祉関連歳出費だった。

シュレーダー政権が歳出を削って

「ドイツ経済の復活」

を成し遂げたのに、

「景気がいいから」

とCDU/CSUは歳出を拡大、

「元の木阿弥」

になってしまった。

歳出を増やすのは簡単だが、その逆は無理。

ぬるま湯に慣れた国民に、

「支給額をカットします。」

と言える政治家は居ない。

ドイツ経済 不況の長い冬の時代突入?

もしプーチンの戦争が終われば、ドイツ経済が復活する可能性がないわけではない。

が、戦争遂行中のロシアでさえ、2.4%も経済成長している。

ドイツ経済がドツボにはまっているのは、

プーチンの戦争よりもドイツの構造的な問題のせい。

 

これが解決されないままでは、戦争が終わってもドイツ経済の

「完全な復活」

はない。

かって

「ドイツの誇り」

だった自動車専用道路(アオトバーン)は今やボロボロ。

跳梁はトラックの重量に耐えれないため、通行禁止。

お陰で運送会社はべらぼうに高いデイーゼルを消費して、大迂回路を走る事になり、結果として物価があがる。

政治家が、

「あのヒトラーだって自動車専用道路建設で、不景気を退治したじゃないか!」

と、そっくり同じ事をするだけの度量があればいい。

が、財務大臣は借金に大反対。

そして経済大臣と財務大臣は

「犬猿の仲」

で、お互いに話し合う事さえも拒否。

こんな状態でドイツ経済が転機を迎えるなんて、

「ミッドウエー海戦での大勝利」

並みのおとぎ話。

ドイツ経済の冬の時代は、始まったばかり。

90年代の経験から言えば、出口が見えるまで7~8年かかります。

お覚悟を!

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執筆者:

nishi

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