連立協議中の新政権、巨額のインフラ投資計画を発表した。
加えて特別軍事予算も。
もっともそれには憲法改正だ必要だ。
もし改革断行に成功すれば、ドイツ復活も夢ではない。
成功すれば、、、
この記事の目次
ボロボロのインフラ
現状を知らない方が大半なので、まずは現状の把握から始めよう。
ドイツ国内のインフラはボロボロだ。
橋はセメントがはげ落ちて、いつ崩壊してもおかしくない。
と思っていたら、ドレスデンで橋が崩壊した。
ちょうど路面電車が通過後、その重さにまけて崩壊した。
幸い、深夜だったため、けが人ゼロ。
しかし!
いつなんどき、同じことがドイツ全土で起きても不思議ではない。
それほどまでにドイツの道路や橋はボロボロなのだ。
そしてボロボロなのは、道路や橋ばかりではない。
ますます遅れるドイツ鉄道
ドイツ名物のドイツ鉄道。
1時間以上乗車すると、必ずトラブります。
あまりに遅刻が多いので、
「取締役員のお給料は、運行時間の正確さに比例させる!」
と発表したことがありました。
その結果が傑作。
「これは困った!」
とドイツ鉄道の役員達は取締役員会で、
「役員のボーナスアップ」
を決定。
こうしてお給料が減る事を見事に回避した。
遅延の原因
ドイツ鉄道の遅延の原因は
- 線路が古い
- 電車のメインテナンス不足
- やる気のない社員
が原因です。
ドイツ鉄道の線路、一部はまだ
「ヒトラーの時代」
のまま。
とりわけ路線の切り替え設備の故障が多い。
故障の原因は、(前)メルケル首相の時代にまで遡る。
当時、ドイツ鉄道は株式上場を目指して、金のかかる電車の整備施設を売却した。
お陰で修理できないのだ。
最後には社員のやる気のなさ。
電車がスタンバっていても運転手が欠勤。
ドイツ鉄道、インド国鉄並みのどうしようもない会社なんである。
インフラがボロボロになった原因
では一体、何故、ドイツの社会インフラはここまでボロボロになったのだろう。
その原因は(前)メルケル首相の
「借金ゼロ政策」
にある。
ドイツ人はケチだ。
これに加えてメルケル首相は家計簿をつけるように、
「余計な出費」
を削るこに専念した。
それは借金ゼロの黒字財政を可能にするためだ。
お陰でメルケル政権は、かって誰にも成しえなかった
「黒字の国会財政運営」
を可能にした。
結果、メルケル政権時の16年間インフレは整備されず、60~70年代に建設されたインフレを使い倒した。
加えて破綻した信号政権はいつも金欠。
インフレ整備に回す金など、あろうはずがない。
当然、ボロボロのインフラを放置。
その惨状に見かねここで、
「ナチス時代を彷彿をさせる巨額のインフラ投資計画を導入すれば、不景気も解消できて一石二鳥!」
と説いた。
政治家の耳に届くわけないのだが、、
終わるまで、終わりじゃない。
今、2月の総選挙で勝利したCDU/CSU と、大敗したSPDが連立政権の協議をしている。
もっとも選挙で勝って
「次期首相候補」
のメルツ氏は選挙戦で、
「借金ブレーキ法の改革はない。」
「税収入は十分にある。問題は使い方だ。」
とメルケル路線を継承。
当然ながら
「これでは誰が選挙で勝っても、ドイツは終わった。」
と悲嘆していた。
しかし!
いみじくもロッキーが
“Es ist erst dann vorbei wenn es vorbei ist.”(終わるまで、終わりじゃない。)
と言ったように、終わりじゃなかった。
巨額のインフラ投資計画 ドイツ復活なるか?
連立協議をしているCDU/CSU とSPDはわずか数日で、
- 巨額のインフラ投資計画
- 特別軍事予算
で合意に達し、記者会見を開いた。
なんとドイツのボロボロのインフラを整備するため、5000億ユーロ(邦貨で80兆円)の
「インフラ整備特別予算」
を計上。
さらに!
プーチンの侵攻に備えてドイツ軍を近代化する為、
「特別軍事予算」
を計上する。
額面の発表はなかったが、4000億ユーロ相当(邦貨で64超円)と言われている。
合計144兆円だ。
日本の国家予算が115兆円なので、
日本の国家予算を遥かにしのぐ額を、インフレと国防に投資する。
このニュースに株式市場は狂喜、DAX(ドイツ株式インデックス)は3.4%も上昇した。
上昇したのは株価だけではない。
ユーロも急上昇した。
インフラ投資計画は公約破り
早速、野党(厳密に言うとまだ政権交代前なので与党)は
「公約破りだ!」
とCDUを非難している。
勿論、その通り。
CDU/CSUの支持層は保守派。
保守派は改革が嫌いで、
「昔のままが一番いい。」
という人々だ。
夫婦別姓なんて、悪魔の仕業。
そんな支持層に、
「選挙で勝ったら144兆円規模の借金する。」
と正直に言えば、選挙で負ける。
だからメルツ党首は
「借金ブレーキ法の改革はない。」
「税収入は十分にある。問題は使い方だ。」
と保守層が喜びそうなテーマで票を確保。
選挙で勝つと、手のひらをひっくり返したのだ。
なんという老練な古だぬきだろう!
ドイツでは
“Man soll den Tag nicht vor dem Abend loben.”(夜の前に、その日を褒めるべきではない。)
と言うが、まるでアデナウアー並みの手腕だ。
もしこの特別予算が現実となれば、ドイツ復活も夢ではない。
インフラ投資計画 要憲法改正
しかしながら、ドイツ復活の前に大きなハードルがある。
そう、メルケル政権時に導入された
「借金ブレーキ法」
だ。
この法律のお陰で、144兆円もの借金をすることはできない。
そこで連立協議中の
「未来の政府」
は明日、国会に
「憲法改正案」
を提出。
もう木曜日には、これを可決させる目録だ。
しかし!
憲法改正には2/3の議員の賛成票が必要だ。
言い換えると
- CDU/CSU
- SPD
- 緑の党
が賛成しないと憲法改正はできない。
しかし!
CDUは選挙戦で緑の党を
「けちょんけちょん」
にこき下ろした。
当然、緑の党はこれ対して、
“Ressentiment”(仕返ししたい気持ち)
を持っている。
にもかかわらず緑の党が
「大儀の為」
と、己の感情よりも国の将来を優先できるかどうか?
これにドイツの復活がかかっている!
緑の党 怒る!
こうして予期せず、
「脚光」
を浴びることになった緑の党。
やっぱりかな~り怒ってました。
当然、その第一声は、
「憲法改正には絶対に賛成しない。」
というものだった。
緑の党の言い分。
「憲法改正が必要な提案をするなら、記者会見の前に相談するべきではなかったのか!」
という物。
ごもっともです。
だが、経済界から
と大ブーイングが巻き起こった。
方向転換
ドイツの政党は
「企業献金」
がなければ運営できない。
言い換えると、景気悪化で緑の党に献金できる企業がなくなれば、緑の党も終わりだ。
そこで緑の党、翌日には
「話し合いは拒否しない。」
と軟化した。
こうして話し合いが始まったが、時間がなかった。
こうしてドイツ名物の
「徹夜政策会議」
が始まった。
緑の党 インフラ投資計画に同意す
3月14日(金曜日)緑の党は憲法改正、すなわち
「インフラ投資計画に賛成する。」
と声明を出した。
そう、3日前までは、
「絶対に賛成しない!」
と怒っていた同じ人物が、
「賛成する。」
と言うのだ。
勿論、
「緑の党のいい分」
が通ったことが、その
「翻意」
の理由とされている。
が、やはり支援企業からの圧力には勝てなかった。
このニュースにDAX(ドイツ株式インデックス)は急上昇。
ほぼ
「過去最高値圏」
で取引を終えた。
尚、現在の予定では3月18日(火曜日)国会で採決が行われる。
インフラ投資計画 国会決議
3月18日、新政権の巨額のインフラ投資計画(法案)が国会で決議された。
投票前、
「5分間の名声」
を求めて反対を唱える
「離反議員」
が少なからずいた。
そこで
- CDU/CSU
- SPD
- 緑の党
は
「事前点呼」
を実施、
「病気であろうとも、動けるものは全員投票に赴くべし!」
と下達。
これが利いた。
病気を理由に欠席したのは、SPDの議員1名のみ。
こんなことは始めてだ。
通年、
「最後の国会」
は空席ばかりなんです。
なのに
「欠席議員が1名だけ!」
なんて史上初。
2/3過半数ゲット!
憲法改正に必要な賛成票は489票。
蓋を開けてみると512票の賛成票があった。
棄権票はゼロ。
各党が事前点呼をした効果があったわけだ。
こうして巨額のインフラ投資計画(法案)は国会(下院)を通った。
ドイツ株式インデックス(DAX)はまたしても、史上最高値を更新した。
誰も見向きもしなかった株が、1日で10~20%も上昇。
もうほぼ
「バブル景気」
の領域です。
残るは金曜日(3月21日)に上院で可決されれば、巨額のインフラ投資計画法案は可決となる。
もっとも上院は
- CDU/CSU
- SPD
- 緑の党
が独占しているので、テロでもない限り議決はほぼ間違いない。
[…] が、80兆円の超大型インフレ投資計画を発表したんです。 […]