今回のテーマは 停滞するドイツ経済。
欧州全域では経済が成長しているのに、ドイツだけはマイナス成長。
経済アナリストの
「夏以降、景気は回復する。」
という予測とは裏腹に、景気後退に向けてまっしぐら。
何がマズかったのだろう?
この記事の目次
停滞するドイツ経済
まずは下の表をみてもらいたい。
これはドイツの国内総生産高の推移だ。
コロナ禍で大きく落ち込んだドイツの国内総生産高(BIP)。
華々しい復活を遂げ、日本を抜いて世界第三位の経済大国になった。
ところがである。
御覧の通りドイツの国内生産高は2022年がピーク。
以後は停滞、あるいはやや減少傾向に転じている。
もっとはっきりするのは、四半期経済成長率。
2022年の9月以降、ドイツ経済は停滞している。
今年に入ってからは、4~6月期でマイナス成長。
今度、7~9月期でもマイナスになれば名実共に、
「景気後退突入」
となる。
これがかなり現実味を帯びてきた。
IFO 経済お天気指標
ドイツには
”ifo-Geschäftsklimaindex”
と呼ばれる重要な経済指標がある。
ドイツ語に忠実に日本語に直すと
「IFO 経済お天気指標」
となる。
この指標は
「将来を表す指標」
言われている。
以下のグラスが示す通り、
まだコロナ禍のど真ん中の2020年に、大きく上昇に転じた。
そのほぼ半年後の2021年、ドイツ経済は一気に復活した(ように見えた)。
このようにIFO 経済お天気指標で、将来の経済の動向を伺い知る事ができる。
その経済お天気指標、すでに2021年後半悪化に転じた。
そして実経済も2022年後半から停滞。
2022年末に経済お天気指標が
「上昇に転じたぞ!」
と喜んだのも束の間、2023年半ばから停滞。
そして2024年の実経済も
「鳴かず飛ばず」
の停滞。
これを見る限り、2024年7月~9月のドイツ経済成長率は
「ボロクソ」
になる可能性が高い。
ショルツ首相は
「ドイツは景気後退には陥らない!」
と断言しているだけに、また面子を失うことになる。
ドイツ経済停滞の原因
では何故、ドイツ経済は停滞しているのだろう。
国の経済が
「傾き始める」
と、それが日本であれ、タイであれ原因は複数あります。
ドイツ経済の場合は主な要因だけでも
- 中国経済の停滞
- 中国企業との競争(に負けている)
- 国内生産コストの上昇(による産業の空洞化)
- やる気を奪う官僚主義
などがあげられる。
個々に見ていこう。
中国経済の停滞
習近平政権は
「令和の文化革命」
を実施、中国企業に圧力をかけ続けている。
「部屋は金儲けでなく、住むもの。」
など、毛沢東主義者でないと思いつかない国策だ。
加えて人類がかってみたことがない規模の不動産危機問題。
これに真っ向から取り組む事を避け
「汚いところには絨毯をかけて見えなくする。」
という政策を実施。
具体的には全財産を失った国民の反対運動を禁止。
それでもデモをしたら監禁している。
これで不動産危機が解決できると思っているのも、毛沢東並みの経済センス。
中国経済が停滞すると、
「中国市場様様」
だったドイツ経済にモロに影響が出ている。
中国企業との競争(に負けている)
さんざんこき下ろした
「習近平の経済政策」
だが、あのヒトラーが大規模インフラ工事で失業率を退治したように、独裁者にだって
「成功した経済政策」
はある。
習近平の場合は、
「2025年までに世界の先端企業を育てる。」
との国策でさまざまな分野で細分化していた企業と合併させて、世界で通用する大企業を作った。
こうして誕生した中国企業が、中国国内は言わずもがな、第三国でシェアをドイツ企業から奪っている。
その分野は
- 電気自動車
- 工作機械
- 化学品
- 鉄道
- 航空業界
などかなり広範囲。
わかりやすい例を出そう。
かってタイで走っている車と言えば
「ほぼ日本車」
だった。
それが今や中国車に押されて、スバル、スズキ、マツダ、いすゞは
「タイ市場からの完全撤退」
を迫られた。
同じことが世界中でドイツ企業にも起きている。
プーチンの戦争を利用
プーチンの戦争で欧州の航空会社はロシア領空を迂回して
「南ルート」
に回避せざるを得ない。
しかし中国の航空会社はロシア上空を飛び、コスト面で圧倒的に有利。
結果、Britisch Airwaysは北京へのフライトを中止。
ルフトハンザも減便。
空いたスロットを中国の航空会社が奪取して、欧州の航空会社はジリ貧に陥っている。
国内生産コスト上昇による産業の空洞化
猛烈なインフレでドイツ国内では電気代、人件費が高騰。
そんなドイツで生産していて、中国企業相手に勝てるわけがない。
そこで大企業は次々に生産拠点をメキシコや北米に移している。
なのに
「ドイツで生産しましょう。」
なんて企業は膨大な補助金が出るチップ産業だけ。
シェフラー(車部品メーカー)、BASF(化学メーカー)、Miele(白物家電)、ポルシェ、Kärcher(家電)など、名だたる
「ドイツ企業の大移動」
が始まっている。
これで国内生産が上昇するわけがない。
やる気を失う官僚主義
上に挙げたドイツ企業が、
「ドイツで生産を続けよう。」
と考え直しても働き手が見つからない。
Z世代は
「ぱーっつとお金を使って楽しく過ごしたい。」
と3年も続く見習いに入ろうとしない。
結果、どこも人手不足。
そこで外国から労働者を招き入れるわけだが、外人局の頑強な抵抗に遭う。
ドイツ企業がちゃんと
「雇用契約書」
を出しているのに、信用しない。
毎回、外人局に行く度に新しい書類を要求される。
以前、別の所でも書いたがシリアから命からがら逃げてきた医師に、
「国に帰って、政府から医師の認定証をもらってこい。」
と平気で要求する。
結果、早くても4ヶ月。
遅いと半年もかかる。
その間の費用は誰がもつ?
あなただって、半年も働けず無給だと、
「もういい。」
と日本に帰ってきますよね。
これがやる気を失うドイツの官僚主義です。
停滞するドイツ経済 旬はすでに過ぎたか?
もし明日、プーチンがくたばって、もとい、ロシアで権力構造が変わってウクライナ侵攻が終焉。
イスラエルも停戦交渉に同意。
ドイツ国内でも信号政権が崩壊。
新しい政権が誕生。
加えて中国政府が、
「未完マンションが政府が買い上げる。」
なんて言い出せば、停滞するドイツ経済が回復する見込みがないわけではない。
が、現状では何処を見てもドイツ経済が回復する理由を見つけることができない。
とりわけ
「ジワリ」
と加速している産業の空洞化が気になる。
かっては
「輸出高世界一」
を誇ったドイツの
「旬は過ぎた。」
と思えて仕方ない。
要イノヴェーション
どちらを向いてもドイツ経済は停滞しており、ジリ貧状態にある。
これを打破するにはイノヴェーションが欠かせない。
例えば
“Natrium-Ionen-Akkus”(俗称 塩電池)。
電気自転車がフロップしている主な理由は、充電網が充実していない点に加えてリチウム充電池が高価な為。
しかしリチウムの代わりに塩を使う充電池なら、コバルトもニッケルも不要。
格段に安く製造できる。
しかしここでも
「世界最先端」
を行っているのは中国企業。
2023年に世界で最初の塩電池の実用化に成功した。
習近平政権のお手柄と言わざるを得ない。
ドイツ企業がこの分野でイノヴェーションを達成しない限り、ドイツの自動車業界の将来は暗い。
と思ったら、すでにドイツ人が
「第三世代の電気自動車」
を開発済み!
なのにドイツ政府は見向きもしない、、
全くの
「宝の持ち腐れ」
だ。
中国の
「千里馬」
の故事にもある通り、ドイツ国内にイノヴェーションを発揮して新技術を開発した会社があるのに、政府はその価値を見抜けない。
水素自動車同様に、非現実的。
個体電池の欠点を克服するため、マイナス200度以下に冷却する必要があるんです。
それだけで大量に電気を消費します。
電気自動車でこれは致命的。
大事なのは安い燃料電池の生産です。
それには塩電池が目下、最有力候補です。
[…] その成果がドイツ経済の停滞だ。 […]