今回のテーマは電気自動車です。
一時はあんなにブームになっていたのに、今や
”Ladenhüter”(倉庫の番人)
に転落。
そこで今回は
「電気自動車に未来はあるのか?」
というテーマで記事を書きます。
この記事の目次
売れない電気自動車 でも何故?
皆さんは、日本で暮らしているので
「世界で何が起きているのか。」
到底、理解できません。
これは日本の自動車メーカーも同じ。
ドイツに住んでいると、官民が一体となって
“Verkehrswende”(交通改革)
を目指して、電気自動車を将来戦略に選んだことは明白だった。
そこで
「日本車頑張れ!」
とエールを送った。
完全に波を乗り過ごした日本の自動車メーカー
しかしエールは届かなかった。
日本の自動車メーカーは、電気自動車の波を乗り過ごした。
やっとこれに気が付いた日本車メーカーは、政治に援助を求める始末、、。
何のために、世界中に拠点を置いているのだろう、、。
しかしこれが幸いした。
2024年になって、電気自動車はフロップした。
VWは工場閉鎖や解雇を余儀なくされている。
電気自動車化波を乗り過ごした日本車は、大きな損益を避けることができた。
電気自動車がフロップした理由
では、何故、電気自動車がフロップしたのだろう。
主な理由は
- 高い価格
- 不十分な受電施設
のふたつ。
あんなに高価な電気自動車なのに、航続距離が短い。
そして充電設備が充実しておらず、会社や買い物先で充電できない。
高速道路はいうに及ばず。
最初は購入補助金や目新しさもあって、よく売れた。
しかしブームが過ぎると実用的でない電気自動車は、消費者から嫌われた。
しかし、
「これで電気自動車は終わった。」
と結論するのはまだ早い。
第三世代の電気自動車 とは
電気自動車(*1)の歴史は古い。
内燃エンジンが発明される前、19世紀の初頭に電気自動車が発明された。
これが第一世代の電気自動車で、今の電気自動車も基本構造は100年前と同じ。
車に蓄電池を積み、この蓄電池を動力源として駆動する。
第一世代の電気自動車の欠点は、重い蓄電池。
航続距離を延ばすためには重い蓄電池を搭載しなければならず、文字通り車のバラスト(重り)になっている。
第二世代の電気自動車は、水素自動車と呼ばれるもの。
原動力となる水素に酸素を加えることで発電するので、重い蓄電池を乗せる必要がない(小型で済む)。
第三世代の電気自動車は、メタノール自動車と呼ばれる。
水素の代わりにメタノールを補給する。
メタノールから水素を得ると、第二世代の電気自動車のように発電する。
では何故、メタノール自動車が第三世代の電気自動車なのだろう?
メタノール自動車の利点
メタノール自動車の利点は、水素自動車の欠点を克服できることにある。
水素自動車の普及の妨げになっているのが、燃料電池と呼ばれる水素から電気を得る装置の価格。
これが最低3万ユーロかかる。邦貨で400万円。
これに車体の値段が加わるから、水素自動車は馬鹿高い。
もっと高いのが
「水素のガソリンスタンド」
となる水素ステーションの設置費用。
5~6億円もの金がかかる。
燃料電池の価格は、メタノール自動車になっても変わらない(*2)。
安くなるのはインフラ。
メタノール ステーションは、今のガソリンスタンドと同じコストで設置できる。
そして燃料補給は、水素と同じく数分で済む。(*3)
だから水素自動車を作るよりも、メタノール自動車を作った方が将来性がある。
メタノール自動車の欠点
にもかかわらず、これまでメタノール自動車が開発されていないのには、メタノールから水素を得て発電する技術が困難なため。
数多くの技術者、大手の自動車メーカーも挑戦したが、これまで誰も量産に成功しなかった。
もうひとつの欠点はメタノールの生成。
現在メタノールは(水素と同じく)、天然ガスを分解して得られている(*4)。
この製法では水素(メタノール)を天然ガスから得る際、大量の二酸化炭素が放出される。
だから、
「水素自動車は環境に優しい。」
は真っ赤な嘘。
再生エネルギーを使って水を分解して得る水素だけが本当に
「環境に優しい」
エネルギー源だ。
第二 & 三世代の電気自動車が普及するには、グリーンな水素を十分な量生産する技術が欠かせない。
日本の電気自動車戦略
ここで日本の立場が物を言う。
ドイツのような第一世代の電気自動車を大金をかけて普及させてる国は、
「じゃ、次は第三世代で。」
というわけにはいかない。
そんな急転換をすると、今までの投資が水泡に帰してしまう。
ここで日本のように第一世代の電気自動車競走に完全に出遅れた国が、大きな役割を果たす。
これから大金をつぎ込んで充電柱を全国に建設するのではなく、今あるガソリンスタンドをメタノール用に改造するだけでいい。
費用はぐっと安く上がる。
残る問題は、メタノールから水素を得て電力に転換する技術だ。
第三世代の電気自動車 3分で満タン 航続距離800Km!
ところがである、ドイツのスタートアップが、メタノール(中の水素)を使って発電する技術を開発してしまった!
開発者はかってのドイツの自動車メーカー、アウデイの技術者。
会社を退職後、新しい技術の開発に人生を捧げ、これまで誰も成功しなかった
「メタノール燃料電池」
の開発に成功した。
成功したと言っても、
「実験に成功した。」
というレベルではない。
メタノール燃料電池自動車はテスト走行を数年前に終えて、すでに販売されている!
車には蓄電池も搭載されているが、第一世代の電気自動車の大きくて重い電池よりもはるかに小型。
この蓄電池は主に、車を130Kmh以上に加速する際に使用される。
市街地での走行中は蓄電池ではなく、燃料電池から得た電気で車を推進する。
同時に余剰に発電された電気は蓄電池の充電に使われるので、充電柱で充電する必要がない。
製造元のホームページにも書かれてる通り、
- 給油は3分
- 航続距離は820Km
- 最高速度は300kmh
- 100Kmhまで2.5秒
という夢のようなスペック。
第三世代の電気自動車は、もう手を伸ばせば届く所まで来ている。(*5)
ドイツ産業省のジレンマ
「じゃあ、きっとドイツの産業省なり、自動車メーカーから引く手あまたでしょ?」
と思いそうだが、実情は正反対。
ドイツの運輸大臣は自らメタノール燃料電池自動車を視察、感銘を受けて、
「運輸省の車をメタノール燃料電池自動車に改造してくれ。」
と、試乗車をオーダー。
なのに出来上がった車を引き取る事を拒否。
ドイツの大手のメーカーも同じ反応で、メタノール燃料電池自動車にはこれぽっちも興味を見せていない。
それはドイツ政府、それに車メーカーが第一世代の電気自動車の開発 & インフラ整備に大金を注ぎ込んでしまったから。
今から後戻りはできない。
だから無視を続けている。
幸い、この
「不幸な天才」
の存在に気付いたドイツのテレビ局が取材して、テレビで放映した。
放映後、運輸省は、
「忘れていてすみません。」
と、数年たってから返事をよこした。
日本のトヨタなり日産なら、メタノール燃料電池自動車の技術をさらに進めて、もっと安価に車を提供できる筈だ。
是非、ドイツのスタートアップを買収して、
「日本の技術」
として、開発して欲しい。
注釈
*1 電気自動車は正しくは、BEV(Battery electric vehicle)です。EVではありません。
*2 今の時点ではまだ高価。将来、大手の自動車メーカーが量産すれば、安くなります。
*3 純粋なメタノールを給油するのではなく、水と混ぜた物を給油するので取り扱いが容易。
*4 水素に二酸化炭素を加えれば、メタノールの出来上がり!
*5 一台一台、手作りのため価格は41万ユーロ(税別)と、フェラーリ並み。