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売れない電気自動車 政府の対策は週末運転禁止?

投稿日:2024年4月19日 更新日:

去年は電気自動車ブームの最盛期。

2024年になると、電気自動車の販売台数は減る一方。

売れない電気自動車 はドイツ政府の政策にも影響を及ぼし、

「週末運転禁止令」

が議論されることに。

一体、どういう事?

電気自動車ブームの始まり

そもそも電気自動車ブームに

「火をつけた」

のは政府の補助金だ。

去年まで最高で6750ユーロ(邦貨でほぼ100万円)の補助金が出た。

では何故、ドイツ政府は補助金を出したのだろう?

それは

”Energiewende”(エネルギー変革)

と呼ばれる化石エネルギー源から再生エネルギーへの変革が理由。

政府は

“Klimaschutzgesetz”(環境保護法)

をわざわざこしらえて、

  • 産業
  • 住宅
  • 交通

のそれぞれの分野で、二酸化炭素削減目標を定めた。

交通分野では内燃エンジン車を減らして、二酸化炭素削減を図ることが急務。

そこで電気自動車に補助金を出して

「電気自動車の普及」

を図った。

売れない電気自動車 補助金の終了

ところがその同じ政府が金欠の為、

ドイツ政府財政危機 2024年予算が10兆円足らない!!

なんの予告もなく、補助金を終了した。

本来であれば長い間補助金を出す事で、電気自動車の高い販売台数を維持。

車メーカーは電気自動車が売れるから、開発費を増額。

これが技術革新を促進して、安価なバッテリー技術が開発されて電気自動車が安くなる。

この時点で補助金を終える。

なのに政府が急に補助金を終了したので、電気自動車はまだ高価なまま。

お陰で電気自動車は

”Ladenhueter”(売れ残り品)

になってしまった。

充電柱不足

急速充電柱不足

補助金の突然の終焉に加えて、電気自動車が

「大ブレイク」

する環境も整っていなかった。

その最大の理由は充電柱不足。

今、ドイツ全土でおよそ100万の充電柱がある。

もっともこれは個人所有の充電柱も含めた数。

誰でも充電できる公共の充電柱となると80万少々。

その80万少々の充電柱に電気自動車とプラグインハイブリット車が充電に殺到すると、23台につき1本の充電柱となる。

とてもじゃないが、十分な数とは言えない。

通常の充電柱でこの有様。

急速充電柱となると、からっきし足りてない。

こんな環境で電気自動車を買うのは、

「二台目は電気自動車」

という富裕層だけ。

日々の移動手段としては使い勝手が悪すぎた。

高額な電気代

高額な電気代

電気自動車の普及を妨げた周辺環境がもうひとつある。

それは高い急速充電の電気代。

高速道路で急速充電柱を利用すると、80セント/キロワットかかる。

BMWのi5は84Kwなので

参照 : BMW i5

 

80セント x 84Kw =67、20ユーロ

かかる計算になる。

これに電力会社の手数料が加算され68ユーロ。

BMWによると

「580Km走れます。」

というがそれは高速を120Kmh、昼間、ラジオなし、暖房、クーラーなし、一人乗車で走った場合。

BMWのガソリン車なら高速でリッター18Km走る。

楽勝で。

580Km ÷ 18 =32,22リッター。

今、ハイオクは1.9ユーロ/リッターなので、

32,22 X 1,9 =61,21ユーロ。

そう、ガソリン車の方が電気自動車よりも安いんである。

BMWのカタログに載っている走行距離をそのまま使っても。

実際はもっと価格の開きが大きいだろう。

すなわち!

環境にはやさしいかもしれないが、電気自動車はガソリン車よりも運用面で費用が高い!

電気自動車の価格上の利点を生かせるのは、自宅で安い電気を充電できる場合。

売れない中古電気自動車

そして何よりも私が電気自動車を購入する気にならないのが、中古車価格。

ほぼ

「鉄くず」

の値しか付きません。

もし

「購入価格の50%引き」

でひきとってもらえればラッキー。

通常は二束三文でです。

「補助金で安く買える!」

と電気自動車を買った消費者は5年、6年後、

“blauen Wunder”(青天のへきれき)

を経験するだろう。

売れない電気自動車

電気自動車はバッテリーがまだ高価なので、ガソリン車よりも高い。

なのに利便性は、内燃エンジン車より優れているわけではない。

しかるに補助金が出なくても、

「環境の為に電気自動車を買います。」

という人が少ないのは自明の理。

具体例を出そう。

フォルクスワーゲンが出した新型電気自動車 ID.7。

たったの300台しか注文が入ってこなかった。

しかし政府は

「2030年までに1500万台の電気自動車登録」

を織り込んで二酸化炭素削減を計算している。

今、ドイツ全土で524万台の電気自動車が登録されている。

過去、2年間補助金で後押しした結果だ。

が、補助金の終了後、登録台数は3万台/月まで落ち込んでいる。

自動車登録台数

 

1年で36万台だ。

このペースではあと6年で、さらに1000万台登録なんて絶対に無理!

加えて今、走っている電気自動車の多くは6年後にはもう走ってない。

メルセデス電気自動車攻勢を考え直す

車メーカーとしては

「環境にやさしい車を製造しています。」

と言えば、受けがいい。

そこでメルセデスは、

「2030年まではすべての新車を電気自動車にする!」

と大見得を切った。

ところが電気自動車が

「フロップ」

したのを見ると、

「2030年までに新車の半分を電気自動車にする。」

と方向転換した。

テスラ大量解雇

この

「電気自動車フロップ」

はドイツだけでなく、電気自動車先進国の中国から米国まで、世界中で起きている。

幸いドイツの車メーカーは、

「電気自動車は売れない。」

とわかれば、内燃エンジン車の生産を増やす方法がある。

が、BYDやテスラはそうはいかない。

BYDは売れない電気自動車を欧州に輸出、ここで劣勢を挽回をする目録だ。

一方、テスラは大量解雇を発表。

 

電気自動車のバッテリー技術で大きな革新が起きない限り、電気自動車フロップはしばらく続きそうだ。

政府の対策は週末運転禁止?

問題はここから。

政府(交通大臣)は、環境保護法で交通分野の二酸化炭素削減目標を定めた。

わざわざ法律まで作って

「これだけ二酸化炭素を削減します。」

と言っている手前

「電気自動車がフロップしたので、法の順守は無理でした。」

と言い訳ができない。

そこで交通大臣は、

「週末の自動車運転禁止を考えている。」

と言い出した。

これに対し交通局が

「制限速度120Kmhを導入すれば、十分な量の二酸化炭素を削減できる。」

と唱えると、その交通大臣は、

「速度制限導入は解決にならない。」

と交通局が提唱した方法を拒絶。

信号政権は(また)与党内ですったもんだの末、

  • 産業部門
  • 住宅部門
  • 交通部門

のそれそれの分野で

「削減目標に達成したかどうか」

を見るのではなく、

「すべての分野を合算して、削減目標に達成したかどうか判断する。」

と条件を緩和した。

言い換えれば、交通大臣が何もしないので、住宅部門と産業部門で二酸化炭素をさらに削減することが必要になった。

これが長続きしないのは自明の理。

政府は自分で定めた法律を守れないので、次回の選挙までの逃げ道をこしらえただけ。

日本の自民党と、やっていることは大して変わらない。

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執筆者:

nishi

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