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プーチンの侵攻に備えろ!ドイツ軍再編成計画

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プーチンの侵攻に備えろ!ドイツ軍戦争準備を急ぐ

今、ドイツでは

「プーチンの侵攻に備えろ!」

と国防準備に大忙し。

その中核をなすのがドイツ軍の再編成。

先月、国防大臣がその

「ドイツ軍再編成計画」

を告知したので、その内容と企図を紹介したい。

平和ボケ

2022年2月、プーチンは

「旧ソビエト圏の復活」

を夢見て、ウクライナへの軍事侵攻を命じた。

焦るプーチンが犯した戦術上の痛恨のミス

こっけいだったのは平和ボケのドイツの反応。

ヨーロッパの中庭で起きた戦争なのに、外相と国防相は、

「ウクライナへの軍事支援としてヘルメットを5万個送る。」

と声高々に発表。

世界中から嘲笑を買った。

それでも社会民主党政権は周辺状況に押されて、これまでの

「平和外交」

から180℃方向転換、本格的な軍事支援に踏み切った。

が、まだ想定が甘すぎた。

ゼレンスキー大統領は侵攻直後から、

「ウクライナが落ちれば次はバルト三国、そしてヨーロッパだ。」

と警告を発しているのに、

「いやいや、そんなことはないっしょ。」

と、ロシアの脅威を真面目に取らなかった。

当然、ウクライナへの追加軍事支援も及び腰で、

「もう負けそう。」

という事態になるまで遅らした。

もっともこれはドイツだけの問題ではない。

フランスのマクロン大統領はブチャの市民大量虐殺を目にした後、

「ロシアを辱める行為は避けるべきだ。」

と発言した。

このように、バルト三国とチェコを除くと欧州はロシアの危険を真面目に取っていなかった。

平和ボケにトランプショック!

その誤った基本姿勢は、侵攻開始から2年経っても変わることはなかった。

ところが米国大統領選挙のキャンペーン中、トランプが、

「俺はプーチンに侵攻されても欧州を助けない。プーチンは好きなようにすればいい。」

との発言によって、欧州各国はようやく目が覚めた。

俗に言う

「トランプショック」

である。

欧州各国は

「あのトランプなら本当にやりかねない。」

と、ようやく重い腰を上げて軍備増強に踏み切った。

100億ユーロの特別軍事予算

日本同様にドイツでも、

「軍事予算に大金をつぎ込むと経済競争で負ける。」

という考えが定着していた。

この為、軍事予算は削られ続け装備は老朽化。

ヘリはあるが、一機も飛べない。

有事に使える戦車は戦車連隊でも10台程度。

という惨状だった。

ドイツ空軍が1990年代に導入した戦闘爆撃機”Tornado”は、とっくに後続機に入れ替わる筈だったが、

「金がない。」

と入れ替えを延期。

結果、ベトナム戦争中に開発された戦闘機を今でも使用している。

 

ところがロシア軍のウクライナ侵攻をじかに見て、平和ボケのドイツの政治家にも、

「このままではヤバイ。」

とわかった。

そこでショルツ首相は2022年11月

「100億ユーロの軍事予算」

を告知した。

 

この予算で老朽化して装備を近代化するだけでなく、装備品の数も増やすという目論見だ。

最新鋭戦闘機 F-35 導入決定

この特別軍事予算でドイツ空軍はやっとトルナードの継続モデルを決定した。

これまでは

「安いF-18でいいんじゃない?」

と議論されていたが、最新鋭のF-35に決まった。

その数は35機。

これでドイツ軍は米軍との取り決め、

「有事には米国製の核爆弾を詰める機体を擁する事。」

を果たすことができる。

新型 Waffenträger 導入決定

さらに!

ドイツ陸軍には60年代に導入されていた超~古い

“Waffenträger Wiesel”(そもまま訳すと武器を担ぐ人)

 

の後続機の導入が決まった。

新型は主砲に30ミリ機関砲を装備。

これに加えて対歩兵用の7,62mm機関銃も装備。

武装装甲車両は人員輸送に主眼があるが、こちらは武装レコン用。

38,5トンのその巨体はほぼ戦車並み。

海上哨戒機

特別軍事予算で

「冷や飯」

を食わされたのがドイツ海軍。

購入されるのは3機の海上哨戒機のみ。

海軍長官は、数年前に注文して建造中の駆逐艦の

「購入オプション」

を履行してさらに2隻注文するように懇願している。

しかし特別軍事予算はもう空。

あの財務大臣の拒絶姿勢を見る限り、

「あと2隻の追加」

の可能性はあまり高くない。

プーチンの侵攻に備えろ!ドイツ軍再編成計画

戦争は装備だけでは戦えない。

戦闘を計画する指導部と、その計画を遂行する兵隊が必要だ。

そしてドイツ軍はどちらの点でも要改善。

しかしドイツ軍は長く

「改善不可能」

と言われてきた。

おいしいポジションにある民間官僚、それに将軍が改革案があがった時点で、これを総攻撃。

議論になる前に潰してしまう。

これが

「目に見えている」

ので歴代国防大臣は改革には手を付けなかった。

ところが現国防大臣は、

「戦争ができる軍にする必要がある。」

と発言、改革を断行する決心を告げた。

そもそもプーチンのウクライナ侵攻前に国防大臣が、

「戦争ができる、、。」

なんて言ったら集中砲火を浴びて、

「そういう意味ではありませんでした。」

と撤回を迫られていた。

今回もニュースにはなったが、批判はプーチン派の左翼と極右から上がった程度。

ドイツ国民は戦争の危険性を認識したようだった。

統合司令部創設

まずは組織上の改革から始めよう。

ドイツ軍のこれまでの主要任務は海外派遣。

別名

「政治家の売名行為」

だ。

政治家の判断でアフガンに派兵され30名を超える死者を出したが、その成果はゼロ。

政情不安定なマリへの派兵も同じ。

結局、クーデターで兵士を危険にさらし、退却を迫られた。

ドイツがプーチンの侵攻の危機にさらされているのに、海外派遣なんぞしている場合ではない。

そこで国防大臣は海外派遣の為に創設した

“Einsatzführungskommando für Auslandseinsätze”(海外派遣司令部)

を統合司令部の下に置き、将来はここで計画させることにした。

言い換えるとこれまでふたつあったドイツ軍の司令部を、ひとつにまとめる。

かってドイツが創設してその能力を誇示、日本を含めてあらゆる軍隊が模倣した

「旧参謀本部形式」

に戻す。

これで命令系統がすっきりする。

輸送・衛生兵部隊の解体 – ドイツ軍再編成計画

さらに国防大臣はこれまで独立して存在していた輸送隊、衛生兵隊を解体して、それぞれの部隊に直属させることにした。

わかりやすいように自衛隊の例を出そう。

能登半島で大地震が発生!

自衛隊に災害派遣命令が出たが、まさか歩いていくわけにはいかない。

能登半島に行くためには兵隊を載せる輸送車両が必要だ。

しかし部隊は独自の輸送手段を持っていないので、

「災害派遣計画書」

を作成する際、あからじめ輸送部隊に輸送をお願い。

「しょうがないなあ。」

とお説教を聞かされて、これが許可されて初めて、部隊輸送が可能になる。

衛生兵も同じ。

人命がかかっているのに

「まどろっこしい!」

の一言に尽きる。

そこで輸送隊を解体して(自衛隊で言えば)普通科の下に直属させる。

その運営は普通科の連隊長次第。

計画の立案がスムーズになり、災害派遣も早くなる。

徴兵制の再導入? – ドイツ軍再編成計画

そしてピストーリス国防相が一番頭を悩ませているのが、兵隊不足。

ドイツ軍の定員(兵士のみ)は20万人。

今、18万しかいない。

定員を10%も割り込んでいる。

今、ウクライナが兵士不足で悩んでいるが、戦争が始まる前から

「10%の定員不足」

では戦えない。

国防大臣は、

「徴兵制の再導入も考えるべき。」

と発言する度に、

非難の嵐。

野党は

「いいぞやれ!」

と言っているのが、国防大臣の社会民主党が反対している。

フランスを手本にした

「外国人部隊」

の創設まで議論されている。

もうひとつの案が、

「スウエーデン式徴兵制」

だ。

スウエーデンは一度、徴兵制を廃止したが、

「全然、志願者が居ない。」

と徴兵制を再導入した。

以来、スウエーデンでは18歳になると

「徴兵カード」

が届き、軍役に耐えられるかチェックを受ける。

自衛隊なら、

「自分の名前が言えれば可。」

だが、スウエーデンでは結構、厳しいチェックをする。

この為、

「合格率」

は35%。

ピストーリス国防相が一番理想としているのが、この案。

しかしまずは

「党内の反対派を黙らせる事ができるか?」

によって大臣の正式な提案も変わってくるだろう。

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執筆者:

nishi

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