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冬タイヤ / Winterreifen 装着しないと駄目って本当?

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冬タイヤ / Winterreifen 装着しないと駄目って本当?

今回のテーマは 冬タイヤ / Winterreifen です。

「ドイツ 冬タイヤ」は、毎年秋になると検索エンジンからのヒット数が増えてくる季節キーワード。ドイツに住んでいる日本人が、ネットで検索しています。

ドイツでは冬タイヤに関する交通法規が何度か変更され、2010年に最後の変更がありました。10年も前に出来上がった法律なのですが、ドイツに住む日本人は言うに及ばず、ドイツ人でも正しく理解している人は稀。

この無知を利用してタイヤメーカー各種は、「冬タイヤは義務です!」と秋になると宣伝攻勢、タイヤの販売に余念がない。

何も知らない日本人がドイツで車を買えば、「冬タイヤも一緒に買わないと、義務ですからね。」と畳みかけてきます。ここではそんな虚偽の宣伝に騙されないように、冬タイヤに関するドイツの交通法規をご紹介します。

交通法規改正 最初の試み

言うまでもなく、ドイツの冬は寒いし雪も降りますが、温暖化の影響で街中に雪が積もることは滅多にないです。通常であれば2月あたりに一回雪が積もるくらいですが、それさえもない年が増えてきました。

しかし高速道路などは標高の高い山を越えていくので、雪が降りやすい。そんな道路を通常のタイヤ(Sommerreifen / 夏タイヤ)で走行すると、間違いなく衝突事故を起こします。それも数台の車を巻き込んで。

そこでドイツ政府は思い腰をあげて交通法規を改正、雪が降っている状況での冬タイヤの装着を義務化しました。ところが、ドイツらしいことにあちこちの利害団体から政治家に陳情(賄賂)があり、わかりにくい法律ができあがってしまいました。

ドイツの交通法規、Strassenverkehrs-Ordnung、略してStVO の2部、3章aには、

“Bei Kraftfahrzeugen ist die Ausruestung an die Wetterverhaeltnisse anzupassen.”(自動車には気候に適した装備を行うべし。)

と書かれていたんです。

ただでも大衆の理解力は低いのに、何が気候に適した装備なのか、その判断を大衆の良識にゆだねたため、誤謬が常識となってしまいました。これに貢献したのが、大衆が信じているタイヤに関する二つの神話です。

冬タイヤに関する二つの神話

ドイツではタイヤに関する「神話」が2つあります。

  • 気温が8度を割ると夏タイヤのゴムが硬くなり、ブレーキをした際、制動距離が長くなる。

気温が8度以下の状況で雨が降っていたり、あるいは雪が積もっておれば、夏タイヤでは冬タイヤに比べて制動距離が長くなります。これは正解。

しかし道路が乾いている限り、気温が8度以下でも、夏タイヤの方が制動距離は短くて済みます。

冬タイヤが効果を発揮するのは、雪が降って(積もって)いるか、道路が濡れて(凍って)いる時だけ。日本語のスノータイヤという言葉は、ドイツ語の冬タイヤという言葉より、その効果の程を的確に表現しています。

この神話は冬タイヤを売りたいタイヤ業界が考え出して、市民に幅広く受け入れられた神話のひとつです

  • 冬(11月から)になると、冬タイヤの装着は義務である。

この誤解はは法律の、「自動車には気候に適した装備を行うべし。」が、大衆の理解の限界を超えてしまったことに起因します。気候に適した装備とは、「雪が降っていれば(積もっていれば)冬タイヤ」いう事になります。

でも多くのドイツ人はそう解釈しないで、寛容の精神で「冬季の冬タイヤの装着は義務。」とやってしまった。もっともこれには他の原因もありました。

タイヤメーカーと車の整備工場の宣伝攻勢

2006年にこの法律が施行されると、車のタイヤメーカーとそのタイヤを売る車の整備工場は、笑いが止まらなかった。

これで冬タイヤの爆発的な売り上げが期待できる。在庫切れで儲けのチャンスを逃さないように、あらかじめ大量のタイヤを注文(生産)、客が怒涛のように押し寄せてくるのを待っていた。

ところが温暖化の影響で雪が降らず、客足は一向に伸びなかった。多くのドイツ人は高い冬タイヤの費用(タイヤだけでなく、冬タイヤ用のホイールも必要になる。)を節約、少々雪が降っても夏タイヤで走行、

「俺はシューマッハ並みの腕があるから、そんな物は要らない。」

と言い出す始末。

これでは大儲けどころか、在庫がはけず大赤字になる。これを避ける為に、タイヤメーカーと修理工場は一丸になって

「冬タイヤの装着が義務化されました。これに違反すると罰金です。」

とテレビ、ラジオ、新聞で大宣伝。

「テレビで言っているくらいだから、これは本当に違いない。」

と多くのドイツ人は思い込んで、冬タイヤを購入、タイヤメーカーと修理工場は在庫を失くすことに成功した。その結果、ドイツ人の頭の中には、「冬には冬タイヤの装着は義務。」と刻み込まれてしまったのである。

冬タイヤ / Winterreifen 装着しないと駄目って本当?

実際面から言うと、デッセルドルフに住んでいると通勤に車を使わない限り、冬タイヤは要らない(と思う)。

いつも決まって2月~3月になって雪が降って、2~3時間ほど道路に雪が積もる。でも雪が降るとすぐに市の塩撒き車が登場、塩をまくので雪はすぐに解けてしまう。

車で出かける際に雪が降っていれば、その日は車は車庫に置いて、電車かタクシーで出かけるだけで、高い冬タイヤの費用が節約できる。

車で長距離通勤される必要がある方、あるいはデッセルドルフ近郊WuppertalやSolingenに住んでいると、冬タイヤは避けて通れない。

ただ、一言に冬タイヤと言っても大きな違いがあるので、幾つか注意すべき点を挙げてみます。

M+S & アルペン シンボル

まず、冬タイヤを買うことに決心したら、安い中国、韓国製のタイヤは避けよう。

日本では「安物買いの銭失い。」という表現がある。ドイツでも”Wer billig kauft, kauft zwei Mal.”(安く買うと、買い直す。)という通り、安いタイヤには安い理由があります。

ドイツ製のコンチネンタル、日本の資本が入っているダンロップ、おフランスのミヒェリンに比べて、制動距離が長過ぎて事故の危険が高いです。また「本物の」冬タイヤはM+Sと表記されています。

さらにはその後にアルペン(山)のシンボル+雪マークが刻印されていることが条件です。

冬タイヤ M+S

これは泥+雪に対して有効という意味。安物の冬タイヤには、このM+Sのシンボルが欠けています。そんな冬タイヤはデイスカウント スーパーなどで大特価で買う事ができますが、役に立たず、お金だけ失うだけ。

ただ有名メーカー製のタイヤでも、買う前にタイヤの製造年月を確認しよう。

DOT / 製造年週

冬タイヤの寿命は(ゴムが硬くなるので)4~5年。(勿論、走行距離次第です。)冬が本格化する前9~10月に冬タイヤを購入すると、間違いなく去年の在庫で、それだけで寿命が1年短くなります。

でも2年前の古タイヤを掴まされないように注意しよう。

どこを見ればいいの?

タイヤの側面に DOT と呼ばれる製造年週が刻まれています。

DOT / 製造年週

写真の47/13とは、2013年の47週(すなわち10月)に製造されたという刻印です。

ちなみに12月以降にタイヤを買うと、(前年の在庫が売り切れて)その年に製造されたタイヤを買うことができますが、でも、冬に冬タイヤを買うと滅茶苦茶高いです。

全季節型タイヤ / Allwetterreifenとは?

そうそう、冬タイヤと夏タイヤだけでなく、1年中使用できる全季節型タイヤ / Allwetterreifen というタイヤもあります。

これは冬タイヤと夏タイヤの中間。つまり冬(夏)には冬(夏)タイヤほど効果はないが、夏(冬)タイヤよりはマシという代物。

このタイヤは冬タイヤではないので M+S アルペンシンボルもないですが、降雪時に装着していても合法なタイヤです。タイヤ交換の手間とお金を節約したい人には、このタイヤを購入する人が多いが、肝心な場面であまり役に立たない(制動距離が長くなる)です。

又、雪の中を(冬タイヤで)走行したら、車は塩漬けの状態。そのままにしておくと、錆びます。翌日は車の洗車に行ってUnterbodenwaesche(車の裏洗浄)のメニューを追加しよう。

冬タイヤどこで買う?

最後に、「どこで買うか。」ということになりますが、快適にタイヤ交換を済ませたい人は、お持ちの車の正規代理店に行くのが一番。

いつ行っても在庫がある(筈)。又、タイヤへの交換には冬タイヤ専用のホイールが必要になりますが、その際ホイールの大きさ、幅の他、ET と呼ばれる Einpresstiefe にも注意する必要がある。

これが合っていないと正しく装着できません。いい加減な修理工場だとこれをちゃんと確認しなかったり、あるいは間違えてしまうこともある。正規代理店なら、そんなこともなくて安心。だが高い。

少しでもお金を節約したいなら自分で ET を調べてインターネットでタイヤを注文、近くの修理工場に届けてもらう方法。どちらの方法が自分にあっているか、それは懐具合とドイツ語能力次第。

冬タイヤ 今度は本当に義務化!

消費者が相変わらず冬タイヤを誤解していたので、交通法規の冬タイヤに関する部分は2010年に改正されました。法務省のホームページでは以下のように記述されています。

“Der Führer eines Kraftfahrzeuges darf dies bei Glatteis, Schneeglätte, Schneematsch, Eisglätte oder Reifglätte nur fahren, wenn alle Räder mit Reifen ausgerüstet sind, die unbeschadet der allgemeinen Anforderungen an die Bereifung den Anforderungen des § 36 Absatz 4 der Straßenverkehrs-Zulassungs-Ordnung genügen.”

参照 : gesetze-im-internet.de

わかりやすく言えば、「路面凍結時、積雪による滑りやすい道路状況、降雪時、その他の凍り滑りやすい状況では、相応の条件を備えたタイヤを装着すべし。」という内容です。

何処がこれまでと違うの?

基本、同じです。これまでは「気候に適した装備」との表現だったので、どんな気候でどんなタイヤを装着すべきか、消費者の良識に任せていました。

ところがこの良識が機能しなかったので、「路面凍結時、積雪による滑りやすい道路状況、降雪時、その他の凍り滑りやすい状況では冬タイヤ」と明言しました。

すなわち冬でも

  • 雪が降ってない
  • 道路が凍っていない

状況であれば、夏タイヤでも問題なし。ドイツ人がよく言う、「10月から4月は冬タイヤ」は目安です。法的な義務があるわけではありません。これできっと大丈夫ですよね?

-ドイツの達人になる, 交通

執筆者:

nishi

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