今回のテーマは冬タイヤ。
毎年秋になると、検索エンジンからのヒット数が増えてくる季節キーワード。
ドイツに住んでいる日本人が
「ドイツ 冬タイヤ」
と、ネットで検索しています。
そこでドイツの達人が一肌脱いで、あなたの悩みを解決します。
この記事の目次
交通法
ドイツの交通法規は
Straßenverkehrsordnung(交通法規)
と言います。
長いので
“StVO”
と省略されるのが普通。
次回、スピード違反の
「罰金支払い令」
が届いたら、是非、冒頭に注意してください。
”Gemäß § XX StVO ”
「交通法規〇条に基づき、、、」
と書かれています。
交通法規改正 最初の試み
勿論、冬タイヤも交通法規でばっちり規定されています。
ドイツの交通法規 StVO の2部、3章aには、
“Bei Kraftfahrzeugen ist die Ausruestung an die Wetterverhaeltnisse anzupassen.”(自動車には気候に適した装備を行うべし。)
と書かれていたんです。
この法律の何処が悪かったか、わかりますか?
それは、
ドイツ人は、
「俺はシューマッハだ!」
と雪が積もった道路を夏タイヤで走行。
滑って事故を起こします。
警察に罰金を科されると、
「冬タイヤを装着しろとは書かれていない!」
と抵抗したんです。
そこで法律の改正が必要になりました。
冬タイヤ 装着しないと駄目って本当?
ドイツ人が
「気候に適した装備」
について誤解していたので、交通法規の冬タイヤに関する部分は2010年に改正されました。
今では以下のように記述されています。
“Der Führer eines Kraftfahrzeuges darf dies bei Glatteis, Schneeglätte, Schneematsch, Eisglätte oder Reifglätte nur fahren, wenn alle Räder mit Reifen ausgerüstet sind, die unbeschadet der allgemeinen Anforderungen an die Bereifung den Anforderungen des § 36 Absatz 4 der Straßenverkehrs-Zulassungs-Ordnung genügen.”
わかりやすく言うと、
という内容です。
何処がこれまでと違うの?
基本、同じです。
これまでは
「気候に適した装備」
との表現だったので、どんな気候でどんなタイヤを装着すべきか、消費者の良識に任せていました。
ところがこの良識が機能しなかったので、
「路面凍結時、積雪による滑りやすい道路状況、降雪時、その他の凍り滑りやすい状況では冬タイヤ」
と明言しました。
すなわち冬でも
- 雪が降ってない
- 道路が凍っていない
状況であれば、夏タイヤでも問題なし。
ドイツ人がよく言う、
「10月から4月は冬タイヤ」
は目安です。
法的な義務があるわけではありません。
冬タイヤ要るの?
実際面から言います。
もしデッセルドルフに住んでいるなら、通勤に車を使わない限り冬タイヤは要らない(と思う)。
いつも決まって2月~3月になって雪が降って、2~3時間ほど道路に雪が積もる。
でも雪が降るとすぐに市の塩撒き車が登場、塩をまくので雪はすぐに解けてしまう。
車で出かける際に雪が降っていれば、その日は車は車庫に置いて、電車かタクシーで出勤すれば高い冬タイヤの費用が節約できる。
車で長距離通勤される必要がある方、あるいはデッセルドルフ近郊WuppertalやSolingenに住んでいると、冬タイヤは避けて通れない。
ただ、一言に冬タイヤと言っても大きな違いがあるので、幾つか注意すべき点を挙げてみます。
M+S & アルペン シンボル
まず、冬タイヤを買うことに決心したら安い中国、韓国製のタイヤは避けよう。
ドイツでは
“Wer billig kauft, kauft zwei Mal.”(安く買うと、二回買う。)
という通り、安いタイヤには安い理由があります。
格安タイヤでは制動距離が長くなり、事故の危険が高いです。
また
「本物の冬タイヤ」
はM+Sと表記されています。
さらにはその後にアルペン(山)のシンボル+雪マークが刻印されていることが条件です。
これは泥+雪に対して有効という意味。
安物の冬タイヤには、このシンボルが欠けています。
そんなタイヤはデイスカウント スーパーなどで大特価で買う事ができますが、役に立たず、お金だけ失うだけ。
ただ有名メーカー製のタイヤでも、買う前にタイヤの製造年月を確認しよう。
DOT / 製造年週
冬タイヤの寿命は(ゴムが硬くなるので)4~5年。
勿論、走行距離次第です。
冬が本格化する前の9~10月に冬タイヤを購入すると、間違いなく去年の在庫。
それだけで寿命が1年短くなります。
でも2年前の古タイヤを掴まされないように注意しよう。
どこを見ればいいの?
タイヤの側面に DOT と呼ばれる製造年週が刻まれています。
写真の47/13とは、2013年の47週(すなわち10月)に製造されたという刻印です。
ちなみに12月以降にタイヤを買うと、(前年の在庫が売り切れて)その年に製造されたタイヤを買うことができますが、
でも、冬に冬タイヤを買うと滅茶苦茶高いです。
全季節型タイヤ / Allwetterreifenとは?
そうそう、冬タイヤと夏タイヤだけでなく、
“Allwetterreifen”( 1年中使用できる全季節型タイヤ )
というタイヤもあります。
これは冬タイヤと夏タイヤの中間。
つまり冬(夏)には冬(夏)タイヤほど効果はないが、夏(冬)タイヤよりはマシという代物。
このタイヤは冬タイヤではないので M+S アルペンシンボルもないです。
が、降雪時に装着していても合法なタイヤです。
タイヤ交換の手間とお金を節約したい人には、このタイヤを購入する人が多い。
が、肝心な場面であまり役に立たない(制動距離が長くなる)です。
2024年 道路交通法改正
これまでは上記の交通法規でうまくやってきたんです。
しかし、やはりスリップ事故がなくならない。
そこでドイツ政府は2024年に道路交通法法を改正。
ここで
「装着していい冬タイヤ」
について厳格に規定しました。
冬タイヤはアルペンシンボルのみ可
これまでの交通法規では、
「冬タイヤであれば、何でもいい。」
という規定でした。
やっぱりマズかったようです。
そこで法改正により
となりました。
すなわち!
M+Sシンボルだけでは不可。
加えて全天候タイヤも不可。
この法改正は2024年10月より施行されています。
「正しくない冬タイヤ」
でスリップ事故を起こすと、あなたの自動車保険が
「過度の落ち度なので、保険金は払いません。」
というかもしれません。
事故を起こさなくても、警察に見つかると罰金120ユーロです。
正しい冬タイヤを装着するか、
「そんな金はない!」
という方は、雪が積もっている日は電車通勤に切り替えましょう。