ドイツの政治 ドイツの最新情報

家族大臣が財務大臣を恐喝! 賛成して欲しければ金を出せ?

投稿日:

家族大臣が財務大臣を恐喝! 賛成して欲しければ金を出せ?

ドイツに16ある省の中で

「一番格が低い」

のが、

“Familienministerium”(家族省)

だ。

日本の環境省に相当して

「初めての大臣職の登竜門」

になっている。

一方、一番格が高いのが財務省。

やっぱり金です。

今回、その財務大臣が作らせた経済成長チャンス法案に、よりによって家族大臣が閣議で賛同を拒否。

結果、法案として国会に出せない結果に。

一体、何があったのだろう?

家族大臣 パウス

現家族大臣は

“Lisa Paus”(リサ パウス)女史。

1968年生まれの緑の党の政治家。

専門は

“Volkswirtschaft”(経済)。

全く失礼な言い方だが、外見は

「パッ」

としない。

ところが前任者が、

「ドクター論文を書き写した。」

事がばれて、引責辞任。

「スキャンルを起こさない地味な政治家は居ないか?」

と後継者探しになり、彼女の

「地味さ」

が昇進の原動力となった。

かってヒトラーが大家さんに、

「将来、何が必要になるかわからないもんですよ。」

と言ったが、まさにその通り。

彼女の地味さが、大臣への昇進を可能にした。

パウス大臣の華麗な(?)キャリア

ドイツでは大臣の仕事ぶりを、

「どれだけ多くの法案を出したか。」

で決める悪い癖がある。

メルケル政権時、初めて厚生大臣についたスパーン氏はその意味ではまさに見本のような存在。

数々の法案を吉本喜劇のように連発、結果、健康保険の出費が増大。

ドイツの健康保険システムは崩壊寸前になり、現厚生大臣が

「尻ぬぐい」

に懸命だ。

パウス大臣が提出した法案はゼロ。

ドイツ風に言えば、

「全く働いてない。」

ということになる。

逆にスキャンダルもゼロ。

「ぱっとしない大臣が欲しい。」

という緑の党、ひいてはショルツ首相の意向を

「思う存分」

に組んでいる。

ところがである。

「夜になる前に、その日を褒めるな。」

というドイツの諺がある通り、家族大臣は万を喫して画期的な

“Kindergrundsicherung”(子供基本保障)

という法案を持ち出した。

それもよりによって

  • ロシアのウクライナ侵攻
  • 不景気(税収入の低下)
  • 物価高騰

の三十苦に悩んでるときにだ。

そんな金はない!

パウス家族相の提案を聞いた財務大臣の反応は、

「そんな金はない!」

だった。

財務大臣は、

「まずは歳出を削れ!話はそれからだ!」

と命令。

パウス家族相は官僚に家族省の歳出を削る案を幾つか提出させ、子供基本保障にかかる金を

「20億から70億ユーロ」

と再計算して提出。

ところが財務大臣は、この提案をスルーした。

経済成長チャンス案

ドイツは今、景気後退のど真ん中。

産業は

「景気活性化プランの出番だ!」

と政府に圧力をかけている。

これを受けいろんな大臣が、いろんな経済活性化案を披露した。

個人的には

「落ち込んだ住宅市場を補助金で活性化させる案」

が魅力的に思えた。

多くの雇用を創出する建築業界の雇用を守り、同時に住宅不足を

「一石二鳥」

で退治できる。

一方、評価が地に落ちている通産大臣は、

「産業用の安価な電気料金の導入」

を提唱した。

一見すると納得できるんだが、そのツケ(補助金の財源)を払うのは国民。

ただでもバカ高い電気代に

「産業の為の安い電気補助金」

が上乗せされるのでは、たまったものではない。

その一方で財務大臣が提唱したのが、

“Wachstumschancengesetz”(経済成長チャンス案)

だ。

ドイツではこうした恥ずかしい名前の法案が流行っており、これもそのひとつ。

具体的には、

「環境保護・資源の節約を促進するテクノロジー・投資を補助金と減税で促進する。」

というもの。

予算は60億ユーロ。

正直な所、経済を活性化させるには額が低すぎる。

「最低もその3倍の規模が必要。」

というのが経済専門家の見方だ。

結局、

「産業が不景気であえいでいるときに、政府は何もしなかった。」

という苦情に対処するための

「アリバイ作り」

のように思える。

家族大臣が財務大臣を恐喝! 賛成して欲しければ金を出せ?

財務大臣、正確には財務省の官僚が、恥ずかしい名前の法案を作成。

財務大臣はこれを閣議に提出して、閣僚の賛同を得てから国会に提出。

国会で形だけの質疑を済ませると、過半数に物を言わせて強制決議。

2024年からは法が施行する。

というほぼ完璧なタイムスケジュールが、出来上がっていた。

実際、閣議に法案を出す前に連立政権のパートナーにも

「根回し」

を済ませており、全員一致で先に進めるはずだった。

ところが閣僚でただ一人、財務大臣の経済成長チャンス案に反対した大臣が居た。

そう、家族大臣のパウス女史だ。

国会で野党が、与党の法案に反対するのは当たり前。

ところが閣議で財務大臣の法案に、一番格の低い家族大臣が反対したのは、ドイツで半生を過ごした私でも経験がない。

わざわざ勘繰らなくても、パウス大臣の

「意味のない経済対策に60億ユーロも使うなら、子供基本保障に予算をつけてくれ!」

との心の叫びが聞こえてくる。

これまであんまり

「パッとしない」

家族大臣が、一気に見せ場を作った。

かってメルケル首相も家族大臣からキャリアを積んだ。

が、

「ぱっとしない外見」

の為、多くの政治家が彼女を政敵とは考えていなかった。

やはり人は外見で判断するべきではなかった?

-ドイツの政治, ドイツの最新情報

執筆者:

nishi

コメントを残す

アーカイブ