現政権が政策の柱に上げているのが Kindergrundsicherung 。
と言われても、
「何それ?」
という方の方が圧倒的だろうから、ここで詳しく解説しておこう。
この記事の目次
Kindergrundsicherung 何それ?お金もらえるの?
現ドイツ政府は、
- SPD /社会民主党(赤)
- FDP / 自由民主党(黄)
- Grünen / 緑の党(緑)
からなる連立政権の為、
“Ampelkoalition”(信号政権)
と呼ばれている。
その信号政権は連立協定書にて
“Kindergrundsicherung”
の導入に同意・署名をした。
導入の裏にある考え
その
“Kindergrundsicherung”(子供基本保障)
という名前から
「なんとなく」
推測できるように、この法律は子供を持つ家庭だけに該当します。
“Ja, aber”(はい、でも)
です。
この法律は元々、収入の(少)ない家庭の子供を
「”Kinderarmut”(子供貧困)から守ろう!」
という立派な志から始まりました。
そもそも肌の色、宗教、国籍に関わらず
「皆が平等」
と憲法に謳っているのに、お金持ちの家庭に生まれた子供が
「有利」
なのは自明の理。
これを完全になくすことはできないものの、
「収入の(少)ない家庭の子供を、もっと援助しよう!」
というのが、”Kindergrundsicherung”(子供基本保障)です。
お金持ちは絶対に有利!
ドイツでは
“Kindergeld”(児童手当)
は収入に関係なく支払われます。
おまけにタックスフリー。
お金持ちが有利なのは言うまでもない。
さらに!
お金持ちは児童手当をもらう代わりに、
“Kinderfreibetrag”(子供不課税額)
を申請することができる。
これが年間5620ユーロ(2023年)と、かなりの高額。
これに加えて
“Otto-Narmal-Verbraucher”(一般市民)
には
「高嶺の花」
の家庭教師や私立の学校費用まで追加で、税金から控除できる。
このふたつの控除額を合算すると8952ユーロ。
児童手当が250ユーロ/月なので、3000ユーロ/年。
裕福な家庭の子供が有利なのは、明らかだ。
真っ赤な嘘
ドイツに住む日本人の間では、
「お給料が高いと、児童手当は出ないらしいよ。」
という
「真っ赤な嘘」
が堂々と語られている。
「えっ、違うの?」
という方も多いだろう。
うんにゃあ。
上で書いた通り、問題は収入ではなく国籍なんです。
児童手当が出るのはEU国籍保有者か、以下の国籍を有して
- アルゲリア
- ボスニア、ヘルツゴビナ
- コソボ
- モロッコ
- モンテネグロ
- セルビア
- チュジニア
- トルコ
ちゃんと仕事をして税金を払っている場合です。
もっとも日本人でも児童手当がもらえる方法があります!
それは
“Niederlassungserlaubnis”(永住許可証)
を持っている場合です。
「知らなかった!」
という方は、さっさと申請して児童手当をゲット!
これまでのシステムの問題点
児童手当がほぼ何をしないでも
「勝手に」
両親の銀行口座に振り込まれるのに対して、
“Kinderfreibetrag”
”Kinderzuschalg”
などの補助金・助成金・税金控除は両親が担当官庁まで出かけて、言われた書類を出さなくてはならない。
が、所得の(少)ない家庭の両親は、官庁とのやりとりが苦手。
学校もろくに出てないので、
「聞いてもわからない。」
と、面倒な申請をしない。
そこで”Kindergrundsicherung”(子供基本保障)では、こうした補助金・助成金をひとつにまとめて、
「両親の口座に毎月、入金されるようにしよう!
というもの。
現時点では最高裁が
“Garantiebetrag”(保証額)
として言い渡した573ユーロ(一人頭)/月になる予定だ。
現在の為替レートで、ほぼ9万円。
日本の児童手当が1万5000円である事を考えたら、ほぼ6倍。
日本で子供を育てるのが馬鹿らくなる額だ。
Kindergrundsicherung いつから?
法案が夏に国会に出て、今年中に国会を通ればという条件付きだが、2025年からの支給を予定している。
だが、決定的な問題もある。
無い袖は振れない?
ところがである。
大きな問題がある。
それは財源。
家族大臣は
「120億ユーロ」
必要と見積もっている。
ところが財務大臣は、
「20億ユーロしか出せない。」
と家族大臣の要求をブロック。
そればかりか、
「予算が欲しいなら、何処から出せばいいか、その財源を示せ!」
と対決姿勢。
しかしである。
世論調査で極右政党に追い越されたSPDの首相は、
「点数稼ぎ」
の為、家族大臣の側について、
「8月末までに法案を出すように。」
と指示。
しかし要求の隔たりがあまりにも大きいので、”Kindergrundsicherung”(子供基本保障)がそのまま法案になるかは
「神のみぞ知る」
である。
決まったらここで紹介します。
Kindergrundsicherung その額は、、
与党内での大喧嘩の末、子供基本保障額は250ユーロにまで削られた。
そうなんです。
予算がないので、児童手当を子供基本保障と呼ぶ事で政府が仕事をしているように見せる
“Mogelpackung”(嘘の中身)
です。
ただし!
子供の遠足日(年一回だけ)など、申請すれば補助金が下りるそうです。
もっとも子供基本保障はこうした申請をなくして、
「すべての子供が平等に!」
という思想だったので、これじゃ前と何も変わらない。
これがドイツ流の
「改革」
です。