ドイツの達人になる 規則、法律

著作権侵害 警告料金が安くなるって本当?

投稿日:2021年12月17日 更新日:

著作権侵害 警告料金が安くなるって本当?

日本を含むアジアは著作権の無法地帯。

テレビ番組や映画を勝手に録画した動画が、ユーチューブなどで堂々と配信されている。

そのような無法地帯に慣れてドイツに来ると、そこは別世界。

ドイツではそもそもそんな内容は、アップデートできない。

もしできても、すぐに消されてしまう。

「ひどい!」

と思ったアナタ。

本当にひどいのはこれからで、

“Inkassofirmen”

からのお手紙が書き留めで届きます、、。

著作権侵害 の始まり

映画や動画の違法ダウンロードは、ドイツに住む日本人にも人気。

最新の映画や聞きたい音楽が無料でダウンロードできる

「サービス」

は、”Filesharing”、あるいは”P2P”とも呼ばれる(*1)。

参照 : P2P

 

厳密に言えば、ファイルシェアリングで映画や音楽をダウンロードするのは違法ではない。

無償でダウンロードするそのお返しに、音楽や映画のデータを視聴、あるいはダウンロードに提供すると、違法行為になる。

本当に著作権侵害を止めさせたいなら、

「ファイルシェアリング」

を提供しているプラットフォームの経営者を訴えて、違法な商売ができないようにすればいい。

しかし著作権協会は、映画や音楽をダウンロードする市民をターゲットにしている(*2)。

 

その著作権協会から依頼を受けているのが

“Inkassofirmen”

と呼ばれる借金取り立ての専門業者。

日本ならやくざだが、ドイツでは弁護士事務所。

流石、法治国家だけのことはある。

このやくざ、もとい、弁護士事務所はIPアドレスから当事者を割り当てる(*2)と、

「著作権侵害の件」

で高額の請求書を送る。

請求額は違法ダウンロードの数に拠るが、安い場合でも数百ユーロ。

数多くの違法ダウンロードを行った場合は、4桁の請求額になる。

無視?それとも払うべき?

日本から来たばかりだと、

「無視すればいい。」

と誤った判断をする方も少なくない。

取り立て事務所からの手紙には高額な請求書に、支払い期限が明記されている。

この期限内に支払わないと、手数料(*3)がさらに上乗せされる。

すると手数料が、本来の著作件侵害の賠償請求額と同じくらいの額になっている。

それでもさらに無視すると、今度は手数料の方が著作件侵害の賠償請求額よりも高くなる。

日本に逃げないで今後もドイツで生活するなら、最初の手紙で対処する必要がある(*4)。

何処に相談する?

弁護士事務所からの請求額が高額な場合、専門家に相談するのが一番です。

請求に身に覚えがない場合からといって、

「これは詐欺だから放っておけばいい。」

と誤った判断をさず、すぐに専門家に相談すべし。

ドイツの法律では詐欺師からの請求でも、これを無視すると正当な請求に変わってしまい、支払いの義務が生じる。

だから弁護士事務所からの請求を無視するなど、もってのほかです。

 

では何処に相談に行けばいいのだろう?

20年以上も前から、

「ドイツに着いたら、電話の契約と同時に弁護士保険に入るべし!」

と言ってきました。

でもこれを実行している日本人はごくわずか。

もしアドバイス通りに弁護士保険に入っていれば、弁護士事務所に相談してください。

そうでない場合、あなたの相談先は消費者センターになります。

 

勿論、弁護士事務所に行ってもいいが、費用は桁違いです。

ただ弁護士を使っても、請求額の大幅な減額は望まれなかった。

借金取り立ての弁護士事務所の請求が合法な請求であり以上、弁護士ができる事と言えば、被害額がこれ以上膨らまないようにする事後処理くらいだった。

ところがである。

取り立て屋が法外な請求をしているのが社会問題になり、

「滅茶苦茶な賠償請求をやめさせる」

制度が導入された。

著作権侵害 警告料金が安くなるって本当?

実はすでに2008年に法改正があり、

「悪意のない著作権の侵害では、警告費用は100ユーロを上限とすべし。」

とされた。(*5)

ドイツ語では

„100-Euro-Deckelung“(上限100ユーロ)

という。

ところが立法府が、

「どこまでが悪意のない著作権の侵害にあたるのか。」

の明文化を怠った。

このため暴力団事務所、もとい、弁護士事務所はこれまで通り、4桁の高額な請求書を送り続けた。

結果として2013年10月に二度目の法改正が行われ(*6)、今度は(少し)明文化された。

もっとも争いを扱う裁判所は、

「上限を100ユーロに限る根拠がない。」

として、法令をそのまま判決に採用することはほぼない。

判例

判例

とは言っても、二度目の法改正後、弁護士事務所が請求できる額が大幅に減額されている。

わかりやすいように判例をあげてみよう

2014年、最新の映画をネット上で無料ダウンロードに提供したとして、弁護士事務所はあるドイツ人に400ユーロ(賠償金+警告料金)の支払いを要求した。

ちゃんと弁護士保険に入っているドイツ人はこの要求を不服として争い、裁判になった。

2015年、キールの裁判所は

「100ユーロが妥当な請求」

だと判断した(*7)。

このケースでは無料ダウンロードに提供された映画が一本だけだったので、安価な賠償額で済んだ。

デュッセルドルフでは、ファイルシェアリングの面白い判例があった。

こちらのケースでは大量の違法ダウンロードだったため、弁護士事務所の要求する著作権侵害の賠償額は1000ユーロ、弁護士事務所の手数料は1298ユーロ、合計2298ユーロだった。

しかし裁判所は

「個人の使用目的」

でのダウンロードだと判断(*8)。

著作権の侵害による賠償額は123ユーロ、弁護士事務所の手数料は70.20ユーロが適当と判断した。

ポイント

この判例でわかる通り、

著作権の侵害の問題で大事なポイントは、個人の使用が目的という点です。

 

広告料の収入目当てにユーチューブにアップして、

「個人の使用が目的だった。」

という子供だましの論拠は通じません。

収入目的で違法にアップロードすると、商業的な目的となります。

商業的な目的で著作権を侵害して、賠償額が4桁が済めば御の字です。

このドイツの現状を知れば、日本の状況がどだけ

「無法地帯」

なのか、よくわかると思います。

もし個人的な目的で映画などをダウンロード、あなたの手元に警告書が届き、

  • 請求額が100~200ユーロ
  • 著作権の侵害に見覚えがある

場合は、さっさと払ってしまうのが一番安いです。

Unterlassungserklärung

弁護士事務所から著作権侵害の件で請求書が届くと、

“Unterlassungserklärung”

の書類も同封されています。

日本語に直し難い言葉なので、Googleの翻訳を使うと

「停止し、やめます」

との翻訳。

やっぱり機械は駄目。

正しい日本語に意訳すれば、

「もうしません宣誓書」

です。

「もうしません宣誓書」

は4~5ページも及ぶドイツ語の書類で、最後のページにサインする箇所がある。

「ここにサインして返送しろ!」

というわけだが、これをやっては駄目。

質問
何故ですか?

 

何が書かれているかわからないのに、サインするのは人生破滅への近道です。

 

ドイツで生活を始めれる方は、肝に銘じておいてください。

やくざまがいの事をやってる弁護士事務所が作成した書類には、あなたに不利な項目が目白押し。

そんな書類にサインをしては駄目。

かと言って、

「もうしません宣誓書」

を提出しない限り、

「一件落着」

にはならない。

これは消費者センター、あるいはあなたの弁護士に聞いて、あなた自身の

「もうしません宣誓書」

を作成、サインして相手の弁護士事務所に返送してください。

注釈

*1       ぐぐるとたくさんヒットします。このサービスを提供するのは合法ですが、使用するうと違法です。

*2       その方が儲かるから。

*3       裁判所の許可が必要ですが、通常、申請すれば審査なく許可が下ります。

*4      高いです。

*5       時効は3年です。もしドイツに戻ってきたら、Schufaのスコアはボロボロです。

*6      § 97 a UrhG

*7       § 97 III UrhG neu

*8      Az. 120 C 155/14

*9     大量にダウンロードしたのがポルノだったのが幸い?

-ドイツの達人になる, 規則、法律

執筆者:

nishi

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