日本にはないが、ドイツでは「誰でもしっている」システムが Schufa 。
読み方は
「シューファ」
です。
ドイツでいきなり
「シューファをもらってきて。」
と言われても、一体、何のことやら見当がつかずネット検索。
その結果、このサイトにたどり着く方が大抵です。
そこで今回は、このシューファについて解説してみたいと思います。
この記事の目次
Schufa とは
その
“Schufa”
の正式名称は、
“Schutzgemeinschaft für allgemeine Kreditsicherung”
日本語にすると
「クレジットを安全にする一般保護団体」
です。
民間の団体です(*1)。
ドイツに住む市民のデータを集めて
「ちゃんと支払いをする人かどうか」
という基準でスコア(点数)をつけている。
借金の時効
「(請求書を払わないで)日本に帰ってしまえば、大丈夫ですよね。」
とは留学中のお客さん。
詳しく聞けば1年ほどのドイツ滞在中、携帯電話やインターネットなど、あちこちで契約。
しかし帰国に際して、そう都合よく契約を解約できない事を発見。
「高い解約金を払うよりも、そのまま日本に帰ってしまえ!」
という理論である。
これが意外と正論。
世界の何処に住んでいるのかわからない外国人、ましてや日本まで請求書を送ってくる事はまずない。
送ってきても、日本に住んでいる限りドイツの法律は適用されず、法的な拘束力がない。
そして未払いの請求書は3年で時効になる。
厳密に言うなら
「3年後の大晦日の除夜の鐘」
をもって時効になる
例えば2020年のドイツ留学中に、
「まだ払ってない請求がある。」
としよう。
すると2023年の除夜の鐘で、請求は時効成立となる。
だからと言って、
「何も心配する必要はない。」
というものではない。
ましてやこの時の
「置き土産」
は、後で時限爆弾となって帰ってくる事がある。
例外
上述の通りドイツで未払いの請求は、3年後に時効になる。
もっとも例外もある。
それは裁判所からの
「催促状」
を発行する事(*2)。
裁判所からの催促状が出ると、時効は30年となる。
借金を払わない人の意見
知人のドイツ人、管理会社に雇われてアパートの階段の掃除や、設備の修理などの仕事をしていた。
収入は高くないのに物欲に負けて、ローンで高価なシステムキッチンを注文した。
すでに出来上がっているものではなく、自分のアパートのキッチンのサイズに合わせてのオーダーメイドだ。
滅多に料理をしない一人住まいのドイツ人が、そんなキッチンを買う必要があったのか。
見栄を張る為に購入したとしか思えない。
高価な買い物をしても、支払いは後。
今度は居間を映画館に改造して、高価なサウンドシステムを(ローンで)買い入れた。
それだけでは済まず、愛車までローンで購入する始末。
1500ユーロくらいの手取り収入しかないのに、7万ユーロを超える借金の山を蓄積した。
幾ら仕事をしてもローンの支払いでもっていかれるので、仕事をするのが馬鹿らしくなった。
病欠を繰り返した挙句、次第に出勤もしなくなり、最後には就職先を首になった。
そのドイツ人が言うには、
俺に金を貸した銀行が悪い。だから金は返さない。
という。
これが借金苦で悩むドイツ人の典型的な理論である。
Mietnomade / 賃貸遊牧民
ドイツには結構、そんな人が多い。
もうひとつ例を挙げてみよう。
アパートを借りると、最初の家賃を払ったきり。
以後、家賃を払わないで1年以上も平気で暮らしている。
「どうして家賃を払わないんだ。」
という大家の催促には、
「他に優先する出費がある。」
と堂々と言う。
当然、賃貸契約を解約されるが、そのくらいで簡単に出て行くような輩ではない。
大家は裁判所に強制立ち退きを依頼、その執行人と錠前屋と共に自分のアパートにやってきて、やっとこの厄介者を追い出すことができる。
あまりにこうした厄介者が多いので、新しいドイツ語
“Mietnomade”(賃貸遊牧民)
という言葉ができたくらいだ。
SchuldenAtlas / 借金分布図
ドイツ人がどれだけ借金を抱えているか、これは政府の統計
”SchuldenAtlas”(借金分布図)
を見れば一目瞭然。
この記事を書いた2019年、400万人が払えない借金を抱えていた。
記事の更新にあたり最新の数字を見ると、616万人に増えていた。
ドイツの人口は減っているのに、借金苦に陥る人がわずか3年で50%以上も増えていることになる。
Schufa の存在意義
ドイツにはこんなに借金を踏み倒す人が居るのに、
日本のような保証人制度がない。
勿論、知人・友人が銀行で融資を申請する際に、
「私が保証人になってあげるよ!」
と名乗りたいなら、勿論、保証人として責任をしょい込む事もできます。
そこで銀行は、独自の判断でクレジット(借金)を与えるかどうか決める。
当然、見知らぬ人間と契約を結ぶのは大きなリスクがある。
このジレンマを解決するのが”Schufa”なのである。
だからアパートの見学では、
「シューファ査定表を持参する事(*3)。」
と言われることが多い。
どうやって点数が決まるの?
ではどうやってシューファの点数が決まるのか、その査定方法から見てみよう。
ドイツで生活をするとお買い物をして、その代金を払うことになる。
家賃の支払いは言うに及ばず、電話代金、電気代、インターネット代、ネットでの注文と、その機会は幾らでもある。
その支払いの具合で、査定(スコア)が決まる。
冒頭の日本人のように請求書を支払わないと、ここに登録される。
その後、この人物が日本で就職して、ドイツに派遣されたとしよう。
まずは住む場所が必要になる。
大家から、
「”Schufa-Auskunft”をもらってこい。」
と言われて問い合わせる。
するとこの会社が作成したスコアに
「信用なし。」
と書かれているのである。
「なんでやねん。」
と問い合わせると、
「あなたに対して複数の債務者からの数千ユーロの請求が記録されています。」
と言われる。
そう、かってはたかが数百ユーロの請求だったのに、これを支払わないので利子と弁護士費用が加算されて、大きく成長したのである。
これだけの請求額が残っていると、スコアはかなり悪い。
Schufa スコアの影響
問題は大家だけではない。
銀行、電力会社、携帯電話会社、インターネット会社、契約の際にシューファのスコアをチェックする。
スコアが悪いと、契約を断られる。
アパートが借りれないと、ドイツ生活も始まる前に終わってしまう。
査定方法は、何も請求書の支払いばかりではない。
これまで全部請求書を期限通り払っているのに、あまりよくないスコア(査定)を受けることがある。
支払いの遅延がなく、
「ボロ」
がでない国民の場合、“Schufa”は住んでいる住所や職業で査定を下す。
外国人の多い家賃の安い地域に住んでいれば、スコアは低くなり、高級住宅地に住んでいれば、スコアは高くなるというわけである。
一般に公務員、雇用者はスコアが高く、被雇用者、その中でもパートなどはスコアが低い。
スコアが低いと、銀行に融資の相談に行っても断られてしまう。
低いスコア是正するのは大変。
Schufa 査定を是正せよ!
そんな目に遭うと、
「是正して欲しい。」
と、査定会社に交渉を試みるのだが、これには時間がかかる。
基本、払っていない借金があると、スコアは改善しない。
「それは困る。」
と借金を返済しても、
「負の遺産」
は3年間残ってしまう。
ドイツで生活するなら(ドイツに限った事ではない)、社会人としての義務は果たすべき。
もっとも、
「ドイツなんて、二度と来ないよ。」
という場合は別。
自分のスコアを知りたい!
冒頭で書いた通りSchufaは民間の団体で、その目標は金儲け。
大家に言われて自分のスコアを要求すると、お金を請求されます。
要求する
「スコアの内容」
で費用は異なります。
通常は、個人のスコアの要求は29.95ユーロ。
しかし!
消費者情報保護法により、
シューファは年一回、スコアを無料で提供する事を義務ずけられています。
しかし!
無料でのスコア提供ばかり処理していると赤字。
ですからしSchufaのホームページでは、あたかも全部有料のように書かれています。
無料請求の罠
これ(わかり難さ)を利用して、
「シューフのスコアを無料請求!」
というサイトが群雄割拠しています。
これまで皆さんがご覧になったもの、そのサイトのひとつです。
ここで本当に無料でスコアが貰えると思ったら、大間違い。
問題は、
「無料で請求する!*」
という文字の後ろにある*
よーく見ると欄外に解説があり、
「無料請求を利用されると、毎月、29.95ユーロのサブスクリプションに申し込みされます。」
なんて書かれています。
ドイツ語が不自由な方には、格好の罠。
スコアを本当に無料で請求するには?
スコアを本当に無料で請求したければ、シューファのホームページから請求しましょう。
無料請求の箇所は隠しています。
あるいはわけのわからない言葉で誤魔化しています。
儲からないから当然ですね!
現行のホームページでは右下にこんな箇所がありまs。
まさかこれが無料のスコア請求とは見えないのが味噌。
ここをクリックすると、やっと無料請求の画面に。
“jetzt beantragen”
であなたの個人情報を記入するページに行けます。
要注意なのは、その下。
ちゃかり有料の請求も載ってます。
これは無視!
* 注釈
1 すなわち営利追及が目的です。
2 ”ein gerichtlicher Mahnbescheid”と言います。
3 ”Schufa-Auskunft”と言います。
4 日本で生活が苦しいと言いながら、毎月、1万円以上も携帯に浪費している若者は多い。