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太陽発電パネル業界 最後の望み Resilienzbonus

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太陽発電パネル業界 最後の望み Resilienzbonus

リーマンショック(2008年)の前後、ドイツの太陽発電パネル業界は最盛期を迎えていた。

世界最大の太陽発電メーカーは勿論、世界第二位もドイツの会社。

まさにイケイケドンドンだった。

16年後、まだ生き残っている太陽発電パネルメーカーはほんのわずか

そのごくわずかな太陽発電パネルメーカーが

「最後の希望」

をかけているのが

“Resilienzbonus”

である。

何故、ドイツの太陽発電パネルは負けたのか?

ソラーパネル

そもそも何故、ドイツの太陽発電メーカーは負けたのだろう?

と、わざわざ聞くまでもない。

中国政府はふんだんな補助金を使い中国製のソラーパネルの

「ダンピング攻勢」

をかけてきた。

本来なら懲罰関税で対抗するのだが、ドイツ政府はこれをためらった。

中国はドイツにとって、EU、米国に次ぐ三番目に大事な輸出先。

車業界にとっては中国市場は最も重要な輸出先。

「たかが太陽発電パネル」

の為に中国を怒らせてしまっては、ドイツ車に懲罰関税が課せられる。

ドイツ政府は基幹産業を救う為、ソラーパネルメーカーを運命にゆだねた。

結果、ドイツの太陽発電パネルメーカーは八甲田山で冬季訓練中の日本兵のように、

「バタバタ」

と倒れていった。

売れないドイツ製 太陽発電パネル

「ドイツ太陽発電パネルメーカーの大量死」

から10年以上経った。

「もうドイツには太陽発電パネルメーカーは残っていない。」

と思ったら、まだ残っているんである。

数にして1ダースにも満たないが。

「価格では負けるが品質と効率で優る!」

と、ドイツの太陽発電パネルメーカーは主張する。

その

「効率の良さ」

だが、ドイツ製モジュールのエネルギー効率は20,7%~21,7%。

中国製は一部のイレギュラー(17%前後)を除くと、20.40%~21.40%。

差がほとんどない。

勿論、ドイツで生産されているモジュールはドイツで採掘された原材料を使い、環境に優しい製造過程で、ドイツの労働者を使って製造されている。

一方、中国で生産されたソラーパネルは劣悪な労働環境で採掘された原材料を使い、環境におかまいなしの製造過程で、中国人労働者を使って製造されている。

が、ドイツ製よりも30%も安い。

ドイツ人はよく

「環境保護が大事!」

とは言うが、自分の金を出すときは安い中国製のモジュールを買うんである。

太陽発電パネル業界 最後の望み Resilienzbonus

ドイツで太陽発電パネルを製造しているメーカーの中で最大手が

“Meyer Burger”

だ。

参照 : Meyer Burger

 

スイスの会社なのに(東)ドイツで太陽発電パネルを製造している。

社長は、

「国内生産で採算が取れる事を証明して見せる。」

と豪語、フライベルクに製造工場を作って太陽発電パネルを製造を始めた。

 

が、ちょうど先月、

「補助金を出してくれないなら、工場閉鎖だ!」

と宣言。

その補助金の名前が

“Resilienzbonus”(抵抗ボーナス)

というおかしな名前。

多分、安い中国製品に抵抗するという意味があるのだろう。

ドイツ政府は

「検討すます。」

と言ったまま、音沙汰なし。

そこでマイヤーバーガーは工場の操業を停止して、工場を米国に移す準備をしている。

もっとも株は

「ペニーストック」

になっており、会社が先に潰れなければの話だが。

meyer burger stock preis

“Resilienzbonus”(抵抗ボーナス)の行方

通産大臣は

「ソラーパネルメーカーを維持したいなら、言葉ではなく金を出すべき。」

と補助金に肯定的。

一方、そのお金を出す財務大臣は、

「特定の業種だけに補助金を出すのは不公平。」

と否定的。

その同じ財務大臣が、インテルのチップ工場には100億ユーロの補助金を出す。

言い換えれば、

「ソラーパネルで将来の経済競争は決定されない(から助けない)。」

というわけだ。

冷たい。

が、ソラーパネル製造業で働いている人は、ドイツ全土で1万人。

その1万人の職を救う為、国民が払った税金を使うべき?

ここで前例を作ってしまうと、今後、歯止めが効かくなる恐れがある。

ソラーパネル製造業で働いている方には可哀そうだが、補助金が下りることはなさそうだ。

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執筆者:

nishi

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