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ウクライナへの武器提供を渋るドイツ その分けは?

投稿日:2022年4月19日 更新日:

ウクライナへの武器提供を渋るドイツ その分けは?

ロシア軍の猛攻に50日以上、持ちこたえているウクライナ。

一体、だれがこんな展開を予想できだだろう。

今、ウクライナが必要としているのは、

「平和のお祈り」

ではなく、武器だ。

それもロシア軍を押し返す重火器だ。

なのにドイツはこの時点でも、ウクライナへの重火器提供を渋っている。

その分けは?

社会民主党とロシアは刎頸の仲

今、ドイツで政権にある社会民主党とロシアの

「縁」

は深い。

かって

「ドイツ病」

で大不況にあったドイツを改革で

「救った」

シュレーダー首相。

 

選挙で負けると在任中に築いたプーチンとの仲で、ガスプロムの親会社”Nord Steam”の役員に就任。

ことあるごとにプーチンを弁護。

ウクライナ侵攻の前夜まで、

「ウクライナは挑発をやめろ。」

と、プーチンの声の代弁者に成り下がった(*1)。

その後継者がシュタインマイヤー氏だ。

氏はシュレーダー政権下で外務大臣として、プーチンとの厚い関係の温存に努めた(*2)

今、大統領に就任しているシュタインマイヤー氏はそれでも、

「間違っていた。」

と、自分の誤りを認めるだけの良識は備えていた。

 

その後継者が、今の首相のショルツ氏だ。

社会民主党の伝統を守り、ロシアへの密接な関係を

「何があっても」

維持しようとしている。

純粋に私企業の経済活動

こうした経緯があり、ドイツはロシアからのガスと石油に依存する形が出来上がってしまった。

すでにドイツで消費されるガスの55%がロシアから来ているのに、

「まだ不十分」

と考えたのが、かって共産圏で育ったメルケル(前)首相。

ウクライナの反対を無視して、ウクライナを迂回して直接ロシアからドイツにガスを送るパイプライン

“Nord Stream2”

の工事に着工した。

評論家は、

「ロシアへの依存度を、これ以上高めるのはよろしくない。」

と警告した。

すると政治家は、

「ロシアはこれまでガスを外交の武器に使ったことはない。」

と返した。

これはショルツ政権下でも同じ。

ロシアは演習を口実に、軍をウクライナ国境に集結させた。

【米】バイデン大統領が

「ウクライナに侵攻すれば、”Nord Stream2″は終わりだ。」

と警告。

するとショルツ首相は、

「”Nord Stream2″は純粋に私企業の経済活動である。」

 

と言い、最後の最後まで”Nord Stream2″に固執した。

プーチンの彼女

日本では報道されていないが、ショルツ首相よりももっとひどい

「ロシア寄りの現役の政治家」

が居る。

勿論、社会民主党の政治家だ。

その政治家とは、東ドイツにあるメックレンブルクーフォーアポッマーン州のシュービヒ知事だ(*3)。

知事はウクライナ侵攻の前夜までプーチンを擁護、

「プーチンの理解者」

あるいは、

「プーチンの彼女」

の称号を頂戴した。

 

流石にブチャでの民間人の虐殺行為が明らかになると、

「これはマズイ。」

と思ったシュービヒ知事。

記者に対して、

「間違っていたのは私だけじゃない。」

と、ドイツ人特有の言い訳。

これで州知事。

オットーフォン ハープスブルク

ドイツの政治家が相次いで

「プーチンに騙された。」

と感じ、釈明を迫られている。

その中で注目されているのが、オーストリア、ハープスブルク帝国のお世継ぎだった、

「オットーフォン ハープスブルク」

の講演だ。

オットーフォン ハープスブルクは19年前に講演を行い、

「プーチンは野蛮で危険だ。」

と警告していた。

当時はそれほど注目されなかったが、今になって

「ハープスブルクは正しかった。」

と注目を浴びている。

ドイツの政治家が相次いで騙される中、ちゃんとプーチンの本質を見抜いていた人物も居た。

ドイツ 国防大臣

今、ドイツの国防大臣に就いているのは、そのロシアと縁の深い社会民主党の政治家、ランブレヒト女史。

だからドイツがウクライナに送る5000個のヘルメットを、

「ウクライナへの軍事援助」

と真顔で主張したもの、うなずける。

その後、ドイツはウクライナへの武器提供に舵を切り直したが、その一部は古くて破棄が決まっている

「ソビエト時代の遺物」

だった。

野党からバルト三国の小国、エストニアは

「ドイツの10倍の武器をウクライナに提供している。」

と言われると、ランブレヒト女史は

「ドイツはアメリカについで2番目に多くの武器を提供している。」

と主張。

「その根拠は?」

と国会で聞かれ、

「武器の重さで測ればドイツは二番目。」

と、お笑い芸人のような回答を真顔でやった。

社会民主党の政治家じゃないと、こんな回答は出てこない。

緑の党

ところがである。

あの平和と環境対策を唱えるしか能のない

「緑の党」

の外相まで、

「ウクライナには重火器が必要だ。」

と、言い始めた。

通産大臣のハーベック氏も同様。

ウクライナへの武器提供を渋るドイツ その分けは?

連立与党のもうひとつの党、FDPは鼻っから重火器の提供を主張してきた(*4)。

結果、連立政権内では社会民主党だけが、重火器の提供に反対している。

もっとも社会民主党内でも、

「ウクライナに重火器を!」

と言う現実派の政治家はいる。

問題はショルツ首相が

「ウクライナへの武器提供は首相官邸が決める。」

と、決裁権を掌握してしまったことにある。

結果としてウクライナに武器を渡したくても、ショルツ首相が承諾しないので、提供できないというジレンマに陥った。

そのショルツ首相はブチャの虐殺を見ても、ロシアとの関係をこれ以上悪化させることに反対。

これが理由で、ドイツのウクライナへの武器提供が

「エストニアにも及ばない。」

という状況になっている。

装甲車マーダーの提供問題

ドイツ軍では旧型の装甲車マーダーが現役を引退、新しい装甲車プーマが配備中。

日本のテレビで

「ド素人の解説者」

「戦車」

と言っていますが、装甲車と戦車とは違います。

装甲車の目的は

  • 人員輸送
  • 戦車の防御

です。

戦車は一台20億円もすると~っても高価な品物。

これが一発、1000万円のジャブリンで破壊されると、とっても痛い。

そこで

“Panzergrenadiere”(戦車擁護部隊)がこの装甲車の中、あるいは上に座って一番最初に敵地に侵攻して、

「危険を排除」

する役目があります。

ドイツにはこのまだ十分に使えるマーダーが、大量に余っている。

正確に言うと、現役を引退したマーダーは製造元に送り返されると、

「有事に備えて」

製造元がオーバーホールしている。

もし、

「いざ、鎌倉!」

となれば、この予備役の装甲車を提供できるわけだ。

なんと製造元には100台近い

「実戦投入可能」

なマーダーがある。

ウクライナはこのマーダーに目をつけて、

「提供して欲しい。」

と打診した。

ドイツ政府がどう反応したか、もう、あたらめて書くまでもないだろう。

そう、マーダーの提供を拒否した。

 

するとウクライナ側が、

「じゃ、製造元から買わせてくれ。」

と頼むと、これも拒否。

製造元が、

「2週間ほどで送れますよ。」

と言ってるのにだ(*5)。

その理由

ドイツ政府が装甲車、マーダーの提供を断る理由が面白い。

「高度な武器を送っても、ウクライナ兵には使い方がわからない。」

というのだ。

かってのNato軍の将軍は、この政府の見解に真っ向から反対。

「1週間の訓練で使える。」

と言っている。

私も自衛隊で戦車の運転を習ったが、

「教習期間」

は3日間だった。

レオパルド1の提供問題

ドイツ軍の主力戦車はレオパルド2型。

旧型はレオパルド1型。

その現役を引退した戦車がどうなるか、ご存じだろうか?

そう、製造元に送り返されて

「いざ、鎌倉!」

に備えてオーバーホールされる。

なんと製造元には50台を超える

「実戦投入可能」

なレオパルド1型がある。

要整備の車両を含めると、100両を超える。

ウクライナはこのレオパルド1型に目をつけて、

「提供して欲しい。」

と打診した。

ドイツ政府がどう反応したか、もう、あたらめて書くまでもないだろう。

そう、レオパルド1型の提供を拒否した。

ドイツ政府 ウクライナに10億ユーロの資金提供を発表

ウクライナの武器提供の頼みを拒み続けるドイツ。

流石にショルツ首相の尻に火が付いた。

連立政権内、そして西側諸国内で孤立し始めたのだ。

これ以上の

「孤立無援」

を避けるため、ドイツ政府はウクライナに10億ユーロの資金提供を発表した。

この嬉しいニュースにウクライナ大使がどう反応したか、想像できるだろうか。

空約束

そう、ウクライナ大使は怒った。

「ウクライナに10億ユーロの資金援助をするのに、私が何も知らないのは何故だ。」

というのだ。

そう、この方法は西側政府の十八番。

自身、あるいは国の宣伝のために、

「大型財政支援」

を約束する。

しかし何時からその資金が使えるのか、明かさない。

資金援助を約束された国は、何年も援助の支払いを待つが、支払われないこともある。

ドイツ政府はこれから

「10億ユーロの資金援助」

を国会で延々と議論する。

結論が出る頃には東部戦線でプーチンの4月攻勢が始まっており、役に立たないだろう(*6)。

ショルツ首相の言い訳

ドイツ国民のほぼ半数が、ウクライナへの重火器の譲渡に賛成してる。

 

結果、首相の支持率は下がる一方だ。

 

国会では野党から

「躊躇し過ぎ!」

と非難されているショルツ首相。

与党内からも非難の声が大きく、さらには国外からも非難が高まってる。

この圧力を交わすため、ショルツ首相は火曜日に記者会見を開いた。

何を言うのかと思ってたら、

「ドイツだけが重火器を届けることはない。」

と、これまでの主張の繰り返し。

これを聞いた野党は、

「首相が態度を変えないなら、ウクライナへの重火器譲渡の法案を出す。」

と脅している。

もしこの法案が国会に出され、過半数多数で通過すれば、ショルツ首相には大敗北。

どうする?

注釈

*1        ロシアの侵攻後、「これはマズイ。」と思うだけの分別は残っていたようで、プーチンに停戦を嘆願するも拒否される。

*2       ウクライナの大統領が、「来なくてもよい。」と訪問を断ったのにはこうした背景がある。

*3       Nord Stream 2のパイプラインがドイツ側に上陸するのが、メックレンブルクーフォーアポッマーン州。産業に乏しい州には、パイプラインは金の卵を産む鶏だった。

*4     これを生産するドイツ企業は特需景気で沸くから。

*5      中古とは言え100台の装甲車の販売はおいしい。製造元はやる気満々。

*6       この記事を書いた4月19日、4月攻勢が始まった。

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執筆者:

nishi

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