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ショルツ首相 レオパルト2戦車の提供をしぶしぶ決断

投稿日:2023年1月29日 更新日:

ショルツ首相 レオパルト2戦車の提供をしぶしぶ決断

ロシアの侵攻直後から、

「戦車を提供してくれ。」

とドイツに何度もお願いしていたウクライナ。

その願いを無視し続け、連立政権内部からも非難の嵐。

気が付けば自身が、

「四面楚歌。」

になっていたショルツ首相。

「超~ヤバイ。」

と主力戦車のウクライナ提供をしぶしぶ決めた

だが、レオパルト2戦車のウクライナ提供で戦況は変わるのだろうか?

“Zauderer”(迷える者)

ドイツの首相にはあだ名がつく。

前首相は

「テフロン メルケル」

と呼ばれた。

何を言ってもテフロンのように、

「ペロリ」

と剥がれて残らないからだ。

ショルツ首相は、

“Zauderer”(迷える者)

と呼ばれている。

それだけではない。

首相を形容する新しいドイツ語も誕生した。

それは

“scholzen”

という動詞。

質問
どんな意味?

 

「(ショルツ首相のように)ためらって決断しない。」

という意味です。

ショルツ首相 レオパルト2戦車の提供をしぶしぶ決断

もしショルツ首相が数日前にラムシュタインで開かれた、

「ウクライナ軍事支援会議」

で決断していれば、

「欧州の一致団結」

をデモンストレーションできた。

が、ここでも”scholzen”して、主力戦車の提供を拒否。

この態度に堪忍袋の緒が切れたポーランドが、

「もうドイツには頼まない!」

と独断でウクライナに戦車の提供を決めてから、

「このままでは柵の外の見学人になってしまう!」

と、ショルツ首相はやっとウクライナへのレオパルト2戦車の供給を決めた。

そのショルツ首相、国会では、

「国際社会と協議の上で決定したので、時間がかかった。」

と釈明。

が、そのショルツ首相の言い訳を後ろで聞いていたピストーリウス国防相の顔にはありありと、

「やれやれ」

という表情が読み取れた。

日本では首相の演説を好意的に解釈するが、ドイツはそんなに甘くない。

ドイツのメデイアでは、ショルツ首相の決定に批判的なコメントが圧倒的だった。

「ドイツは国際社会で名声を失った。」

はまだいい方で、

「ショルツ首相のためらいの代償は、ウクライナ人の生命で支払われた。」

など、数々の批判の声があがった。

レオパルト2戦車のウクライナ提供で戦況は好転する?

レオパルト2戦車のウクライナ提供で戦況は好転する?

それでは次のテーマ、

「レオパルト2戦車のウクライナ提供で戦況は好転するのか?」

について考察してみよう。

ドイツがウクライナに供給するレオパルトは、

「型落ち」

ではなく、準最新モデルの レオパルト2A6型だ。

現役を引退後、軍需産業に返されて

「いざ鎌倉!」

のために保管されている旧型ではない。

ドイツ軍の戦車部隊が使用している戦車が提供される。

このレオパルト2A6型なら、ロシア軍に配備されている戦車の中では最新鋭のT-90と性能の上では互角だ。

参照 : T-90

 

細かい違いを挙げると、ロシアの戦車は攻撃力に重点を置くので、主砲がでかい。

又、エンジンの性能の悪さを補うべく、戦車が軽い。

当然、装甲も前面を除けば薄い。

一方、レオパルトはT-90と比較して機動力と防御力に優れてるという、重点の違いがある。

が、勝敗は紙の上のスペックで決まるものではない。

勝敗を決める要因1 照準精度

戦車戦で勝敗を決める要素の一つが照準精度だ。

私が操縦を習った74式戦車は、まだマニュアルで標準を合わせていた。

すなわち!

敵が目視できないと、危険を察知できない。

お陰で敵の攻撃ヘリコプター一機に、戦車一個中隊が全滅させられた。

演習の話しですよ、勿論。

戦艦大和のようにいくら立派な主砲があっても、ニコンの照準器では

「的に当たらない。」

ず、

「宝の持ち腐れ」

だったのと同じです。

今の戦車はコンピューターが敵の戦車を索敵、見つけるとマーキング(照準合わせ)までしてくれる。

砲手、あるいは戦車長はボタンを押すだけ。

ドイツの戦車は、この電子装置が超一流。

もっとも2Kmも先の敵の戦車に向けて射撃すると、わずか数ミリの誤差は、数mの誤差になり的を外す。

すると敵の反撃を受ける。

だから精度の高い照準器が

「生きるか死ぬか。」

の分かれ目になる。

どれほどレオパルト戦車の照準装置が優れているか、有名な

“Bierest”(ビールテスト)

を見ると一目瞭然。

振動が倍増される砲塔の先っぽに載せたビールジョッキが落ちないばかりか、ビールがこぼれない。

日本の戦車ではこうは行かない。

勿論、ロシアの戦車でも無理。

この照準装置の精度をもってすれば、機動戦では明らかにレオパルト2戦車の方が優勢だ。

例外はロシアの陣地にレオパルト2戦車が突撃する場合。

このケースではロシアの戦車は地中に半分埋まっており、おまけに止まった状態で突進する敵を撃つので、レオパルト2戦車には分が悪い。

勝敗を決める要因2 運用方法

優れた戦車があっても、その運用方法が間違っていれば効果を出さない。

槍の先のように先陣を細くして戦車を展開するのが必修だ。

しかし、実戦の興奮のあまりアサガオのように、戦車を展開してしまった例が多い。

これでは敵に側面を見せるので、狙い撃ちされやすい。

この戦車運用の鉄則を守るため、ドイツ製の戦車では小隊長なり中隊長がモニターを見ながら部隊運用を行う。

前に出過ぎた戦車が居れば、

「2番、前に出るな!」

と指示できる。

又、敵軍に対しては、

「3番、2時方向の戦車を狙え。」

と指示を出せる。

同一の目標を複数の戦車が狙って、貴重な時間を無駄にすることがない。

又、戦車の側面を守る武装装甲車を搬送させ、戦車の中から

「武装装甲車は左翼に展開!」

と指示を出せる。

この戦車と武装装甲車の共同作戦があってこそ、戦車部隊は能力を発揮できる。

なのにウクライナ側が武装装甲車を戦車と分離させて使用する、あるいは戦車を単独で投入すると

「いい鴨」

になってしまう。

勝敗を決める要因3 訓練

勝敗を決める要素3 訓練

そうならないためにも、戦車乗員の訓練が欠かせない。

戦車の操縦は簡単だが、戦車と武装装甲車との

「グループ行動」

となると、ちょっとやそっとの訓練では身につかない。

又、訓練ではうまくいっても、実戦では緊張のあまりうまくいかない事は日常茶飯事。

何度も何度も訓練を繰り返し

「習性」

になっていないと戦車部隊の運用は難しい。

もっと大変なのは戦車の整備。

戦場で故障、あるいは損傷を受けた戦車を回収、これを修理する兵を訓練するのは、正直、2か月では足らない。

加えてドイツ軍はウクライナ兵の訓練に2か月程度計画しているが、その間、熟練した戦車兵が前線から欠ける。

ロシアにとってみれば、

「今でしょ!」

と攻勢をかける絶好の機会となる。

勝敗を決める要因4 数

第二次大戦中、ドイツは

「タイガー戦車」

の名前で知られる素晴らしい性能の戦車を開発した。

が、製造台数はⅠ型、Ⅱ型を合わせても1100両程度。

ソビエトはT-34だけでも5万5000台。

文字通り、

「多勢に無勢」

で戦局を変えるには至らなかった。

では西側は何台、レオパルト2戦車を提供するのだろう。

これまでにわかっている限りでは、

  1. ドイツ 14両
  2. ポーランド 14両
  3. オランダ 18両
  4. スペイン 不明
  5. フィンランド 不明
  6. ノルウエー 不明
  7. チェコ 不明
  8. カナダ 4両

の8か国がレオパルト2戦車提供を表明している。(1月27日現在)

現時点では二個戦車大隊相当(86-88両)になると見積もられている。

これに加えてフランスが主力戦車

“Leclerc”の供給を思案中。

イギリスのチャレンジャー14両を加えても、せいぜい110~120両程度だろう。

質問
米国のエイブラムスは?

 

「これから製造する。」

というので、戦場に到着するのは2024年の春以降。

2023年度の戦力にはならない。

すなわち!

大隊で運営すると、たったの2個大隊+2個中隊。

おそらくはばらばらにして、中隊規模での運用になるだろう。

それでも8個中隊。

戦況を変えるには程遠い。

加えて稼働率の問題もある。

西側諸国の裏切り

ウクライナへの戦車提供を渋っていたショルツ首相に対して、

「早く決断して!」

と迫っていた西側諸国。

あまつさえ、

「ドイツが輸出許可を出せば、我が国は〇両提供する。」

とまで言っていた。

そして遂にショルツ首相が

「折れる」

と、西側諸国は約束を反故にした。

一番ひどいのはオランダ。

オランダは18両の提供をゼロに修正、

「弾だけなら出す用意がある。」

と、ウクライナを裏切った。

これにデンマークが同調。

スペインも前言を撤回しそうだ。

オイルとガス価格の高騰で、

「濡れ手に粟」

の商売をしているノルウエーでさえ、前言撤回。

結果、ウクライナに提供されるレオパルト2戦車はたったの48両。

これでどうやって戦況を変える?

ドイツ レオパルト2戦車の提供数を上方修正

ドイツは当初

「レオパルト2戦車を14両(だけ)提供する。」

と発表。

が、西側諸国が次々と裏切るを見て、提供するレオパルト2戦車の数を18両に上方修正した。

勿論、準最新鋭の2A6型だ。

加えてフィンランドは

「3両出す。」

と表明。

が、地雷除去車両なので、実戦には役に立たない。

これらの車両を全部含めても、レオパルト2戦車の数はわずか50両程度。

戦況を変えるにはあまりにも少ない。

勝敗を決める要因5 稼働率の問題

ドイツのタイガー戦車は、稼働率が50%程度と滅茶苦茶低かった。

これも戦局を変えるに至らなかった理由のひとつ。

レオパルト2戦車は熟成しているので稼働率は高いだろうが、実戦に投入されると稼働率は必然的に下がっていく。

110両程度では、数か月後には稼働できる戦車は50~60両程度にまで減る。

戦況を好転させるにはせめて200両、

「攻勢をかけて戦争を終わらせる。」

なら300両は必要だ。

今後、ドイツは軍事産業に残っている戦車を整備して、ウクライナに提供していくだろう。

が、それは年末か、来年の話。

ショルツ首相が11か月前に

「実戦に備えて戦車の整備を始めよ!」

と決断していれば、3月には届いていたのに、、。

お陰で2023年中に戦争が集結する見込みはかなり薄い。

勝敗を決める要因 6 心理戦

勝敗を決める要因 6 心理戦

勝敗を決める最後の要因は心理戦。

第二次大戦中、ロシア軍の戦車はタイガー戦車とパンター戦車に

「ボコボコ」

にされた。

数が多いので戦争勝ちはしたが、ロシア兵には

「一対一ではドイツの戦車には叶わない。」

というコンプレックスが存在している

ちょうど日本人が、西欧人コンプレックスに悩まされているのと同じだ。

実戦にレオパルト2戦車が投入されれば、ロシア軍のメイン戦車であるT-72は

「射撃訓練の標的」

と化し、1両、2両、3両と次々に破壊される。

元々あったコンプレックスも手伝って、

「死んで英雄になるよりは、生きて帰りたい。」

とロシア軍が逃げ出す可能性がある。

あのプーチンの為に死にたいロシア兵は、一人も居ないからだ。

だからレオパルト2戦車の数は少ないが、正しく運用されれば一定の効果が期待できる。

勝敗を決める要因 7 弾薬供給

西側がレオパルト戦車の提供をドイツに求めていたのは、

「乗員の命を守る戦車の構造」

に加えて、ウクライナ軍の戦車の弾薬が底を尽きかけてきたことにもある。

どんなに優れた戦車でも弾薬が切れては、

「鉄の棺桶」

でしかない。

実はドイツが対空火砲戦車”Gepald”をウクライナに供給した際、砲身の製造元のスイスが、

「紛争国には輸出しない。」

と日本政府のようなセリフで弾薬の提供を拒否した。

そこでドイツ政府は弾薬のない対空火砲戦車を提供するという、無様な目に遭った。

(弾薬はその後、有志国家が提供してくれることになった。)

これがレオパルト2戦車になると改善される。

加えて120mm滑空砲を製造したのは、デュッセルドルフに本社を置くラインメタル社。

 

ラインメタル社は2022年、

「特需」

を見通して、スペインの弾薬製造メーカーを120億ユーロで買収した。

加えて北ドイツに新たに弾薬製造ラインを建設中。

ラインメタル社によれば、

「レオパルト用の十分な弾薬を提供できる。」

そうだ。

加えて、

「夏以降、”Gepald”用の弾薬もドイツ国内の新工場から大量に供給できる。」

という。

儲けのチャンスを見逃さないドイツ企業だけのことはある。

ちゃっかりと先行投資をしている。

言うまでもなくラインメタル社の株価は、過去最高値を更新中だ。

冬季大攻勢

もっともロシアはそんなことはとっくにお見通し。

レオパルト2戦車が投入される前に、冬季大攻勢をかけてくる。

加えてウクライナ軍は今、弾薬不足に悩まされている。

お陰でロシア軍の攻勢を完全に撃退できていない。

このままでは

「バフムートの肉挽戦」

で死守してきたバフムートもかなりヤバイ。

米国も必死に支援しているが、戦時経済体制にないので弾薬が足りない。

そこで韓国に榴弾砲を注文して、ウクライナに提供している。

韓国の武器産業は思わぬ特需に沸いているが、日本は蚊帳の外。

日本(人)の頑迷さは、ショルツ首相に通じるものがある。

何はともあれ、ウクライナはこれから雪解けが始まる3月末まで、我慢の時期となる。

もっともロシア軍の戦車は軽い上、キャタピラが広いので泥に強い。

泥の中でも作戦行動が出来てしまう。

そんな状況でレオパルト2戦車を投入するのは自殺行為。

ドイツの戦車を投入するのは、道路が乾き始める4月以降にするべきだろう。

レオパルト1 ウクライナに提供決定!

予想していた通り、2月4日ドイツ政府、正確には通産省が

「レオパルト1戦車のウクライナへの輸出許可を与えた。」

と発表した。

レオパルト1戦車は今、ドイツ軍が2003年に最後の戦車を

「引退」

させてから軍事産業が

「いざ鎌倉!」

に備えて備蓄している。

産業は、

「ウクライナへの輸出許可を出して!」

と頼んでいたが、ほぼ1年に渡って無視されてきた。

これでやっとウクライナに提供できる。

産業には188台のレオパルト1戦車が

「保管」

されており、早いものでは

「数か月で輸出できる。」

という。

もっともまだ整備がされていない車両が大半で、これから大急ぎで出荷に向けてのオーバーホールとなる。

戦果に影響を与えるほどの量が前線に届くのは、来年になるかもしれない。

又、弾薬の確保の問題もある。

これまで13カ国に輸出されているので、まだ弾薬を保有している国は多い。

ショルツ首相はブラジルを訪問した際、

「弾薬を、、、。」

と頼んだが、

「やなこったい。」

と拒絶された。

ブラジルは大統領は変わっても、親ロ派である。

 

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執筆者:

nishi

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