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DAX 最後の椅子取り合戦 勝つのは誰?

投稿日:2023年2月3日 更新日:

DAX 最後の椅子取り合戦 勝つのは誰?

ドイツのトップ40企業で構成されるのが

“Deutsche Aktienindex”、通称”DAX”だ。

日本人が

「我が社は東証一部上場。」

と威張っているように、ここに上場されると

「箔」

が付く。

そのDAXの最後の椅子を巡って今、熾烈な競争が展開されている。

DAX 上場の条件

ドイツを代表する大企業が上場されるので、DAX上場の条件は厳しい。

と思ったら、あまり厳しくはなかった。

お陰で

「会社創立以来、黒字を出したことがないし、いつか黒字になるかもわからない。」

という企業が上場されてしまった。

質問
なんで?

 

上場の条件が

「株式価格で換算した場合、資産価値がデカイ者が上場される。」

というものだったから。

するとコロナ禍でルフトハンザなどの大企業は業績が悪化、DAXから降格した。

その代わりに上場されたのはコロナ禍の寵児、

“Delivery Hero”

だった。

参照 : Delivery Hero

 

そう、

「これまで黒字を出したことがありません。」

という会社です。

が、コロナ禍の終わりが見えてくると、株価は急降下。

多くの投資家が金を失った。

そこでDAX上場の条件に、

「2年連続で黒字を出している事。」

という条件が加えられた。

Linde Daxよさらば!

そのDAXに、皆さんが生まれる前から上場されている大御所が

“Linde”

だ。

参照 : Linde

 

ドイツの名だたる大企業なのに、日本ではほぼ無名。

質問
なんの会社?

 

産業ガスを供給する会社です。

日本の”Iwatani”みたいなもの。

産業ガスは利鞘が高く、儲かるんです。

不景気時でも業績は安定。

投資家の立場から見れば退屈な会社です。

が、会社の資産価値は安定しており、ド素人が投資してもお金をうしなうことはない。

そのリンデが米国の競争相手、

“Praxair”を買収。

世界最大の産業ガスメーカーになった。

ところがである。

米国の株式市場は世界のマーケット。

お金を集めやすい。

そこでリンデは

「DAXでの上場を辞めて、米国に行きます。」

と発表。

“Linde”

の名前は残るが、米国企業となることに。

ドイツでは

“Verrat”(裏切り)

という言葉も出てくるほど、

「熱いテーマ」

になっている。

DAX候補者 ラインメタル

Daxの重鎮だったリンデは2月末にDAXを去る。

当然、

「リンデの後継者は誰に?」

という話なる。

が、それは

「建前」

の話。

実際にはドイツが誇る軍事産業ラインメタル社が、DAXに上場することになる。

プーチンの戦争勃発以来、株価は何度も過去最高額を更新。

ドイツが主力戦車をウクライナに提供することが決まると、株価はまた過去最高額を更新した。

お陰で会社の資産価値が倍増、

「将来のDAX候補」

と呼ばれてきたが、リンデの退場でその機会は意外と早くやってきた。

DAX 最後の椅子取り合戦

ところがである。

誰もが、

「次はラインメタルがDAXのメンバー」

と株を買いあさっていると、ドイツ第二の銀行であるコメルツ銀行が

「ちょっと待った!」

をかけた。

コメルツ銀行はリーマンショックで

「危うく倒産」

の危機に陥った。

背に腹は代えられず、

「助けてください。」

と、国に財政援助を要請。

以来、未だにドイツ政府が最大の株主の銀行だ。

質問
なんで政府は株を売却しないの?

 

株価の変動チャートを見て欲しい。

 

“das Chart des Grauens”(おぞましいチャート)

という言葉しか出てこない。

政府がコメルツ銀行の株を買ったのは、2008年です。

売ると大赤字です。

なので塩漬け。

未だに国が最大の株主です。

そのコメルツ銀行、かってはDAXのメンバーだった。

が、

「マイナス金利導入」

で業績が悪化、2018年に降格した。

ところがである。

コメルツ銀行は誰も予想していなかった1月31日、

「2021年に続き、2022年も黒字だった。」

と抜き打ち業績発表をした。

というのも、リンデの後継者は1月31日時点のデータで決まる。

そこでコメルツ銀行は

「2年連続黒字」

という既成事実を作るため、業績発表を前倒しした。

そして株価で換算した会社の資産価値では、コメルツ銀行のほうがラインメタル社よりもはっきりと上なんである。

だから業績の前倒し発表を行った。

こうしてDAX 最後の椅子取り合戦が始まった。

勝つのはどっち?

DAXに上場される利点は、

「社員が威張れる。」

だけではない。

投資会社の多くは、

「インデックス投資」

を提供している。

質問
何ソレ?

 

「DAXのどの銘柄に投資すればいいのかわからない。」

という日本人でもできちゃうのが、DAXインデックス投資。

投資会社がDAXに上場されている企業に、均等に投資してくれるので、何も知らなくていい。

そして日本のインデックス投資と違って、配当金もでる。

おまけに手数料は0.3%と激安。

だからインデックス投資をする投資家は多い。

言い換えれば、DAXに上場されるとインデックス投資をする投資会社から株を買って貰える。

このニュース(コメルツ銀行の業績発表を前倒し)で、株価は急上昇。

 

ここ1週間で株価はほぼ10%も上昇している。

これまでは投資家は

「ラインメタルで間違いなし!」

と先行投資をしてきた。

もしコメルツ銀行に決まると、コメルツ銀行の株価がさらにブーストするかもしれない。

ただし!

「滑り込みセーフ」

はあまり好感されないので、チャンスはそれほど大きくはない。

選考結果は2月17日に発表される。

勝者は、、

勝者は、、

DAXを運営する

“Deutsche Börse”(ドイツ株式市場)

は2月17日、来月からDAXに上場される会社を発表した。

なんと下馬評では

「アンダードック」

だったコメルツ銀行が、DAXに昇格することになった。

まさにタイミングの勝利だった。

タイミングの勝利

タイミングの勝利

 

DAXに昇格する会社が発表される前日、コメルツ銀行は2022年度の業績を正式に発表した。

2年連続の黒字であるばかりか、去年比で利益は3倍増だった。

ポーランドにある孫銀行が

「クレジットの未返済」

に備えて10億ユーロの

“Rücklagen”(万が一の際の蓄え)

を行ったのに、14億ユーロもの黒字だった。

こんなに利益が大きかったのは、リーマンショックの前の2007年以来。

その結果はアナリストの予想を上回り、すでに

「ご祝儀です。」

といわんばかりに株価が11%も上昇した。

これを見せられたら、運営会社はコメルツ銀行を昇格させる以外に選択肢がなかった。

突然の黒字発表、そして前日の業績の公式発表。

まさに絶妙のタイミングだった。

株価はまだ上がるの?

金曜日は

「利益確定の売り」

が入り、少し株価を戻したがわずか1%程度。

当然のことながら

質問
株価はまだ上がるの?

 

と皆さん、思ったことだろう。

コメルツ銀行の業績が回復したのは、

  • 支店の閉鎖等によるコストカット
  • 金利の上昇

が要因だ。

2023年はさらなる支店の閉鎖が予定されている。

欧州で金利があがったのは、2022年も秋になってから。

たったの3か月でコメルツ銀行は大幅黒字を達成。

2023年になると1月1日の時点で金利は3%。

2月からは3.5%。

そして4月からは4%。

業績のさらなる改善は必然的。

問題は何処まで

「業績の改善が株価に折り込みなのか」

という点。

が、業績がさらに改善する銘柄の株価が、継続して下落することは滅多にない。

加えて2022年の業績に対して、配当金が20セント/株支払われる。

コメルツ銀行は、

「来年からは儲けの半分を株主に還元する。」

と言っている。

具体的には配当金の増額と株の買い戻しだ。

業績が改善していて、配当金も増額され、自社の株を買い戻す銘柄の株価が落ちるには、第三次世界大戦並みのインパクトが必要だ。

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執筆者:

nishi

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