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【2021年総選挙】 次期ドイツの首相 になるのは?

投稿日:2021年4月22日 更新日:

【2021年総選挙】 次期ドイツの首相 になるのは?

漁夫の利なるか?緑の党党首 アナレーナ ベアボック女史

ドイツでは2021年9月に総選挙がある。

現役の首相が立候補しないドイツで初めての選挙で、本来ならチャンスの薄い候補者が首相になる可能性を秘めている。

コロナ禍の4月末、各党が

「首相候補」

を選出したので、誰が次期ドイツの首相になりうるのか、紹介してみよう。

社会民主党 / SPD ショルツ氏

SPD 人気投票で党首を選ぶ - 末期症状?

16年も続くCDU 政権。

大衆政党の社会民主党 / SPDは、なんとしても首相の座を取り返したい。

そして2021年の総選挙は、メルケル首相が立候補しないという絶好のチャンス!

これまでSPDが首相候補にノミネートした3人の対立候補、過去最低の得票率を更新する惨敗を喫しており、多分(最後で)最大のチャンスが訪れた。

そこで社会民主党は早々に2020年の8月、党大会で現財務大臣のショルツ氏を、社会民主党の首相候補に選出した。

CDU/CSUと異なり、SPDの首相候補はすんなり決まった。

党首が首相候補への立候補を見送った(*1)事が大きいが、

「同氏の他に、全国で顔が売れている政治家が他にいない。」

というSPDの厳しい台所事情が、首相候補選びを容易にした。

ハンブルク州知事

ショルツ氏はハンブルクで政治家のキャリアを積んだ。

ハンブルクは昔から社会民主党の居城で、あのナチスでも勢力拡大に苦労したほど、左寄りの街。(*2)

そのハンブルクで州知事まで上り詰め、CDUの対立候補を抑えて州選挙にも勝った。

まあ、ハンブルクではSPDの候補が

「勝って当たり前」

で、氏の魅力や才能が光ったわけではない。

そして案の定、州知事としてのショルツ氏の仕事は、パットしなかった。

自分の名前を売りたいばかりに、

「オリンピックをハンブルクに誘致しよう!」

と大キャンペーンを張ったが、市民に無視された。

ハンブルク人はドイツが誇るお金持ちの街なのに、無駄な出費が大嫌い。

その後も小さな失策が続いた。もし次の州選挙に立候補していれば完敗、氏の政治家のキャリアは終わっていただろう。

ここで社会民主党は選挙の前にショルツ氏を党本部に戻すと、厚生労働大臣に就任させてやった。

2020年にはSPD党首選に立候補したが、ここでも全く無名の候補に敗退した。

これまでの実績が示す通り、氏は選挙には強くない。

その最大の原因は、同氏の口下手。演説を、お葬式の弔いの言葉のように読み上げる。

これでは誰が相手でも、負ける。

それでももしショルツ氏が首相になれば、名相(故)シュミット首相に続き、二人目のハンブルクで政治家のキャリアを積んだ首相となる。

公約

ショルツ氏は、党首選の敗退から学んだ。

労働者、左翼に訴べく、首相になれば最低賃金を12ユーロに挙げると公約した。

CDU ラシェット新党首

与党CDUは今年初め、党大会(オンライン)を開き、新党首を選出した。

選挙戦に勝ったのは、

「アーヘンのホビット」

と揶揄されるラシェット氏だった。

本来なら、CDUの党首が首相候補になる指名権を持っている。

しかしこれはこれまでの慣行であり、何処にも書かれているわけではない。

20年前、新党首に就任したばかりのメルケル女史は総選挙に直面したが、党内部からの支援が欠けていた。(*3)

この間隙を利用して、首相候補にはCSUの党首、シュトイバー氏が獲得した。

参照 : www.swr.de

このような例外がないわけではないが、ドイツ連邦共和国の72年の歴史で、例外があったのはわずか2回だけ。

そして双方の場合で、CSUの首相候補は、SPDの首相候補に負けた。

だから今回も、ラシェット氏が首相候補に指名される筈だった。

ところが氏は世論調査でからっきし人気がなかった。

CSU党首 ゼーダー氏

CSU党首 ゼーダー氏

コロナ禍で

「最も人気のある政治家」

になったのはCSU党首、ゼーダー氏だった。

参照 : www.focus.de

バイエルン州のフランケン地方出身の政治家で、身長が2m近いので、

「フランケンの巨人」

あるいは

「フランケンシュタイン」

と揶揄される。

バイエルン人なのに酒(ビール)を口にしない珍しい政治家で、オクトーバーフェストで飲むのは、コーラライト。

バイエルン州を欧州一のハイテク都市にする野望を抱き、ふんだんに補助金を出して人工知能や量子コンピューター研究を支援している。

こうした背景があり、マイクロソフトなど世界的な大企業が、ミュンヘンに研究機関を置いている。

メルケル首相よりも人気が増したその理由は、コロナ禍で最も厳しい規制を要求したから。

又、大衆に受ける政策を感じ取る嗅覚があり、パフォーマンスにも優れていた。(*4)

ホビット vs. フランケンシュタイン

そのゼーダー氏が、首相の椅子を狙っていることは、周知の事実だった。

しかし2021年4月まで、沈黙を守りとおした。

4月中旬にCDU / CSUの首相候補探しが始まると、CSUから党首候補に指名された。

しかしCDU党首のラシェットもCDUから首相候補に指名されており、

「ホビット vs. フランケンシュタイン」

の首相候補争いが表面化した。

上述の通り、CSU党首が首相候補に指名されるのはかなり稀。

ゼーダー氏は氏の人気度を武器に、この例外を押し通そうとした。

実際、CDU若者団体や一部の州知事は、公然とゼーダー氏への支援を表明した。

しかしラシェット氏はCDU内で(日本風に言えば)大きな派閥を抱えており、最後には氏が首相候補指名を獲得した。(*5)

緑の党党首 アナレーナ ベアボック女史

環境問題が社会の主要なテーマになると、緑の党の支持率が急上昇。

その緑の党はダブル党首制で、それそれ男性と女性の党首を置いている。

表面上は

「平等」

な立場にあるが、頭脳の明晰さ、党内での支持はアナレーナ ベアボック女史が優っている。

3年前は

「誰も知らない無名議員」

だったのに、わずか3年で政敵も感心するほどの明晰な頭脳で、一気に頭角を出してきた。(*6)

CDUとCSUが首相候補指名で争っている中、緑の党は記者会見を開き、

(男性の)ハーベック党首が、

「緑の党の首相候補は、ベアボック女史である。」

と告示した。

 

【2021年総選挙】 次期ドイツの首相 になるのは誰?

本来なら、首相候補になれるのは、社会民主党か、CDU / CSUの党首だけ。

ところが二大政党の支持率が、急激に下がってる。

SPDはすでに10年も前から支持率の低下が止まらないが、現状の世論調査では14~15%。

CDU/CSUは27%で第一党の地位を確保しているが、過半数を取るにはほど遠い。

その中にあって緑の党はほぼ23%もの支持率で、CDU/CSUに拮抗する勢力となっている。

もしCDU/CSUが首相を出すには、連立政権候補のFDPと合わせて、過半数議席を獲得することが必要だ。

しかし現状の世論調査では過半数は夢物語。

その一方で、緑の党、SPD、それに左翼政党が連合を組めば、過半数の議席が取れてしまう。

この3党からなる大連合で、本当に過半数が取れた仮定しよう。

すると首相を出す権利があるのは、社会民主党を追い抜いた緑の党だ。

こうした背景があり、今、次期首相に最も近いのは、ベアボック女史となってる。(*7)

注釈 – 【2021年総選挙】 次期ドイツの首相 になるのは誰?

*1

立候補しても、勝てる可能性は1%もなかったから。

*2

バイエルン州だったら、ショルツ氏はキャリアを積めなかったろう。

*3

メルケル女史は首相に就任後、当時、女史の首相候補指名を邪魔した大物政治家をすべて粛清した。

*4

例えばゼーダー氏は、「コロナワクチンがEUが一括調達する。」という取り決めを無視、ロシア製のスプートニク5を(勝手に)州の予算で注文した。

*5

CDUは15の州で党支部を持つが、CSUはバイエルン州だけ。数の上では15:1で、初めからチャンスがなかった。

*6

頭がいいからか、かなり理屈っぽい。単純な説明を望む男性には、好感度は低いかもしれない。

*7

数字の上では、CDUとCSUが緑の党と連立を組めば、過半数を取れる。しかしこの場合、首相の座に収まるのはラシェット氏。緑の党は「ジュニア パートナー」になるよりは、三党連合で首相を出す方を選ぶ。

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執筆者:

nishi

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