ドイツの政治 ドイツの最新情報 ドイツの経済

ドイツ 対中関係を大幅に見直し! 本当に?

投稿日:

日本では、

「 ドイツが対中政策を大幅に見直し。対中強硬に転換。」

などと報道されている。

「そうなんだ!?」

と思われた方も多いだろう。

が、現実は少し異なる。

ハンブルク港ターミナル問題

ドイツを代表する港湾が

“Hanburger Hafen Terminal”(ハンブルク港ターミナル)、

通称、

“HHLA”だ。

が、ドイツ病に悩んでいる。

  • 短い労働時間
  • 高い人件費
  • ドイツ人の十八番 病欠

の三重苦だ。

結果として日本企業は勿論、ドイツ企業までアントワープ、ロッテルダム、そして旧ドイツ領のダンチヒを利用している。

「その方が安いし、早い。」

という。

結果として”HHLA”で陸揚げ & 船積みされるコンテナの数が減る一方。

「このままではじり貧になる!」

と”HHLA”は、かっての日本軍の真珠湾攻撃ように起死回生の案を発案した。

中国のコンテナ会社 Coscoの資本参加

それが中国のコンテナ会社 Coscoの資本参加である。

中国企業に株式の35%を買ってもらい、その金で

「余剰人員の解雇」

をするというものだ。

しかし余剰人員を解雇しても、会社の競争力が大きく改善されるものではない。

所詮は時間稼ぎに過ぎない。

という根本的な問題はさておき、株式会社である”HHLA”は一時的でも業績を改善させて、株主を満足させたい。

そこで中国企業に資本参加を請う事となった。

COSCOとは?

COSCOとは?

中国企業と気えば、

「まだ」

聞こえがいいかもしれないが、Coscoは

「世界の海を制する。」

という中国政府の目標を達成するために政府の主導で誕生した国営企業だ。

コンテナの輸送能力では、世界一。

ユーロ危機の際、金に困ったギリシャ政府が売りに出した港を買って、

「地中海一のコンテナターミナル」

に仕上げたもの、この”Cosco”だ。

今度も金に困った”HHLA”に資本参加して、欧州制覇の足掛かりにしようとしている。

流石は中国人。

目の付け所がいい。

日本企業とは

「視野の広さ」

が違う。

ちょっと待ったあ!

ところがである。

Coscoの資本参加に通産省が

「ちょっと待ったあ!」

をした。

何故だろう?

メルケル長期政権時、ドイツは

  • ロシアからの安価なガス
  • 中国の国内市場

への依存度を極度に高めてしまった。

メルケルにはそれだけではまだ

「不十分」

で、ウクライナとポーランドを迂回して、直接ドイツまでガスを運ぶ”Nordstrem2″の計画を大歓迎。

ところがトランプが、

「許さん。」

と恐喝、工事に参加する企業を制裁で脅した。

お陰で工事が遅れた。

バイデン政権は経済制裁の脅しを解除したが、”Nordstrem2″が開通する前にロシアがウクライナに侵攻した。

この時、ドイツはガス供給量の実に55%をロシアに依存していた。

ロシアは早速、

「ロシアの国益に反する行動をとると、ガスを止めるぞ!」

と脅してきた。

そして半年後、ガスの供給は本当に止まってしまった。

ドイツは高い金を払って世界市場でガスを買い付け、なんとか経済のシャットダウンを逃れることができた。

“Nordstrem2″が開通していたら、もっとひどい目に遭っていただろう。

散々ロシアに

「煮え湯」

を飲まされた後で、また中国への依存度を高めるなど、愚の骨頂。

あまり頭の回転の速くないハーベック通産大臣でさえ、

「ヤバイっしょ!」

と、中国企業の資本参加に反対した。

これで終わっていれば、日本のメデイアが報道している通り、

「 ドイツが対中政策を大幅に見直し。対中強硬に転換。」

だっただろう。

ドイツ 対中関係を大幅に見直し! 本当に?

が、そうはならなかった。

通産省の反対を押し切って、ショルツ首相が

「中国企業の資本参加を歓迎する。」

と押し切ってしまった。

これが日本のメデイアが言う

「 ドイツが対中政策を大幅に見直し。対中強硬に転換。」

の本当の姿。

ショルツ首相はメルケル同様に、ドイツ産業界の言いなり。

産業が、

「中国は成長に欠かせない。」

と言えば、ロシアに煮え湯を飲まされた後でも、

「喉元過ぎれば熱さを忘れる。」

で、中国企業大歓迎。

ドイツはさらに中国への依存度を深めている。

ドイツ内務省

ところがである。

ドイツの内務省、正確には

“Bundesamt für Sicherheit in der Informationstechnik (BSI)”(情報安全省)

が港湾施設を

” kritische Infrastruktur”(重要インフラ施設)

に指定した。

質問
それがどうした?

 

重要インフラ施設に指定されると、

「友好国」

以外の国が、これに参加するのは非常に難しくなる。

かって5Gの構築で同じ措置が取られたことがあり、中国企業は事実上除外された。

こうしてショルツ首相の

「ゴリ押し」

が内務省によって白紙に戻されかねない状態となった。

これがドイツのいい所。

日本では官庁は首相の言動に、

「右向け右!」

をする。

が、ドイツの官庁は首相の意向に忖度しない。

首相と言えど、内務省の決定を無視するわけにはいかない。

どうするショルツ首相?

だから最初から安全を無視して

「ゴリ押し」

なんかするもんじゃない!!

-ドイツの政治, ドイツの最新情報, ドイツの経済

執筆者:

nishi

コメントを残す

アーカイブ