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ガス不足で原子力発電復活? 虚偽と真実を見極めよう!

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ガス不足で原子力発電復活? 虚偽と真実を見極めよう!
ロシアからのガスの供給が止まって1週間。

ガスプロムによれば、今週半ばからガスの供給が再開する筈。

がその可能性は、フィフテイーフィフテイー。

このガス不足により

「原子力発電復活」

が語られるようになった。

日本では、

「ガス不足でドイツでは原子力発電復活!」

というフェイクニュースが旬。

そこで今回はその

「噂話」

の真偽をチェックしたい。

ガス不足

ドイツの産業経済大臣に拠れば、

「重大な欠陥が見つかった。」

という理由で、ガスプロムはガス供給の再開を遅らせる可能性があると言う。

その目的は、西欧がロシアに課している

「西側の工業製品供給ストップ」

の解除。

「ちゃんと部品が届けば、パイプラインの修理もできますよ。」

というわけだ。

その言い訳を使わせないように、ドイツはカナダ政府に

「禁輸の例外」

を申請。

カナダ政府はこれを認めて、パプラインの部品の輸入を許可。

ウクライナのゼレンスキー大統領はこの決定に、

「ロシア経済制裁の明らかな違反だ!」

と怒った。

が、ドイツの経済が破綻すれば、ウクライナに武器弾薬の供給はおろか経済支援もできない。

なので、これは仕方がない。

仮にガスの供給が再開しても、安堵するのはまだ早い。

ロシアが何かの言い訳を見つけて、真冬の真ん中でガス供給をストップする事も想定しておく必要がある。

そこで議論が始まったのが、原子力発電所の復活案だ。

ガス不足で原子力発電復活?

ガス不足で原子力発電復活?

日本人は

「憲法改正」

と聞くと、拒絶反応を起こします。

ちなみにドイツでは毎年、憲法改正が行われています。

日本は憲法改正をせず、

「憲法解釈を変える。」

という中国のような手腕でこれを克服。

だから首相が変われば、憲法解釈も変わります。

結果、何が合憲なのかわかりません。

さっさと何が合憲なのか、ちゃんと憲法に書けばいいのに、、、。

が日本人は拒絶反応を起こすので、議論が進みません。

全く同じ状態がドイツ人の原子力発電。

「原子力発電」

と聞くと拒絶反応を起こすので、話が進みません。

そのドイツで

「残る3基の原子力発電所の稼働を続けるべきだ。」

という議論が高まっている。

それほどドイツではガス不足を超えて、ガス危機に陥っている。

原子力発電所 稼働期間延長賛成

原子力発電所の稼働期間の延長を要求しているのは、野党のCDU / CSU それに、与党のFDP。

どちらも

「経済活動を最優先に!」

という政党なので、まあ、予想は出来た事。

「ガス危機のど真ん中でまだ稼働している原子力発電所を廃炉するなんで、自殺行為。」

という論には

「一理ある」

どころか正論のように思える。

反対者は何が問題なんだろう。

原子力発電所 稼働期間延長反対

原子力発電所の稼働期間延長に反対しているのは、与党の緑の党 それにSPD。

 

一体、何が問題なんだろう。

単にアレルギー反応を起こしているだけじゃなかろうか?

原子力発電所 稼働期間延長ができないワケ

実はそうではない。

原子力発電所の稼働期間延長ができない、確固としたワケがある。

原子力発電所で一番必要なものは?

そう、

“Brennstäbe”(燃焼棒)

だ。

日本では燃料棒と呼ばれているようだ。

参照 : 燃料棒

 

この燃料棒は、スーパーやアマゾンでは買えない。

日本では三菱重工が生産している国産。

ドイツでは輸入に頼っている。

何処から輸入しているか、ご存じだろうか。

そう、ロシアから燃料棒を輸入している。

そこで、

「ロシアからのガス供給ストップに備えて、燃料棒を頂戴。」

と言っても、売ってはくれない。

そこで急遽、三菱重工に発注しても届くのは1年後。

虚偽と真実を見極めよう!

まあ、たまたま

「在庫」

があって、年内に届いたとしよう。

次の問題は原子力発電所の人員・技術者にある。

福島原発事故で廃炉が決まってから、原子力発電所の人員・技術者は2022年12月31日で解雇。

1月1日から、他の職に就く。

なのに、

「頼むから、あと1年長く働いてくれ。」

というわけにはいかない。

だから本来は原子力発電所の稼働延期になれば、お金が儲かる筈の電力会社が、

「原子力発電所の稼働期間延長は現実的ではない。」

と言っている。

勿論、政府がなんらかの保障をすれば、数ケ月程度なら今使っている燃料棒でも稼働延長は可能ではある。

が、1年もの長きにわたる稼働期間の延長は非現実的。

フェイクニュースに惑わされないようにしよう。

じゃどうするの?

当然、

「じゃ、どうするの?」

と聞きたくなります。

ハーベック経済産業大臣は、

「エネルギー不足が回復されるまで、石炭発電で不足分をカバーする。」

と言ってます。

参照 : 燃料棒

 

というのもドイツでは環境破壊Nr.1の石炭発電所の多くは、廃炉が決定している。

ただし!

まだ操業年数が少ない石炭発電所は、

「風力・太陽発電が足らない場合のバックアップ」

として控えている。

中には完成したのに稼働してない石炭発電所まで。

こうした発電所を稼働させることで、足らない電力を補うとしている。

石炭であれば、ロシアに頼らなくても比較的簡単に輸入できる。

さらにはバックアップ発電所稼働用の人員も居るから、これには電力会社も賛成。

が、二酸化炭素削減目標到達には大きな障害となるので、緑の党の経済産業大臣としては苦肉の策。

にもかかわらずちゃんと全体像を見て、信念に反する決断も下している。

今、ドイツで一番人気の政治家になっているのも、無理はない。

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執筆者:

nishi

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