ここでは滅多に取り上げることがないテーマが、スポーツ。
今回、面白い
「事件」
があったので例外として、
“Rekordmeister”(レコードチャンピオン)
の代名詞をいただいているFC Bayernの
「11年連続のリーグ優勝」
について紹介したい。
この記事の目次
レコードチャンピオン FC バイエルン
FC バイエルンは1966年に一部リーグに昇格後、実に33回も優勝している。
言わずもがな、ドイツで最強のサッカークラブだ。
その原因は金。
30万人を超えるファンがいて、スタジアムの席は1年を通して売り切れ。
加えて
「FC バイエルン」
と書かれた
「ファンでしか欲しくない小物」
を定期的に購入してくれる。
こうした小物や入場チケット販売収入が一番大きくて、2番目がスポンサー料。
そして3番目がテレビなどでの放映権。
有名なクラブだけに、放映権収入は他のクラブよりもダントツに多い。
早い話がお金があるわけだ。
お金があれば、優秀な選手を買える。
優秀な選手が居れば試合に勝てるので、収益がまた改善するというわけだ。
結果、FC バイエルンがリーグ優勝しない年は滅多にない。
最後にそんな
「屈辱」
を味わったのは11年前なので、現役の選手には
「優勝しなかった記憶」
がない。
FC バイエルンの監督
ところがである。
「優勝して当たり前。」
なので、もし優勝できないと、監督はすぐにクビになる。
その
「クビの仕方」
がえげつない。
日本のような
「面子」
を保てるクビではなく、
「今日はもう来なくていい。」
と電話で知らされる。
その後、記者会見で
「成績が悪いので監督を変えた。」
と歯にもの着せぬ言い方。
お陰でFC バイエルンで監督をクビになると、他のクラブで監督になることが難しく、
「キャリアの終わり」
になることが少なくない。
にも拘わらず、FC バイエルンから
「監督のお誘い」
がきて、これを断る監督は少ない。
そのせいか、FC バイエルンの監督は
「肝っ玉の座った個性派」
が多い。
例えばイタリア人のトラッパトーニ監督。
ほとんどイタリア語なのでうまく理解できないが、その記者会見は今でも語り草になっている。
新監督 Julian Nagelsmann クビ!
2021年、FC バイエルンはシーズン中に散々苦しめられた
「RB レイプチッヒ」
チームの監督 Julian Nagelsmann 氏をスカウト、FC バイエルンの監督にした。
これはFC バイエルンの
「常套手段」
で手強いチームから
「金の力」
で選手や監督を奪う。
幸い、スカウトはうまくいって2021/2022年、FC バイエルンは早々にリーグ優勝を決めた。
ところがである。
2022/23年は思うようにいかなかった。
シーズン開始から負け試合。
それでも優秀な選手をそろえているので、なんとか半年かけて首位に昇った。
もっとも冬休み後の再スタートも芳しなく、
「これではリーグ優勝さえも、杞憂しなくてはならない。」
という状況だ。
するとシーズン終了まで
「あと2ヶ月もない。」
という土壇場で監督をクビにした。
そのやり方がいただけない。
監督はお休みを利用して、彼女とスキー休暇中。
その休暇中に、テレビの報道でクビを知らされた。
FC バイエルンの上層部は、まずは監督に知らせて
「心の準備」
をさせる事も必要とは考えなかった。
最終戦に持ち込まれた優勝決定
ところがである。
FC バイエルンの上層部が、
「リーグ優勝に欠かせない監督交代」
を行っても、チームの成績は改善しなかった。
それどころか
「あと3試合しかないっ!」
という土壇場で敗戦。
続く試合はドロー。
結果、
「永遠のライバル」
であるBVB ドルトムントに追い越されてしまった!
得点差は2点。
BVB ドルトムントの最終戦の相手は、弱小チームのマインツ。
おまけにホームでの試合。
ファンには、
「楽勝」
に思え、ドルトムント市内の酒場は、
「11年ぶりの優勝」
を祝うファンで大盛況だった。
一方、FC バイエルンの対戦相手はこれまた弱小チームのケルン。
しかしケルンに乗り込んで、相手のホームでの試合である。
FC バイエルンが優勝するには、
- ケルンに勝ち
- ドルトムントが負けるか、ドローになる
必要があった。
どうみても不利なので、
「無理でしょ!」
とFC バイエルンは祝賀会の準備もしなかった。
FC バイエルン11年連続のリーグ優勝を果たすも、、
ところがFC バイエルンにひとつだけ、利点があった。
それは試合開始時間が、ドルトムントよりも早いこと。
試合開始早々にゴールを決めれば、ドルトムントの試合会場で
「FC バイエルン先制得点!」
と即座に報道される。
これは11年間、優勝を経験したことのないチームには、大きなプレッシャーになる。
そして案の定、FCバイエルンが先制ゴールを決めると、ドルトムントの選手は動きが固くなり、
0-2 とマインツに大きく水をあけられた。
ところがである。
今度はケルンが逆襲して、ラッキーなペナルテイーキックでゴールを決めた。
これで1-1。
このままなら、
「ドルトムントは負けても優勝」
だ。
その瞬間、選手からプレッシャーが消えた。
ドルトムントは相次いでゴールを決めて、2-2まで持ち返した。
「これで11年振りの優勝だ!」
とファンが大喜びしている中、FC バイエルンが試合終了の4分前に決勝ゴールを決めた!
その瞬間、FC バイエルンはまた首位になり試合終了。
選手やファンは緊張してドルトムントでの試合終了を待ったが、ドルトムントのチームは意気消沈してしまい、ドロー(引き分け)で試合を終えた。
こうしてFC バイエルンは11年連続のリーグ優勝を決めたのだが、、
他人に墓穴を掘るものは自ら落ちる
ところが
「めでたし、めでたし」
では終わらなかった。
FCバイエルンの社長は、かっての名選手のオリバーカーン。
マネジャーは同じくFC バイエルンの名選手。
FC バイエルンは
「11年連続のリーグ優勝」
の後、社長とマネージャーの
「即時クビ」
を発表した。
オリバーカーンはこの知らせを聞いて、怒り狂った。
「殴り合いになりそうなので、優勝決定選の行われるケルンに行くことを禁止していた。」
と会社側が事後説明。
この説明を聞いて、またオリバーカーンは怒り狂っている。
ドイツでは
“Wer anderen einen Grube gräbt, fällt selbst hinein.”(他人の墓穴を掘る者は自ら墓穴に落ちる。)
という諺があるが、まさにその通り。
自らが選んだ監督を信用せず、
「ちょっと」
成績が振るわないとクビ。
せめてシーズン終了までは
「一蓮托生」
でチャンスを与えるべきだった。
ちなみに社長のカーン氏をクビにした理由は会長によると、
「指導力を発揮せずに、顧問で周囲を固め、会社内のムードが最悪になった為。」
だそうだ。
マインツの恩返し
日本人が好きなのが
「恩返し」
のお話。
そこでエピソードとして、
「マインツの恩返し。」
の話を紹介しておこう。
シーズン終了直前にFCバイエルンの監督に就任したのは、トゥヘル氏。
氏は
「頭脳派」
の監督で戦略を語らせると、ずば抜けている。
氏はかって弱小チームマインツの監督に就任すると、上位リーグで
「大番狂わせ」
を演じて、一躍名を馳せた。
その後、ドルトムントの監督に就任したが、上層部と衝突してクビになった過去がある。
言い換えれば、
「マインツには貸し」
があり、
「ドルトムントには恨み」
があった。
そのトゥヘル氏がFCバイエルンの監督として優勝するには、
「マインツの援護射撃」
が欠かせない。
そしてマインツの選手は、強敵のドルトムントを相手に大奮闘。
そのマインツの援護射撃があったからこそ、トゥヘル氏がFCバイエルンの監督として優勝することができた。
結果としてマインツはトゥヘル氏へ恩を返し、トゥヘル氏もドルトムントに恨みを晴らしたことになる。
めでたし、めでたし。