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バルコニー発電所 大流行!採算は取れるの?

投稿日:2025年1月17日 更新日:

バルコニー発電所 大流行!採算は取れるの?

今、ドイツで バルコニー発電所 が大流行。

嫌でも目につきます。

他の人がやっていると、

「我が家でも!」

と真似をしたくなるのが日本人の常。

でも採算は取れるのだろうか。

バルコニー発電所 大流行!

日本の倍近いドイツの電気料金。

幾ら

「節約」

しても限界がある。

そこで今、ブームになっているのが

“Balkonkraftwerk”(バルコニー発電所)

だ。

ひと昔と比較して、ソラーパネルの性能は飛躍的に上昇。

なのに中国の

  • 過剰生産
  • 違法なダンピング

で、ソラーパネルの価格もかなり安くなった。

ケチで有名なドイツ人が、

「電気の節約には限界があるので、バルコニー発電所を設置するしかない!」

と考えるのは自明の理。

でも、採算は取れるのだろうか?

法律上の規制

まずは一番面倒なテーマ、法律上の規制から始めよう。

無許可で誰もが巨大なソラーパネルを設置したら、送電線がパンクしてしまう。

だからバルコニー(などに)設置できるソラーパネルの発電量、正確に言えば

「送電網に供給できる電気の量」

は600ワットまでと決まっている。

ドイツ政府は

「2024年からは800ワットまで可能にする(予定)。」

と言っていたが、肝心の法案

“Solarpaket”(ソーラーパック)

が与党内でまとまらず、国会に出せてない。

もし政府が争いをやめて法案で同意すれば、800ワットまで可能になる。

今後のニュースに注意されたし。

登録と申告

バルコニー発電所を設置したい人はまず、

”Marktstammdatenregister”

に、どんなパネルを設置するか事前登録が必要だ。

 

2023年までは20を超える記入項目があったが、2024年からたったの5つになった。

これなら(多分)一人でできる。

質問
何のための登録なの?

 

発電量を監督する為です。

政府が、

「どれだけバルコニー発電所が普及しているのか、わかりません。」

では自民党のキックバック調査委員会のようなもの。

皆で使用している送電線を使うのだから、ちゃんと監督する必要があります。

さらに!

あなたが住んでいる町の送電会社に

「バルコニー発電所を設置します。」

と申告する必要があります。

もし政府のソーラーパック法案が国会を通れば、送電会社への通知は不要になる見込みです。

費用

では肝心要の費用についてみていきます。

バルコニー発電用のソラーパネル、発電量は350~470ワットです。

1枚当たり。

すなわち!

2枚以上設置すると、許容されている600ワット(法案が通れば800ワット)を超えてしまう。

だから最大でも2枚まで。

ここでは法案が通る事を期待して、400ワットのソーラパネルを2枚設置した場合で見てみよう。

バルコニー発電所の設置にはその他、

  • ケーブル
  • トランス
  • ソラーパネル設置枠

などが必要になる。

トランスとはソラーパネルで発電された直流を、交流に変える装置です。

これらを全部揃えると、500ユーロ~800ユーロの費用がかかる。

バルコニー発電所 採算は取れるの?

で、採算は取れるのだろうか?

あなたが天気のいいフライブルクアウグスブルクに住んでいると、年間800キロワットの発電量が見込まれる。

現在の電気代(平均)35セント/キロワットで計算すると、1年で280ユーロ分の電気代が節約できることになる。

が、問題はここから。

昼間にガンガンお日様が照っているのに、あなたは会社で仕事。

自宅で電気を消費するのは冷蔵庫くらい。

これだと発電された電気のほんどは電力会社に

「ただ」

で送電されてしまう。

帰宅して、

「さあ!発電した電気をタダで使うぞ!」

と思う頃には、お日様は沈んで真っ暗。

当然、発電量はゼロ。

この場合は、バルコニー発電所を設置するメリットはない。

すなわち!

バルコニー発電所は家族が昼間家に居て、電気を消費してくれる場合のみ意味がある。

その場合でも

「5年から10年で元が取れる。」

という。

正直、あまり魅力的な投資とは言えない。

電気貯蔵装置

勿論、例外もある。

それはバルコニー発電所と一緒に

“Batteriespeicher”(電気貯蔵装置)

を設置する場合。

 

これがあれば、昼間発電した電気を貯蔵できて、

「自家発電した電気」

を電力会社に

「ただ」

でくれてやることなく、全部、自分で消費できる。

問題はその電気貯蔵装置の費用。

これが1000ユーロする。

最低でも。

するとバルコニー発電所で、この電気貯蔵装置の費用まで取り戻すには10年はかかる。

その手間を考えると、おいしい投資ではない。

例外はあなたが電気自動車を持っており、これが昼間家にある場合。

すると電気貯蔵装置も要らないので、5年経たないで元が取れる(かもしれない)。

バルコニー発電所 補助金はないの?

ここまで読んでいただいたなら、

「うすうす」

気が付かれたと思いますが、バルコニー発電所は決して、

「必ず採算が取れる話」

ではない。

勿論、ドイツ人は

「俺は自宅で発電して、毎月〇〇ユーロ節約してる。」

と自慢する。

連中は都合のいい事しか言わないのに、これを真に受け

「我が家でも!」

と真似るのは危険。

ソラーパネルが強風で飛べば、

「10年投資」

は一晩でパー。

ただし!

自治体により

「バルコニー発電所」

に補助金が出るケースがある。

例えば財政大赤字のベルリンでは500ユーロも補助金が出る。

ドイツ全土で最も高い補助金だ。

これだけ補助金が出るなら2~3年で元が取れる。

詳細はこちらを参照されるか、

 

balkonkraftwerk förderung + あなたの町の名前

でぐぐってください。

ちなみにデユッセルドルフでは、

「補助金の対象は低収入家庭のみ」

だそうです。

法律改正

そうこうする内に法律改正があり

“Solarpaket I”

という名前の法律が施行され、バルコニー発電所の設置がさらに容易になりました。

参照 : Solarpaket I

 

変更点は主に

  • 800Wまでのソラーパネル設置許可
  • 電力会社への届けで不要
  • 電力メーターなしでの設置も可
  • Schuko-Steckeの設置可
  • 賃貸人はソラーパネル設置の権利を有す

というもの。

ただし!

800Wまでのソラーパネルの設置には

「特殊なコンセント」

が必要です。

これが法律改正時点では(まだ)市場に出回っていないので、導入前にご自身で市場調査ください。

-ドイツの達人になる, 電気、ガス

執筆者:

nishi

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