ドイツに初めて留学したお客さんが
「凄い!」
と唸っていたのが、路肩に縦列駐車された車の列。
ドイツ生活が長いと、
「当たり前の光景」
なので何に感激しているのかわからない。
「何が凄いの?」
と聞くと、
「見事な縦列駐車!」
だそうです。
その見事な縦列駐車、実は市にお金を払って、
「路上に駐車する権利」
を取得していることが前提だ。
今回はその路上の
「駐車料金」
の大幅値上げに関するテーマです。
この記事の目次
“Anwohnerparken”(居住者駐車)
日本では車の購入にあたり
「駐車場を確保している事」
が必修です。
これがないとナンバープレートが取れません。
ドイツでは駐車場の確保は必要なし。
というのもドイツでは道路に
「路駐」
することが認められているからです。
これを
“Anwohnerparken”(居住者駐車)
と言います。
すると必ず
と聞くのが日本人。
そんなわけないでしょ!
路駐していい道路には、
“Anwohnerfrei”(居住者駐車可)
という標識が出ています。
ここのみ駐車可。
その際、市からもらった
“Anwohnerparkausweis”(居住者駐車証)
を
「外から容易に見えるところ」
に置いておくことが条件です。
駐車料金の大幅値上げ
ではここで質問。
果たして
“Anwohnerparkausweis”(居住者駐車証)は幾らでしょう?
これが激安なんです。
「環境都市」
として知られるフライブルクで
たったの30ユーロ。
この料金は毎月ではなく、1年の料金です。
環境都市なのに、
「環境を破壊する車」
になんという優しさ!
ところがフライブルク市が、
「安すぎる!」
と居住者駐車証の費用を一気に360ユーロ/年に値上げ。
なんと12倍だ。
もっとも、まだ毎月30ユーロ。
「安いじゃん!」
と思うんですが、ドイツ人は
「違法な大幅な値上げだ!」
と裁判所に訴えました。
そもそも日本のような集権国家では
「お上の決定への不服の訴えは受け付けない。」
と、裁判所が訴えの受領を拒否します。
名前は同じ
「民主主義」
ですが、中身は大きく異なります。
ドイツでは
「行政の決定」
に市民が
「それはおかしい。」
と抗議する権利を認めているんです。
これが本当の民主主義。
今回その判決が出たので紹介します。
市の駐車料金の大幅値上げ 違法?それとも合法?
日本に住んでいる皆さんは、最高裁が駐車料金の大幅値上げを合法、あるいは違法、どちらの判決を下したか、予想できますか?
日本ならいうまでもなく、原告側の敗訴です。
ドイツの最高裁は
「フライブルク市の路駐料金の値上げは違法。」
と判断しました。
面白いのはその判決理由。
最高裁は値上げされた価格は、
「市内の駐車場に停めればもっと高い。」
ので
「文句をつける謂れはない。」
としたんです。
なのに
「市の決定は違法」
と判断したのは値上げの決定に至った
「過程」
なんです。
というのも市は値上げを
「正当化」
するために路駐価格を定めている市の
“Satzung”(条例)
の該当箇所を修正しただけ。
最高裁は
「それは不十分で、”Rechtsverordnung”(法令)を変えるべきであった。」
と指摘したんです。
加えて市が変更した条例も
「その根拠が不明で、一部の市民には不当に不利になる要素を含む。」
として、条例変更まで違法と判断。
言い換えればフライブルク市の新条例は
「違法状態にある」
と最高裁が判断したんです。
負けを認めたフライブルク市
もっともドイツにはおかしな自治体があり、裁判所の命令にしたがわないケースもあります。
典型的なのがバイエルン州。
監獄に収容されてる囚人への
「不当なボデイーチェック」
を裁判所が違法と判断。
「囚人に罰金を払え。」
と命じられました。
するとバイエルン州は、
「バイエルン州の法律は、EUの法律の上にある。」
と
「嘘」
を主張して、裁判所から命令された罰金の支払いを拒否。
これを不服として囚人が、バイエルン州を行政裁判に提訴。
行政裁判は、
「バイエルン州もEUで定められている人権を認めなくてはならない。」
と当たり前の判決を下しました。
それほどまでにバイエルン州は、
「ドイツの中の外国」
のように振舞っており、裁判結果を無視することがあります。
で、今回は?
フライブルク市は裁判での
「完敗」
を認め、判決後、フライブルク市は路駐料金を再び30ユーロに下げました。
さらに!
ドイツの法律では、法律の改訂により価格差が生じた場合、
「自治体は市民がすでに収めた料金を返却する義務はない。」
となっているのに、
「大目に払った駐車料金は返却すます。」
と潔い負けっぷり!
バイエルン州とは違うね!