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トヨタ 燃費 & 二酸化炭素排出値 偽証で訴えられる!

投稿日:2019年12月1日 更新日:

トヨタ 燃費 & 二酸化炭素排出値 偽証で訴えられる!

トヨタ 燃費 & 二酸化炭素排出値 偽証で訴えられる!

排ガス(洗浄機能)操作と言えば、誰もが真っ先に想起するのがドイツの車メーカー、フォルクスヴァーゲン社(以下、”VW”と略)だ。

しかし排ガス操作で罰金を課されたのは、”VW”だけに留まならない。ドイツを代表する”BMW”、メルセデス、アウデイ、ポルシェ等、ほとんどのドイツの車メーカーが排ガス洗浄機能の操作疑惑で罰金を課されている。

こうした記事を読まれた方から、「ドイツの車メーカーはひどい。」というコメントをいただいた。しかしこのような操作をしてるのは、ドイツ車だけではない。

排ガス操作 メルセデス ベンツ

まずは最新の排ガス操作の事例から始めよう。2017年5月、検察局はメルセデス ベンツの本社、支店などを対象に一斉に強制立ち入り調査を実施した。

参照 : zeit.de

ここで押収した証拠を元に、2019年9月、シュトットガルトの検察局はメルセデス ベンツに対し、8億700万ユーロもの巨額の罰金を課した。

参照 : manager-magazin.de

メルセデス ベンツはこの巨額の罰金刑を不服として訴えることもできたが、罰金を受け入れることで事件の鎮静化を図った。

尚、この罰金刑は排ガス操作に対する罰金ではなく、社内の担当部署の監督の不備について課されたものだ。払った罰金はあくまでも「監督義務のないがしろ。」に対するもので、メルセデスは今後も、「違法な排ガス操作はしてない!」と主張することができる。

それを考えれば、一兆円の罰金など安いものなのかもしれない。

他のメーカーは?

ドイツで罰金が課されているのがドイツの車メーカーばかりなので、「ドイツ車はけしからん。」と思われる方も多い。しかし実際には米国車もフランス車もイタリア車も、そして日本車も同じ穴の狢だ。

実際に走行中の排ガス値を測定してみると、試験場のテスト走行の数倍の汚染物質が検出されている。しかし外交的な配慮で、外国の車メーカーには罰金が課されていないだけ。

参照 : augsburger-allgemeine

そして日本では車業界に対する配慮から、欧州のような厳しい環境値は導入されていない。だからまるで日本車はクリーンのようなイメージを受けている。その証拠が、”VW”を始めとする車メーカーのデイーゼル攻勢だ。

欧州では全く売れないデイーゼル車が、日本では大人気。あまりにデイーゼル車が人気なので、日本のメーカーは排ガス操作で非難の的になっているドイツメーカーと協定を結び、ドイツメーカーが開発したデイーゼルエンジンを日本車に搭載して販売している。

そしてその売り文句が、「クリーンデイーゼル」だから泣かせる。ドイツで、「クリーン デイーゼル」なんて宣伝したら、非難轟轟だ。しかし日本では、これが消費者の心をキャッチする売り文句になる。それほどまでにドイツと日本では消費者の意識が異なる。

「じゃ日本車は全く、非難されていないの?」と思えばそうでもない。日本車は車の販売台数を増やすため、燃費の数値を好んで操作する。日本メーカーが非難されるのは、燃費を偽った場合だけ。

参照 : welt.de

日本では環境汚染はテーマにならない。

ドイツ人ジャーナリスト “VW”を訴える!

“VW”の「クリーンデイーゼル」という言葉を信じて、同社のデイーゼル車を買った何十万というドイツ人消費者の中に、定年退職した週刊誌のレポーターが居た。

老後の生活に車が必要だが、自分の都合で環境を破壊したくない。そこでわざわざ「観光にやさしい。」と宣伝されている車を買ったのに、見事に騙されてしまった。彼はブランシバイクの地方裁判所に、故意の詐称 /”arglistgier Täuschung”の廉で”VW”に車の引き取りを求めて訴えた。

ところが同裁判所は、これは詐称に当たらないと判断した。そんな事で諦めるなら、レポーターになれるものではない。彼はこの判決を不服として上告した。すると高等裁判所で審議が始まる前日、”VW”は示談に応じた!被告の要求していた全額を、指定の口座に払い込んできた。

これが”VW”のデイーゼル対策で、高等裁判所や最高裁で判決が出る間に示談に応じるのだ。

排ガス スキャンダル で最高裁 VW にお灸をすえる!

環境に優しい車

車の購入資金の大半を回収したレポーターは、環境に優しい別の車を探すことにした。彼が選んだのは世界最大の自動車メーカーで、ハイブリットの先駆者、トヨタ カローラ のハイブリットのバン仕様車だった。

参照 : toyota.de

彼が車をトヨタにした理由は、ホームページにも書いており、車のデイーラーも約束した

  1. 燃費3.6~3.9リットル *
  2. 二酸化炭素排出量 83-76g/Km

という環境に優しい売り文句だった。

ところがどんなに燃費のいい走り方をしても、燃費が5リットルを割ることがなかった。定年退職したとは言っても、長年レポーターで培った彼の嗅覚は鋭かった。先回”VW”に騙された経験から、「トヨタの同じ穴の狢?」という疑いが浮かんできた。

*ドイツでは100Km走るのに必要な燃料を表示します。

環境に優しい車の正体

そこで彼はかっての雇用主に、「トヨタのハイブリット車の検証をしたい。」とレポートの相談を申し込んだ。雇用主は二つ返事でこれに了承すると、撮影チームを派遣してきた。

ドイツでは個人の主観、「いい。」、「悪い。」は意味をもたない。大事なのは事実。そこで現役復帰したレポーターは、客観的な監査結果 / “Gutachten”を取るべく、ベルリンの燃費計測所に撮影チームを携えて車を持ち込んだ。

監査官はEUが定めている「燃費測定方法」でトヨタ カローラ ハイブリット車を走らせて、燃費と二酸化炭素の放出量を計測した。誤差を減らすためこれを3回計測して、平均値を出した。すると実際の計測値は

  1. 燃費5.1リットル
  2. 二酸化炭素の排出量123g/Km

という結果だった。これはトヨタが宣伝しているデータよりも3割以上も悪い数字だった。

トヨタ 燃費 & 二酸化炭素排出値 偽証で訴えられる!

レポーターは、「また騙された!」とガッカリする共に憤慨した。世界最大の車メーカー、”VW”とトヨタに相次いで騙されたのだから、無理もない。

そこで彼は燃費と二酸化炭素の排出値が、トヨタの発表しているデータと大きく異なることを理由に、車を買値で引き取る事を要求した。しかしトヨタはこれを拒否。

こうしてトヨタは、かって”VW”を相手に示談を勝ち取った弁護士に、燃費 & 二酸化炭素排出値 偽証の廉で訴えられることになった。

トヨタは燃費と二酸化炭素の排出値を誤魔化したのか?

ここで争点になるのは、トヨタがホームページで謳っている燃費と二酸化炭素の排出値だ(訴えらてから若干、修正されている。)ホームページでは、「車は最新の計測方法”WLTP”で計測されています。」と明記している。

抜粋 ;”Die hier angegebenen Kraftstoffverbrauchs- und CO2-Emissionswerte wurden zwar auf Basis des neuen WLTP-Testzyklus gemessen,”

参照 : toyota.de

しかしトヨタがホームページで上げてる計測値は、メーカーが車に理想的な環境を用意して計測した”NEFZ”計測値だった。”NEFZ”計測値をあたかも、WLTP”計測値であるかもように書くのは、詐称に相当する。

日本なら「カタログに書かれている値と実際の計測値が違うのは当たり前。」で済むかもしれないが、消費者の権利が守られている欧州ではそうはいかない。

トヨタの主張

トヨタは訴えられてから、

”Die hier angegebenen Kraftstoffverbrauchs- und CO2-Emissionswerte wurden zwar auf Basis des neuen WLTP-Testzyklus gemessen, um jedoch die Vergleichbarkeit mit den nach dem bisherigen NEFZ-Testzyklus gemessenen Werten zu gewährleisten, handelt es sich bei den hier angegebenen Werten um NEFZ-Werte, ”

という説明も載せている。

これは、「車は最新の計測方法”WLTP”で計測されていますが、表示されている数値は”NEFZ”で図ったものです。」というもの。

この文章の意味がわからない。

最新の計測方法”WLTP”で測ったのに、表示されている値は”NEFZ”計測値?この意味、理屈が理解できるのは、トヨタの人間だけだろう。

この意味不明な注意表示にしても、小さな”I”をクリックしないと、全く表示されない!公明正大なやり方とは大きくかけ離れている。

教訓

裁判の行方はどうなったの?

と気になる方、公判はこれからです。もっともその結果は、公判が始まる前からわかっている。

トヨタは高等裁判所、あるいは最高裁で不利な判決がでる事を避けるため、判決の前に示談する。

何故、最初から示談しないの?

そんな事をしては、「私の車も買い取って!」という人が出てくるから、あくまで二審まで裁判をする。そこまで財力と忍耐がある人は稀だから、訴訟を考えているお客をビビらすことができる。

日本人は大企業に対して、全幅の信頼を寄せている。しかしその大企業は”VW”にしても、トヨタにしても、法律に抵触するか、その手前のギリギリの販売方法を堂々を採用して恥じることはない。「大企業だから。」と信用するのは、それがドイツ企業でも、日本企業でも危険です。

大企業は我々庶民の感覚とは別のモラルの定規をもっています。

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執筆者:

nishi

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