2021年4月、ドイツで電々通信法 / Telekommunikationsgesetzt が改正された。
法改正の主眼はドイツの遅~いインターネットを、(今度は本当に)本当に早くすること。
全く同じ台詞を10年以上も前から聞かされていなければ、
「えっ、本当?」
と喜んでいたかもしれない。
ただ今回は、これまでとはちょっと違うようだ。
そこで今回はこの電々通信法の改正について、紹介したみたい。
この記事の目次
超~遅い ドイツのインターネット事情
ドイツのインターネットは遅い。
ドイツテレコムは数年前までグラスファイバーケーブルをケチって、まだ銅線のケーブルを敷設していた。
2020年以降は流石にグラスファイバーケーブルに変更したが、それは家の前の道路まで。
道路からアパートまでは、未だに銅線が引かれている。
そこでテレコムの商売敵が、道路から自宅までグラスファイバーケーブルを敷設した。
言う間でもなく、テレコムの銅回線よりも全然早い。
しかし回線が二重に敷かれていると、テレコムのVDSL接続とグラスファイバーケーブルが干渉しあって、速度が遅くなることがある。
電話やネット関連はドイツの総務省、”Bundesnetzagentur”の管轄になる。
総務省はそのような事態が起きた場合、
「テレコムは商売敵の回線(グラスファイバー)を切断してもいい。」
というテレコム寄りの判断を下した。
こうした官庁の
「身贔屓」
も、インターネットの速度を遅くしてている。
コロナ禍でドイツの弱点が暴露
もし2020年にコロナ禍が発生しなければ、何も変わらなかったろう。(*1)
ところがコロナ禍で
「ホームオフィス」
や、」
「ホームスクリーリング」
が必要になった。
ところがドイツの遅いネット回線では”Zoom”を使用しても授業や会議が、頻繁に切れて仕事、学校の授業ができないっ!
政府がこれまで目標だけ挙げて、
「グラスファイバー網」
を真面目に敷設してこなった報いが訪れた。
今後、5Gで製造過程をクラウドで調整・管理するなら、グラスファイバー網が欠かせない。
こうしてコロナ禍のお陰で、政府はついに重い腰を上げた。
電々通信法改正 – インターネットが早くなる?
政府が出す
「達成目標」
は、あくまでも目安であって、達成できないことが前提だ。(*2)
だから達成できなくても、問題ない。大事なことは目標を掲げて国民に、
「仕事をしていますよ。」
と宣伝する事。
政府が本気なら、我々が私生活でもやるように、
「目標達成できない場合には、、。」
と、罰則を定める。
そして今回、ドイツ政府はその本気度を示すため、電々通信法の改正にあたり、
「早いインターネットが使える権利」(*3)
を国民に認めるとした。
権利を国民に認めたからには、早いインターネットが使えない場合、国民には損害賠償を求める権利が生まれる。
今回ばかりは本気らしい。
早いインターネットとは?
ここで争点となるのは、
「早いインターネット」
の定義。
野党は
「最低100Mbps」
を要求したが、これでは損害賠償請求の津波がやってくるのは明らか。
そこで政府は政府が保障する
「早いインターネット」
は、30Mbpsとされた。
又、政府の
「早いインターネット保障」
は2022年の半ばから。(*4)
2022年の秋にドイツ留学、アパートで30MBPS出ていない場合は、損害賠償請求できます。
TVケーブル料
同時に幾つか法律の中身も改正された。
これまではアパートの雑費で、
「TVケーブル料」
が計上されて、賃貸人が払うことになっていた。
2022年から、これは雑費として計上できなくなる。
来年、年末調整が届いたら、ちゃんとチェックしよう!
その代わりに大家は、
「グラスファイバー料金」
を5EUR/月だけ請求できる。
1年で60ユーロだ。
契約期間の変更
これまではネットのプロバイダーが2年契約を要求、解約しないと自動でさらに2年延長されていた。
結果、消費者は引っ越し等で大きな負担を強いられてきた。
法改正によりインターネットの契約期間は最長で1年間となる。
そして最低契約期間後を過ぎたら、
「契約は月ごとの更新」
となる。
だから引っ越しになっても、無駄になるのはせいぜい1か月の使用料金だけ。
でも日本同様に法律を守らないプロバイダーは多く、
「契約が2年間更新されました!」
と手紙が届くのは間違いなし。
そんな時は電々通信法を引用して、
「消費者センターに訴えますよ。」
と警告の手紙を送っておこう!
注釈 – 電々通信法改正 – インターネットが早くなる?
*1
ありがとう中国!
*2
一番いい例が、日本政府の二酸化炭素削減目標だ。
*3
“Recht auf schnelles Internet”
*4
正確な日程はグラスファイバー敷設の状況を見て、政府が損害賠償請求が起きない日程を決めます。