ウクライナで大活躍中のドイツ製対空火砲戦車 Gepard。
「もっと欲しい。」
との要望に応えて、ラインメタル社は急遽、後続モデルを発表。
以下に詳しく解説します。
この記事の目次
戦車の天敵
そもそもドイツで、対空火砲戦車ゲパルトが開発された経緯をご存じですか?
冷戦時、
「陸戦の勝敗を決めるのは戦車」
と考えられていました。
そう、地上目標攻撃用に開発された低空飛行機、それにヘリです。
とりわけヘリ。
ここだけの話。
自衛隊の演習で、たった一機のヘリが戦車一個大隊を壊滅させました。
そこで戦車を守るための対空兵器が必要になったわけです。
ちなみに自衛隊では戦車部隊への
「気を付けるべし!」
との通達で終わり。
が、ドイツ軍では
「新たな兵器の開発が不可避」
と判断されたんです。
対空火砲戦車 Gepard
そこで開発が始まったのが、
”Flakpanzer”(対空火砲戦車)
です。
折角なので、ドイツ語を解説すると
“Flak”
とは
“Flugabwehrkanone”(対空火砲)
の略です。
“Panzer”
はご存じの通り
「戦車」
です。
皆まで言うと英語の
“Tank”
同様に新語(造語)なので、
「古い辞書」
には載ってないです。
その対空火砲戦車の開発が始まったのは、50年代です。
が、
「諸所の事情」
で、製造開始の最終決定は60年代の後半になります。
これが幸い!
この頃になるとレーダーが日進月歩の進化を遂げて、敵機はおろか、ミサイルまでもレーダーで捕捉できるようになったんです!
最初の戦車が部隊に引き渡されたのは1976年。
この対空火砲戦車はドイツ軍の伝統に乗っ取り
”Gepard”(チーター)
と命名されました。
注目して欲しいのは、
という点。
とてもユニークな存在です。
競合する製品が他にないので、世界中に輸出されました。
対空火砲戦車 Gepard ウクライナに提供
ところがです。
対空火砲戦車 Gepardは一度も実戦に投入されることなく、メルケル政権時の2012年、
“ausgemustert”(現役引退)
されてしまいます。
一度も使用されることがなかった為、
「やっぱり要らなかった、、。」
と、後続モデルも開発されず。
Gepardの存在を忘れかけけていた2022年2月、ロシアがウクライナに軍事侵攻。
長く悩んだドイツ政府がウクライナに提供を決めた
「最初の大型兵器」
のひとつが、対空火砲戦車Gepardだった。
Gut Ding will Weile haben.(大器晩成)
こうした製造から実に50年経って、対空火砲戦車Gepardは初陣を迎えることになります。
ここで開発に時間がかかったことが、実を結びます。
そのレーダーはロシアが発射したドローンは勿論、ミサイルまではっきり検知して追尾できるんです!
お陰でゲパルトは八面六臂の大活躍!
そして攻撃できるのは、ドローンやミサイルだけじゃない。
ロシア軍の装甲車両を
「ハチの巣」
にするばかりか、戦車にも有効なんです!
さらには敵の陣地を
「鋤き返す」
その猛烈な火力。
おまけに壊れない。
まさに万能戦車。
ドイツがウクライナに提供した最新装備品が
「がっかり」
だったのに対して、
対空火砲戦車 ゲパルトは期待をうわまります。
ウクライナは
「もっとくれ!」
と言いますが、もう残ってない!
対空火砲戦車 Gepard 後継モデル登場!
しかしそこは商売チャンスを逃さないラインメタル社、
「今、後続モデルを発表したらバカ売れする!」
と悟り
「あっ!」
という間に開発して、
“Skyranger35”
を発表します。
なんでも、
「最初の車両は2026年にウクライナに引き渡せる。」
そうです。
初代の対空火砲戦車ゲパルトの開発に20年近くかかったことを考えたら、
「音速」
です。
どうやったらこんなに早く、後続モデルを開発することができたんでしょう?
Skyranger30
実はラインメタル社、
“Skyranger30”
という対空火砲戦車を販売していたんです。
が、売れなかった。
ドイツ軍が唯一、19台を注文しただけ。
ロシアによるウクライナ侵攻で
「戦争の常識」
が一転。
主役はドローンになりました。
ここでやっと対空火砲戦車の役割が見直されました。
それまでは
「無用の長物」
とみなされていたので、売れませんでした。
欠点
加えて新型の対空火砲戦車は装輪車。
これでは、
「使用される場面」
が限定されます。
今のウクライナでゲパルトが使われているように、スカイレンジャー30を前線に投入するのは無理。
タイヤが損傷して動けなくなると、ドローンで止めを刺されます。
加えて搭載されているのは、30mm砲。
対空火砲戦車ゲパルトは35mmなので互換性がない。
こうしてスカイレンジャー30は開発されたのに、
「ウクライナも要らない。」
という見事なフロップになりました。
対空火砲戦車 Skyranger35 誕生秘話
ところがです。
ラインメタル社は
「モジュール生産方式」
を採用しています。
パンター戦車でも、
130mm滑空砲と120mm滑空砲を選べるんです。
そこでラインメタル社はスカイレジャー30主砲を、ゲパルトと同じ35mmのオリコン機関砲に変更。
1000発/分の発射能力を有します。
ゲパルトに搭載されていたオリコン機関砲は
「合わせて1100発/分」
だったので、ほぼ同じ能力です。
さらに!
ラインメタル社は
「余っていた」
レオパルト1戦車の車体に、砲塔を載せたんです。
お陰で
「あっ!」
という間に新型対空火砲戦車の開発に成功。
さらに!
砲塔部分がゲパルトと比べて10トンも軽い!
燃費が改善、機動性が増します。
又、砲塔はレオパルト2の車体に載せる事もできます。
売れる?
スカイレンジャー35が売れるかどうか、それは
「ウクライナで活躍できるかどうか」
です。
確かに搭載しているレーダーは、最新のもの。
弾薬も
「特殊なクラスター弾薬」
を用いている。
この弾薬ならドローンやミサイルに命中しなくても、
「波状に飛び散る破片」
で破壊することができる。
が、最新兵器には必ず、どこかに欠陥があります。
この為、
「実戦でテストできる。」
のは、何よりもありがたい。
そして実戦で活躍すれば、大ヒット商品になる。
是非、自衛隊でも100両くらい仕入れて欲しいね!