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NRW州選挙 明暗をはっきりわけた選挙民の満足度

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NRW州選挙 明暗をはっきりわけた選挙民の満足度

5月15日、NRW州にて選挙が行われた。

選挙前の世論調査では

「CDUとSPDが互角の戦い。」

という結果が出ていた。

ところが選挙結果は、世論調査とはかなり異なる結果となった。

NRW州選挙 明暗をはっきりわけた選挙民の満足度

州選挙は州知事の人気投票になる事が多い。

いい政治を行っていれば、

「どんな政党」

に属していても、勝利することができる。

いい例がテューリンゲン州。

州知事は

「党の存続の危機」

にある左翼政党だが、スキャンダルのない

「まっとうな政治」

を行い人気を保持。

選挙戦に勝利して、二期目に突入。

だが今回のNRW州の選挙では、

「過去の傾向」

が当てはまらない。

質問
何故?

 

それは州知事だったラシェット氏が

総選挙に、

「首相候補」

として出馬するために、州知事の椅子を後継者に譲ったからだ。

この時点で州選挙まで200日。

200日で新しい名前を選挙民に覚えてもらうのは、大変だ。

それともあなたは、お住まいの県知事の名前が

「スラリ」

と言えますか?

後継者 ヘンドリック ヴュスト

空いた州知事の椅子に座ったのは、ラシェット政権下で交通大臣だったヘンドリック ヴュスト氏。

 

氏はミュンスター大学で法律を学んだ弁護士で、ロビイストとして働いていた。

その後、新聞社で働いていた。

学生の頃から政治に興味があり、同志と共に

「CDU 若者支部」

を立ち上げた。

始めて州議会議員に当選したのが2005年。

その後、NRW州の書記長職にまで一気に登り詰めたが、ここで悪い病気が出た。

産業からの陳情を州知事に

「口利き」

していたことがバレ、責任を取り辞任。

多くの政治家なら、これがキャリアの終わり。

しかしヴュスト氏は、再び州選挙で立候補、当選。

地元に強い選挙基盤を持っていたことが幸いした。

氏はロビイストとしての活動で学んだのか、日本で言うところの、

「口当たりのやさしい」

政治家で、氏を嫌う人は少なかった。

持ち前の社交性で、ラシェット政権下では交通大臣に就任した。

ラシェット氏が州知事から辞任する際には、ヴュスト氏を後任者として指名するほど。

政治家にならずロビイストとして活動しても、大成功していただろう。

NRW州選挙戦 始まる!

こうして始まったNRW州選挙戦。

世論調査によれば有権者の最大の心配事は、

  • プーチンの戦争
  • インフレ

 

この心配事に

「適した答え」

を出せるがどうかが、選挙の行方を決める。

まさにそれが今回の州選挙の問題なのだ。

質問
どういう事?

 

州知事がインフレ対策やプーチンの戦争に、解決策を出せるわけがない。

 

これをするのは国政だ。

すなわち!

現在の連立政権がどれだけ効果的に国民の不安・不満解消に貢献しているか、これを争う州選挙になった。

 

選挙前の世論調査では、NRW州で伝統的に強いSPDと、やっとNRW州で足場を構築したCDUが拮抗。

選挙結果は

「誰に投票するかまだ決めてない。」

という優柔不断相層が投票箱の前でどちらの政党に

「X」

をするかで決まると見られた。

CDU 名立たる大勝利

18時(ドイツ時間)過ぎに選挙速報が発表されると、CDU選挙運動本部は一気に

「勝ちムード」

に沸いた。

選挙前の世論調査と異なり、CDUが名だたる大勝利を挙げた。

4年前回も

「CDUの記録的な大勝利」

だったが、今回はさらに2.7%も得票率を伸ばし、35.7%。

勿論、第一党の立場を守った。

質問
勝利の秘訣は?

 

州知事のヴュスト氏が200日という短期間にもかかわらず、

「名前と顔」

を売ることに成功した。

とりわけ40歳以上の中高年相のマダムは、半数がヴュスト氏に投票した。

そう、ヴュスト氏は、

「マダムキラー」

だったのだ。

知らなかった、、。

又、国政でもCDUは野党なので、

「好きな事を言える。」

という点も、追い風となった。

高い物価に悩む選挙民はCDUに投票する事で、中央政府に対する不満を表明した。

SPD 過去最悪の得票率で惨敗

一方、

「NRW州で政権への返り咲き」

を願っていたSPDは

「得も言われぬ幻滅」

を味わった。

すでに先回

「歴史的な敗北」

を味わったのに、今回は得票率をさらに4.5%落として、26.7%の得票率。

「過去最悪の得票率」

で惨敗した。

対立候補が

「ぱっとしない」

のも原因だが、一番の原因はこの人、

そう、ショルツ首相だ。

加えて選挙前に

「休暇スキャンダル」

で、お茶の間に話題を提供した国防大臣にある。

NRW州はルール工業地帯を抱える労働者層の多い地域。

その地域で労働者を支持層に持つ社会民主党が勝てないなら、他に何処で勝てる?

緑の党 得票率を3倍に

NRW州選挙でCDUよりも大喜びしたのが、緑の党だ。

なんと得票率が先回から3倍になる大躍進を遂げた。

質問
勝利の秘訣は?

 

この人です。

そう、通産大臣のハーベック氏だ。

氏はロシアのガス・石油、石炭に依存しているドイツの嘆かわしい状況を改善すべく、世界中を回って、

「ガスを売ってください。」

「石油を売ってください。」

と行脚した。

人権無視のサウジだろうが、カターだろうが、

「ドイツ経済のため」

と建て前を捨てて、頭を下げて回った。

「ロシアからのガスの輸入を直ちにやめろ!」

という国民には、何故、これができないのか、テレビに出演して何度も何度も

「子供にもわかるように」

説明した。

ハーベック氏の

「政治のやり方」

はショルツ首相の

「何も説明しない」

姿勢と180度異なる対比をなしており、

「ドイツで一番人気の政治家」

になった。

 

そのハーベック氏の人気の

「七光り」

で緑の党が躍進した。

FDP ボロ負け

SPD同様にNRW州選挙で

「ボロ負け」

したのがFDP、日本でいう自由民主党だ。

そもそも党首で財務大臣のリントナー氏の地元なので、

「最悪でも先回レベルの得票率」

を期待していた。

しかしふたを開けてみると、先回よりも6.7%も得票率を落として、5.9%。

極右政党の5.4%と大差なかった。

質問
敗北の秘訣は?

 

この人です。

そう、財務大臣のリントナー氏。

記者がいると、すぐにポーズをとる

「思春期の男の子」

みたいな人物です。

女性票を狙って、禿げた頭に髪の毛を移植。

お陰で2021年の選挙で大幅に得票率を伸ばした。

ところがである。

「減税をする。」

と公約したのに

  • コロナ
  • プーチンの戦争

で国庫は火の車。

減税なんぞできる状態ではない。

なのに

「2023年は減税する。」

とまるで

「健康食品のテレビ宣伝」

のような守れるわけがない約束をしている。

さらにはFDPは以前から、

「政権に就くと注目を集めたいばかりに、野党のような振る舞いをする。」

と癖があった。

今回もその伝統を守り、ショルツ首相を批判。

日本で言えば公明党が、

「岸田首相の政策には賛同しかねる。」

と言うようなもの。

これは国民にはいい印象を与えなかった。

皆までいえば、NRW州のFDP支部長にスポットを当てた選挙運動も負け戦の原因のひとつ。

マダムキラーには到底及ばなかった、、。

連立政権の可能性

可能性を論じるなら、大敗を喫したSPDとFDPが大勝した緑の党と

「三党連合」

を組めば、過半数を取得できる。

そう、現在のドイツ政府と同じ構成だ。

ただこの可能性は、あくまでも可能性。

そんな事をしたら、

「勝利したCDUから勝利を奪った。」

と、ただでも人気を落としてるSPDとFDPの支持率は奈落の底に。

この為、勝利したCDUと緑の党が

「勝利の連合」

を組む確率が高い。

もしCDUと緑の党の連合政権が誕生すれば、

「ドイツで初めての組み合わせ」

となる。

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執筆者:

nishi

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