ドイツの政治 ドイツの最新情報

メルツ新政権 大臣の主な顔ぶれ ピエロは誰だ?

投稿日:2025年5月14日 更新日:

メルツ新政権 大臣の主な顔ぶれ ピエロは誰だ?

2025年5月6日、ドイツで メルツ新政権 が誕生した。

総選挙からわずか2ヶ月。

かってないスピード誕生だ。

もっともほとんどの大臣が新顔。

そこで今回はメルツ新政権で、課題に取り組む大臣の

「主要な顔ぶれ」

を紹介したい。

メルツ新政権 大臣の主な顔ぶれ ピエロは誰だ?

今回成立したメルツ新政権、これまでの政権と大きく異なる点がある。

それは

  1. 大臣経験者がたった2名だけ
  2. 経済界から2名が大臣に就任

という点だ。

すなわち!

新政権は

「ほぼド素人集団」

なのだ。

この大事な時に。

正直な話、期待よりも心配の方が大きい。

いい意味で大臣が

「驚かしてくれる。」

事を祈るしかない。

首相 Friedrich Merz(CDU)

まずは新政権を代表する首相から始めよう。

Friedrich Merz 氏。

1955年11月生まれ。

かなり成績が良かったようで、奨学金をもらってボン大学とマールブルク大学で法律を学ぶ。

弁護士の国家試験もトップの成績で合格。

裁判官としてのキャリアを積みながら、次第に政治に足を踏み入れていく。

人生最大の敗北

政治家としてのメルツ氏は、市長や州知事になるのではなく、

「CDUの党内官僚」

として現場に出ることなくキャリアを積んだ。

言い替えると、

「人脈と策略だけ」

“Fraktionschef”(国会議員団長)

まで出世する。

ここまで来ると、首相就任も夢ではなかった。

しかし2004年、メルケル党首に役職をはく奪されて、

「ただの党員」

に格下げされる。

人生最大の敗北だった。

翌年には政治家としてキャリアを諦めて、経済界に下る。

復活

メルケル首相の退任後、政治の舞台に復活を図る。

しかし!

まずはカレンバオアー女史に敗北する。

メルケル首相の後継者は?- 3人の党首候補者

女史の辞任後、また立候補する。

が、今度はラシェット氏に敗北する。

ラシェット氏 CDU党首選挙を制す!

そのラシェット氏が総選挙でぼろ負け

2021年 ドイツ総選挙 SPD 鼻の差で勝利 次期首相は誰に?

氏は責任を取って辞任。

こうして三度目の党首選挙に勝利して、ようやく党首に就任した

フリードリヒ メルツ 3度目の正直でCDU党首に

得意分野

メルツ氏はメルケル(前)首相に

「ほぼ追放」

されるまで、党内では財政担当だった。

経済界に下ってからは、世界最大の投資信託会社ブラックロックで働いた。

当然、経済界への人脈は豊富で、理解も深い。

加えて(父方)はプロイセンの兵士家系。

メルツ氏も若き時、野戦砲部隊(日本で言う特科)に勤務して

「予備役の将校」

になる教育も受けた。

当然、軍事関係にも理解が深い。

言い換えれば、今の時代にピッタリ。

メルケル(前)首相に負け、今日まで

「出番」

がなかったのは、

“Vorsehung”(運命)

だったのかもしれない。

メルツ新政権 官房長官 フライ氏(CDU)

そのメルツ首相を影で支えるのが

“Kanzeramtsminister”(官房長官)

のフライ氏だ。

バーデンーヴュルテンベルク州では人気の政治家だが、全国的には無名に近かった。

しかし度々、

「ほぼ極右」

の発言をして、メルツ氏の目に留まる。

弁護士の資格も持つ

「頭のいい人間」

なのに、外国人排斥を訴えるその主張には、かなり違和感を覚える。

しかしその

「歯に着せぬ言い方」

が、メルツ新首相に痛く気に入ったようだ。

さもなければ諜報局を監督する官房長官に、任命する筈もない。

財務大臣 クリンクバイル(SPD)

メルツ新政権の財務大臣は、総選挙で大敗したSPDが担当する。

本来であれば、空前のインフラ投資計画を実現させたクキース財務大臣が続投する。

が、党首のクリンクバイル氏にその職を奪われた。

クリンクバイル氏は先の総選挙

「勝てる見込みのないショルツ首相」

を後押しした。

その責任を問われることなく、党首に居座ったまま財務大臣の座をゲット。

おまけに

「副首相」

の肩書までいただいた。

失敗を成功に変える手腕はトランプにも勝る。

もっともこれまで財務省での勤務経験はなく、財務関連はド素人。

幸い、SPDでは中道派。

そのためか、メルツ首相と

「ウマが合う」

のが救い。

前信号政権のリントナー税務大臣に比べれば、

「マシなほう」

だと我慢するしかない。

メルツ新政権 経済大臣 ライヒェ女史(CDU)

心配な人事は経済大臣。

メルツ首相は当初、

「小トランプ」

のように

「CDUの見解」

を恥ずかしげもなく大便、もとい、代弁するリネマン幹事長を経済大臣に就任させる意向だった。

が、リネマン幹事長が経済大臣の椅子を固辞。

何せドイツは今、2年間も続く経済後退のど真ん中。

今年で3年目だが、政府は経済成長予測0%と予測。

 

そんな国で経済大臣になると、責任を問われるのは間違いなし。

そんな人気のない経済大臣に就任したのは、ロビイストの”Katherina Reiche”女史。

自分の両親の会社の取締役員だったが、その会社が倒産。

その際、女史は検察に

「倒産先延ばし」

の廉で起訴されたこともある。

その後、かって国会議員だったそのコネを活かして、

「電力業界と政治」

の橋渡しをやってきた。

当然、経済界が何を要求しているか、よっく知っている

あまり誇れる経歴ではないが、

「経済大臣になってもいい。」

という人物が居ないので、仕方ない。

あまり期待しないで、見守るしかない。

外務大臣 ヴァーデプール(CDU)

メルツ新政権で

「心配」

をしなくて済みそうなのが、外務大臣に就任したヴァーデプール氏だ。

兵士、そして弁護士としての経験を経て政治家に転校した。

日本の二世、三世議員と違い、

自身の努力でキャリアを積んでから政治家になっている。

 

おまけに

「北ドイツ」

出身なので感情を顔に出すことがない。

外交官にはピッタリの性格。

人間、政治家として十分な人生経験を積んでおり、その知能指数の高さが発言がにじみ出ている。

外交官として経験こそないが、

「一番心配をしなくていい大臣の一人」

が、外務大臣のヴァーデプール氏だ。

内務大臣 ドブリント氏(CSU)

その一方で、経済大臣に次いで心配なのが、内務大臣に就任したドブリント氏だ。

かってメルケル政権下で交通大臣に就いていた。

メルツ新政権で

「大臣の経験」

を持つ貴重な政治家の一人。

あだ名は

「小トランプ」

オリジナルほどひどくはないが、

「誇張・粉飾した表現」

を多用する。

ドブリント氏が今回、内務大臣に採用されたのは、難民の入国ルートのバイエルン州で

「国境での難民・移民の入国拒否」

を、一番でかい声で主張したから。

メルツ首相は総選挙の直前、極右の賛成票を当てにして、

「難民・移民送り返し法案」

を国会に提出して、大きな問題になった。

「ドブリントを内務大臣にすれば、国境で移民・難民の入国を阻止してくれる!」

との期待から、今回は内務大臣の椅子をゲットした。

国防大臣 ピストーリウス(SPD)

今回のメルツ政権で唯一、

「大臣職を継承」

することになったのが、ピストーリウス国防大臣だ。

国防大臣職は

“heisser Stuhl”(熱い椅子)

と呼ばれ、最もクビになる回数が多い大臣職だ。

しかしこれをそつなくこなすと、

「次は首相候補」

になることができる。

ピストーリウス国防大臣は就任以来、国防軍を大改革。

とりわけ装備品を調達する

“Beschaffungsamt”

「官僚のモンスター」

と呼ばれ、改革に成功した政治家は一人としていない。

にもかかわらずピストーリウス国防大臣は改革に着手、

「おいしい汁を吸っているだけの官僚」

をクビにして、代わりに軍人をそえた。

勿論、官僚の猛反対にあった。

が、抵抗に一切ひるまず改革を断行。

 

お陰で兵士は必要な装備を

「10年」

待たずに、入手できるようになり士気もあがった。

流石にピストーリウス国防大臣よりも適任者はおらず、

「留任」

が決まった。

デジタル化大臣 ヴィルドベルガー(無所属)

そう、ドイツも日本に倣って

「デジタル庁」

の導入を決めた。

その初代大臣は、ヴイルドベルガー氏。

ドイツの官庁は日本並みの

「無駄と無意味の宝庫」

である。

その無駄を減らして、

「経済を活性化させる。」

というのがメルツ首相が掲げる経済政策のひとつ。

そこでこれまでは経済庁の下にあり

「義母のような扱い」

を受けてきたデジタル庁を独立させた。

大臣に就任したヴイルドベルガー氏は、ドイツで最大手の家電量販手店、Meida Markt & Saturn を傘下に置くCeconomyの社長。

米国では

「よくある事」

だが、ドイツでは経済界の人間が大臣に主任するのはかなり稀。

期待薄?

正直な所、

「デジタル化大臣にはもっと適任者がいたのでは?」

と言われている。

というのも、ヴイルドベルガー氏が社長を務めるCeconomy社、業績不振に悩んでいる。

株価は低迷、買収の噂が絶えない。

「自分の会社も立て直せない人物が、硬直化した官僚のデジタル化を進めることができるのか?」

は、もっともな疑問だろう。

日本の数々のデジタル大臣も

「役立たず」

だったが、同じ殿堂に入ることになるのだろうか。

農水大臣 ライナー氏(CSU)

最後に紹介するのが私の

「お勧め」

である農水大臣のライナー氏。

農水大臣と言えば、

「新米が出れば価格は下がる。」

と言い続け

「無策・無能大臣賞」

を獲得した坂本農水大臣が記憶に新しい。

新農水大臣も

「似ったり寄ったり」

ですけどね。

ドイツでも農水大臣、あるいは途上国支援庁は

「内閣内のピエロ」

を演じる事が多い。

その期待を一身に受けて農水大臣に就任したライナー氏。

大臣は勿論だが、これまで

「肩書が気が付く職」

の経験なし。

「ただの国会議員」

から一気に出世した。

又、職業経歴が頼もしい。

まだ義務だった兵役を終えて、肉屋に就職。

最後はマイスターになったので、ソーセージやハムだって作れてしまう。

でもソーセージが作れたら、大臣が勤まるの?

ピエロ役、大いに期待しています。

-ドイツの政治, ドイツの最新情報

執筆者:

nishi

コメントを残す

アーカイブ