
今度はメルセデスが労働組合と揉めている。
会社側が労働組合に
「週38時間労働を受け入れよ。さもなくば工場閉鎖だ。」
と要求。
組合側は
「脅しには応じない。」
と、徹底抗戦の模様。
メルセデスの要求は単なる
「こけおどし」
なのか、それとも最後通告なのか?
以下に詳しく解説します。
この記事の目次
マージン率の低下
待ち臨んだ電気自動車ブームがやっと到来した!
電気自動車販売台数のトップはVWだ。
てっきり
「嬉しい悲鳴じゃない?」
と思いきやそのVW、大幅な利益低下の為、人員削減と工場閉鎖を要求した。
「はあ~?」
と思いません?
売れても儲からない電気自動車
電気自動車で一番効高価な部品は充電池。
これを自社で生産できないため、世界中の車メーカーは中国製の充電池を採用している。
あのトヨタでさえ例外ではない。
それほど中国製の充電地は、優れた性能で安価なのだ。
これが高級車なら、まだ
「他の部分」
で利益を出すことができる。
が、大衆車を生産していると、電気自動車が売れても儲からない。
こうして販売台数トップのVWは経営危機に陥った。
BMW マージン目標大幅下方修正

厳密に言うと、一番最初にマージン率を下方修正したのは、BMW だ。
今年の6月、2026年度のマージン(率)をこれまでの6%から、1%に大幅下方修正した。
発表後、すべての自動車メーカーの株は大幅安になった。
ひ~。
しかし!
これまで、
「ドイツの自動車メーカーで、一番将来性があるのは BMW 」
と言われてきた。
電気自動車導入に向けて、高価な設備投資をほぼすべて終えた。
「あとは儲けるだけ!」
だった。
そしてBMW の組み立て工場では、同じ製造ラインでガソリン車と電気自動車を組み立てられる。
これがメルセデスになると、
「ガソリン車は〇〇工場。電気自動車は□□工場。」
と生産拠点を振り分けている。
急にガソリン車の需要が減れば、同じ工場で生産ラインを調整、電動自動車を製造すればいい。
他社なら人員削減、下手すれば工場閉鎖が必要になる。
この目的で BMW はハンガリーに
「グループ内で最新の組み立て工場」
を建設。
生産能力は年間15万台。
これで将来の需要の変化に、
「対応できる筈」
だった。
売れすぎる電気自動車 neue Klasse
が、思った以上に BMW の電気自動車が売れた。
BMW の新しい電気自動車
“neue Klasse”
は、ハンガリーの新工場で組み立てられる。
当初は8時間労働だったが、すぐに16時間労働にシフトアップ。
にも拘わらず、
「今、注文しても届くのは2027年」
という大量注文をさばくため、ハンガリー工場では三交代制を導入。
結果、採算が合わなくなった。
- 製造コストの安いハンガリーで
- 日本円で1000万円もする高級車を製造するのに、
儲からないのだ!
メルセデス 週40時間労働 or 工場閉鎖 どっち?
そう、同じ高級車のメルセデスもマージン率の低下で悩んでます。
メルセデスの小口投資家の私は、
と、現金を用意して待ってました。
株価が下がったら、追い買いしないとね!
そして期待は裏切られなかった。
メルセデスは労働組合に対して、
- 賃金調整なしの週38時間労働
- 嫌なら工場閉鎖
と最後通告を行った。
週38時間労働 何処が悪い?
と聞いて、日本人の多くは、
「週38時間労働の何処が悪いの?」
と思ったことだろう。
日本でも自動車製造ラインの
「表向きの労働時間」
は38時間である。
が、残業をさせられる。
必ず。
それも最低20時間/月。
ひどいケースでは30時間/月。
早い話、日本では週43~45.5時間労働である。
これだけ働いて月収は35万円。
一方、メルセデスでは週35時間労働だ。
おまけにお給料は最低3400ユーロから。
日本円に直すと

61万円だ。
短い労働時間を換算すると、メルセデスの組み立て工場の賃金は日本の倍。
流石、高級車。
ガソリン車だったら、それでもまだ儲った。
しかし電気自動車の販売台数の増加に伴い、採算が合わなくなってきた。
そこで
と要求している。
果たしてこれは、
「こけおどし」
なのだろうか。
ハンガリー工場なら70%安い?
メルセデスが
「ドイツの工場の生産性の悪さ」
の比較対象として出しているのが、同社のハンガリー工場だ。
メルセデスはブタペストの南にあった組み立て工場に
「大幅な拡張工事」
を施し、2026年7月に完成。
年間製造能力は40万台という、メルセデス最大の工場だ。
その竣工式にはハンガリーの新首相も出席した。
何しろドイツ人は高給取りに加えて
「病欠」
の世界チャンピオン。
工場労働者は平均して、25~29日の病欠を利用する。

結果、多めに作業員を採用しないと生産ラインが維持できない。
これが生産コストを押し上げる原因にもなっている。
しかし!
ハンガリーの工場は生産能力がまだ、余っている。
これを使わない手はない。
それどころか、最初からドイツ国内の製造能力をハンガリーに移する目的で、工場拡張を行ったしか思えない。
そう、メルセデスの要求は単なるこけおどしではなく、
「本気の最後通告」
だった。
メルセデス労使交渉 勝つのはどっちだ?
メルセデスでの正式な労使交渉は10月7日から始まる。
勝つのはどっちだろう?
と聞くまでもない。
ドイツでは有利な交渉ポジションにある事を
„am längeren Hebel sitzen“(梃の長い側に座っている)
という。
そしてメルセデスのマネージメントはまさに
「梃の長い側」
に座っている。
労働組合が、
「全ストだ!」
と脅せば、
「どうぞ、どうぞ」
と生産拠点をハンガリーに移す理由をもらえる。
初めから労働組合側には勝ち目がない。
メルセデス から学ぶ教訓
ドイツでは
「すべての工場での労働時間を35時間/週に!」
と労働組合が求めている。
これに
を加味すると、ドイツでの製造業はペイしない。
そもそも高級車の BMW、メルセデスでさえ採算が取れないのだ。
そしてドイツはイギリスなどとは違い、生産業がもっとも多くの雇用を生み出している。
これがなくなれば、ドイツは本当にオワコンです。
そして
「当たり前の週38時間労働」
に戻そうとすると、
「労働者の権利を侵害された!」
と騒ぎだす。
お話になりません。
稀ではあるが、日本企業によるドイツ企業の買収がある。
辞めておいた方がいい。
上場以来最大の大赤字を出した。
あのマスクでさえ、テスラのベルリン工場の採算性の低下に悩まされている。
唯一、中国人だけは、ドイツ企業を買収してノウハウを盗んだら倒産廃業に追い込むという
「正しい対処方法」
を知っている。



