コロナ禍で航空機はグラウンデイング。
「飛んでなんぼ。」
の航空機が地上待機すると、航空会社は収入がないのに金がかかるだけ。
経営は一気に悪化した。
政府は雇用を守るため、倒産の危機に見舞われたルフトハンザを部分国有化。
文字通りナショナルキャリアとなった。
そのコロナ禍も終焉。
ルフトハンザは国に借金を返済して、3年振りに年間業績で黒字を達成。
それも大黒字。
余裕ができたルフトハンザは、万年赤字航空会社の買収に乗り出した。
この記事の目次
万年赤字航空会社とは?
万年赤字航空会社とは、
”ITA Airways”
の事。
日本で言えば日本航空。
タイで言えば、タイ航空。
「親方日の丸!」
と、ふんぞりかえった態度で営業。
万年赤字。
挙句の果てに経営破綻した航空会社です。
日本政府が日本航空を税金で救ったように、イタリア政府も税金でナショナルキャリアを救った。
もっとも名前は倒産した際の名前
「アリタリア」
を一新して
“ITA Airways”
となった。
ただし!
日本航空と違って、”ITA”と名前が変わっても赤字体質は変わってない。
毎日、150万ユーロもの赤字を出し続けている。
イタリア政府が株式の100%を保有しているので、イタリア政府が倒産しない限り、倒産はない。
改善しない赤字体質
イタの赤字体質は改善する気配すらない。
イタリアには世界でも成功している企業が多いのに、航空会社の運営となるとマネージメントが全く駄目。
- コスト管理
- 危機管理
が全くできていない。
万年赤字なのに、エアバスに28機もの新型航空機を注文。
「家計のやりくりが難しい。」
というのに新車を買うようなもの。
ど素人だって、やりくりが厳しければ、大きなお買い物は控えて切り詰める。
それさえもできないのが、イタだ。
身売り先探し
イタリアは先進国では日本に次ぐ、
「借金大国」
である。
万年赤字の航空会社を今後も、支えていく余裕はない。
そしてちょうど
「始めての女性首相」
の座に就いたメローニ首相は、経済を立て直しかってのムッソリーニのように
「イタリアの救世主」
として崇められたい。
そこで、
「イタを売れ!」
と担当大臣に命令。
まずはAA(アメリカ航空)と身売りの交渉に入った。
が、交渉が決裂した。
ところが
「蓼食う虫も好き好き」
とはよく言ったもので、今度はAF & KLM、それにルフトハンザが身受けに興味を見せた。
なんで?
ルフトハンザの思惑
かっては乗客数で
「世界最大の航空会社」
だったルフトハンザ。
コロナ禍のあおりをうけて、6~7位あたりをうろついている。
今、ルフトハンザが欲しいのは、
「ドル箱路線」
である。
そしてルフトハンザで一番乗客が多いのが、米国からイタリアへ飛ぶ路線なのだ。
そう、本国のドイツよりも、イタリアに飛ぶ乗客の方が多い。
ならばルフトハンザがイタの買収に興味を見せるのも、もっともな事。
ただし!
イタリアの労働市場はがちがちに規制されており、余剰人員の解雇は至難の業。
おまけにイタは国営会社なので、社員は公務員。
公務員はクビにできない!
そんなイタなんぞ買収なんぞしたら、会社の甘い汁を吸っているだけで、
「お荷物」
になっている社員を押し付けられるだけ。
だからかってルフトハンザは、
「ルフトハンザ イタリア」
を立ち上げて、アリタリアに抵抗したことがある。
が、結局、大赤字を出して会社を清算した。
このような経験があるので、ルフトハンザはイタの買収には消極的だった。
ルフトハンザ 万年赤字航空会社に買収オファー
ところがである。
イタを早く手放したいイタリア新政府が、
「イタは民営化する。」
と言い出した。
民営化されれば、余剰社員の
「整理」
が可能になる。
その一方でイタを買収すれば、イタが抱える黒山のような借金は、ルフトハンザの借金になる。
コロナ禍を克服してやっと黒字になったばかりなのに、また借金を負う?
ましてやイタを買収する金はどこから捻出する?
結局は増資になる。
経済アナリストは大方、イタの買収に否定的だった。
にも拘わらず、ルフトハンザのスポーア社長はイタの買収オファーを出した。
山のような借金を抱えた万年赤字の会社なんぞ、
「ただでも高いっ!」
と思うのだが、ルフトハンザは2億~3億ユーロ金を払うと言う。
その株式の40%の取得を条件に。
ルフトハンザは、
「リストラで黒字体質になる。」
と考えているようだが、イタリアの労働組合はマフィアのような存在。
「リストラするならストで対抗だ!」
と、会社が経営破綻するまでストをする。
これが原因でイタリア経済は、日本経済同様に悪化の一途。
果たしてルフトハンザはこの
「イタリア病」
を克服できるだろうか。
かなり苦労することは間違いない。