母子療養は子供のお世話付き
この記事の目次
Kur とは?
“Kur”というすぐに覚えられる単語は、「療養」という意味の名詞。
これが動詞になると”kurieren”となり、「治す。」という他動詞になる。これにドイツ人の大好きな単語、”Urlaub”(休暇)が付いて、”Kur-Urlaub”(療養休暇)となる。
日本でも知られているのは温泉治療だが、その他にも高地療養、運動療養、リハビリ療養などがある。
ドイツでは 無償で療養休暇 できるって本当?
30年前のドイツを知る人は、
「ドイツでは温泉療養がタダでできるんだぞ!凄いだろう。」
と自慢する。残念ながら21世紀の今日では、温泉療養費を健康保険が払ってくれることはほとんどない。例外はお金持ち保険と呼ばれている個人保険に加入しているケースだ。
「じゃ個人保険に変えて、温泉治療をただで受けよう。」
という思惑は、うまくいきません。個人保険の保険料は、温泉療養費よりも高いです、
ところがである。国民健康保険に加入している場合でも、この療養休暇が認められることがある。
まだ使える療養休暇
例えば慢性的な疾患を患っており、医師が”Kur-Urlaub”が必要と(書面で)薦める場合、保険会社に申請を出してみることができる。かなり高い確立で、保険会社はこれを拒否する。
保険会社は申請が必要な治療は滅多に許可が降りない。
これを不服として再度、医師の診断書を提出して申請すると、疾患の程度、症状により許可されることがある。しかし許可されても、健康保険が払ってくれるのはわずか13ユーロ程度で、残りは自費だ。
その程度の補助金目当てに、かなり面倒な手続きをする甲斐があるかどうか、各人で判断してください。
リハビリ療養
その他に保険が認可してくれる(可能性がある)のは、リハビリ療養。
この療養を許可してもらうには、大きな事故、疾病で体の自由が失われていることが条件だ。この場合の申請先は “Rentenversicherung”(年金保険)になる。
「肩こりがひどくて、満足に動けない。」
という症状では、許可される可能性はありません。すると、
「それじゃ何のための保険かわからない。」
という苦情を聞きますが、肩こり程度で被保険者を温泉治療に送っていては、保険料は個人保険並みに上昇してしまいます。
ドイツでは成人の半数は脂肪過多。だからと行って、”Magenverkleinerung”(胃を小さくする手術)を肥満体のドイツ人すべてに施すと、健康保険は破綻してしまいます。
これでは健康に気をつけている人が、馬鹿を見ます。ですから胃の縮小手術は健康保険では(滅多に)許可がおりません。肩こりも同じです。
無償で療養休暇 – 母子療養とは?
「それじゃ、”Kur-Urlaub”なんて机上の空論で全く使えないじゃないですか。」
と言いたくなる。その通りなんです。だから冒頭で書いた通り、温泉治療が保険でできたのは30年も昔話です。”Es sei denn,”(例外は)、”Mutter-Kind-Kur”(母子療養)と呼ばれる療養だ。
ドイツにおけるシングルマザーの数、割合は日本の比ではない。ただでも子育ては大変なのに、これを一人でこなすのは(男性には)想像を絶する事業で、心の準備ができず精神的に参ってしまう。
そのような母と子供を救うために、母子、あるいは父子療養がある。
母子療養申請方法
この療養を受けるには、加入している健康保険に子育てのストレスを理由に療養を申請する。
申請が拒否されることもあるので、医師から診断書を書いてもらったほうがうまくいく。あるいは母子療養を提供している施設が、
「無料相談所」を
設けている。療養施設も客が来てくれないと赤字なので、どのような理由を挙げれば認可が降り易いか、アドバイスしてくれる。
申請が許可されると、最長で21日まで療養を受けることができる(症状により延長も可能)。そして療養の費用は健康保険(それに国民年金等)が負担してくれる。本人が払うのは自己負担金として10ユーロ/日。
21日だと210ユーロだ。子供は18歳未満であれば無料。
「210ユーロなんて払えない。」
という場合は、子供の父親に頼むか、健康保険に自己負担金からの解放を交渉することもできる。例えば生活保護で生活している場合は、自己負担金から解放されることが多い。
また療養施設までの交通費にも補助金が出る。ここでも自己負担金は10ユーロまで。療養中に薬などが処方されると、これも一部のみ自己負担となる。
シングルマザー優遇
母(父)子療養はシングルマザー、あるいはシングルファーザーのほうが認可されやすいが、夫婦の場合でも認可される。
「じゃ夫婦一緒に療養に行こうか。」
というわけにはいかない。申請ができるのは、子供の面倒を担当している母か父の片親だ。お金持ち保険では、別の規定があるかもしれないが、国の健康保険に加入している場合は、そのような規定になっている。
肝心の療養先では、医師の診断を受けて、いろいろなコースに参加することになる。
「一日中、寝てテレビを見ていればいい。」
というものではいので、誤解されませんように。又、心身ともに子育ての疲れから回復できるように、子供の面倒を見てくる施設が存在しているので、子供のことを気にしないで療養に専念することができる。
あるいは育児に疲れ果てている場合は、一人で療養を受けることができる。療養期間中、自宅で子供の面倒を見てくれる人がいれば。
要勤務先との調整
母子療養を申請する前に、仕事をしている人は会社にあらかじめ療養休暇を計画中であることを告げよう。
見本市などを控えている場合は、
「頼むから、この時期だけは仕事をしてくれ。
」ということもあるから、会社側と療養に適した時期を相談しておいたほうがいい。
というのも療養は病気と同じ扱いになるので、会社は社員が療養中もお給料を払い続けなくてはならないからだ。しかも療養は休暇ではないので、休暇の日数とは別個にカウントされる。
厳密に言えばこの療養は病気治療にあたるので、社員が療養の申請をすると会社にはこれを拒む権利がない。
とはいっても会社は(最大)28日の有給休暇と(最大)28日の(有給の)療養休暇を認めなければならないのだから、せめて事前に会社に事前に連絡くらいはしておこう。
すると悪知恵が働いて、
「じゃ毎年療養休暇を取れば、実質まる2ヶ月、有給許可が取れる。」
と考える人がいる。そこまで健康保険は甘くありません。慢性的な障害で悩んでいる場合、リハビリ療養では2年おき、母子療養は4年おきに申請を上げることができます。