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ドイツ経済停滞 改革の秋が失望の冬に

投稿日:2025年12月3日 更新日:

ドイツ経済停滞 改革の秋が失望の冬に

ドイツ経済が成長率ゼロで停滞している。

加えて政府に対する国民の不満も日々、高まっている。

そこでメルツ首相が国民に約束したのが

「改革の秋」

だ。

が、巷では

「失望の冬」

と揶揄されている。

何がまずかったのだろう?

ドイツ経済 展望

この春先、政府がドイツ経済復活の為の巨額のインフラ投資計画を発表した。

巨額のインフラ投資計画 ドイツ復活なるか?

その期待は大きかった。

その告知だけで、景気期待予測は上昇し続けた。

ドイツ経済 もう底を打った?来るか景気回復!?

が、ここにきて経済回復への期待は頭打ち。

ドイツ経済の展望を測る

“ZEW Konjunkturerwartungen”

を観ると、

 

景気期待指数は

「夏の底値」

は脱しているが、頭打ち。

加えて2025年第三期の経済成長率は、0%。

2025年第三期の経済成長率

抜粋元 : tagesschau.de

 

あれほど巨額のインフラ投資計画にも拘わらず、景気期待指数さえ改善しないのは何故?

“Grabenkampf”(塹壕戦)

それは国民の心理、言い換えれば

「将来への不安」

が原因です。

国民が政府に対して一番

「がっかり」

する要素があります。

何だか、ご存じですか?

それは

政権内での覇権争いです。

 

例を出します。

2025年9月、経済大臣は年金受給を現行の67歳から70歳に引き上げる事を提唱。

 

しかし!

年金は経済省の管轄ではなく、社会保障省の管轄です。

 

言い換えれば、文部大臣が

「自衛隊にもドイツ製のかっこいい武装装甲車が欲しい。」

なんて言うようなもの。

気持はわかりますよ。

でもそんな

「勝手な提言」

をされた日には、防衛大臣は怒ります。

ドイツでも社会福祉大臣が即座に反抗、

「数百万の国民の老後を危機にさらすもの。」

と、その提案を一蹴した。

 

が、経済大臣は反対に遭って

「そうですか。」

と大人しく引き下がるような人間じゃない。

またメデイアを使って、社会社会福祉大臣を攻撃。

こうして誰も得をしない

「子供の争い」

が、永遠に続きます。

これをドイツでは

”Grabenkampf”(塹壕戦)

と言います。

1cm の土地を巡って、生死をかけて争うからです。

そんな場面を見せつけられる国民は、

「夫婦喧嘩」

を毎日、見せられる子供と一緒。

情緒不安に陥ります。

こうして将来不安を招き、同時に政府に対しての不満も募っていくわけです。

外交首相

国民の不満はそれだけじゃない!

ドイツ経済はすでに2年も縮小している。

普通なら首相に就任後、すぐにインフラ投資計画を実行に移して、

「景気の底上げ」

を測ります。

あの高市政権だって、就任から1ヶ月ほどで経済対策案を閣議決定。

まずは世の中に金を回して、国民の景気観を少しでも改善させようとしているんです。

もっとも肝心な財源がない。

そこでまた赤字国債を発行。

借金苦に悩む若者が、また別の借金をしてしのぐようなもの。

長期的な解決にはなりません。

でもお陰で政権の支持率は上昇。

一方、メルツ首相は

「巨額のインフラ投資計画」

は、ほったらかし。

最初の4ヶ月は外遊の旅に出たんです。

そこでついたあだ名が

“Außenkanzler”(外交首相)

です。

ドイツ経済が悲鳴を上げているのに

「記念撮影するために外遊」

している首相への非難を込めたあだ名です。

Stadtbild 論争

メルツ首相の支持率が

“Im Keller”(地下室まで落ちている)

のは外交首相に加えて

“Stadbild”(市街地の光景)

の軽率な発言も大いに貢献している。

氏はブランデンブルク州での講演で、

“Aber wir haben natürlich immer im Stadtbild noch dieses Problem und deswegen ist der Bundesinnenminister ja auch dabei, jetzt in sehr großem Umfang auch Rückführungen zu ermöglichen und durchzuführen.”

と語った。

和約するとこうなる。

市街地の光景に、まだこの問題がある。だから内務大臣は今、大規模な移民送還に取り組んでいる。

すなわち!

「外国人が居る市街地の光景は問題だ!」

 

と言ってるわけです。

その一方で日本の首相は、

「外国人は奈良の鹿を蹴る!」

と主張する人物。

共通点があります。

もし日本で同様の

「外交人叩き」

をすれば参政党、保守党、維新などから

「絶賛の嵐」

を受けるでしょう。

しかしドイツでこれをやると炎上します。

極右政党を除き、非難轟轟でした。

ドイツ経済 改革の秋

お陰でドイツ経済の景気観測は夏に減速。

同時に支持率も減速。

最近の世論調査ではメルツ首相は

「戦後、最も人気のなったショルツ前首相

に並ぶ人気度を記録。

右翼、左翼、中道派を問わず、国民の75%が首相の仕事ぶりに不満という結果がでた。

 

やっとここまで支持率が悪化して、メルツ首相にも

「マズイ」

とわかってきた。

そこでメルツ首相が告知したのが、

“Herbst der Reformen”(改革の秋)

だった。

 

まずは巨額のインフラ投資計画をやっと実行に移し、次に

「ドイツ経済の足かせになっている障害を取り除く!」

というわけだ。

ドイツ経済 失望の冬

で、メルツ首相が告知した

「改革の秋」

が今、どうなったと思います?

そう、

“Winter der Enttäuschung”(失望の冬)

と揶揄されています。

 

質問
何がまずかったの?

 

まずは予算争奪戦になりました。

とりわけ交通省はインフラ投資計画を盾に、

「150億ユーロの上乗せ予算」

を要求。

これに各大臣が総ブーイング。

そこで財務省が

「計画されている道路・橋の建設・整備にかかる総費用」

を計算してみたんです。

すると必要な費用は、30億ユーロの追加で間に合うことが判明。

そう、交通省は

「採れるものは全部、採っちまえ!」

と、5倍もの過大予算を要求していたんです。

お陰で予算審議が大幅に遅れ、2026年の予算成立は10月末にまでずれ込みました。

11月になってようやく

「巨額のインフラ投資計画」

の公募準備が始まる始末。

この遅れが原因で、ドイツ経済は今だに停滞しているわけです。

骨肉の争い 年金

2026年の予算が成立したら、今度は制度改革です。

しかしここでも

「塹壕戦」

が勃発。

質問
今度は何が原因?

 

年金です。

連立政府(CDU/CSU/SPD)は2031年まで年金率を

「法律で定めている基準よりも1%高く、48%に設定する。」

という内容で基本合意。

あとは年内に国会で賛成多数で決議すれば、

「改革の秋」

になる筈だった。

なのに

「ちょっと待った!」

をしたのは、CDU の

“Jungen Gruppe”(若年議員グループ)

だった。

彼らの意見では、

「そんな金は何処にもない!」

という。

かと言って、日本政府のように赤字国債を発行するわけにもいかない。

なれば

「他の箇所で削る。」

しか方策がない。

これが

「今、働いている世代の負担になる!」

と反対している。

 

一方、日本ではとりわけ若年層が高市政権を支持している。

しかし赤字国債に頼る経済対策は若者の

「将来の負担」

になるのを、わかっているのだろうか?

妥協案

本来であれば

“Fraktionschef”(国会議員団長)

が、こうした党内の不満を大事にならない前に火消しする。

しかし若年議員グループへの賛同の声も少なくなく、国会議員団長の手に負えなかった。

そこでメルツ首相が直接、交渉する羽目に。

その結果、

「”Rentenkommission”(年金調査会)を立ち上げて、抜本的な年金改革を実施する。」

という妥協案で、

「これ以上の反対はしない。」

との言質をとりつけた。

もっとも国会の議決で若年議員グループが

「賛成票」

ではなく

「棄権票」

を出す可能性もある。

そうなると改革案は過半数に達せず、来年に持ち越しとなる。

ドイツ経済 停滞から抜け出せる?

この他にも、

  • 暖房法改革
  • 電気自動車購入補助金導入
  • 内燃エンジン車の販売中止延期
  • 健康保険改革

など、政府が改革を約束した課題は盛りだくさん。

これらの宿題に春先から取り組めばよかったのに、現政権は10月末になってから始めた。

結果、もう12月だというのに、まだ何も決まってない。

だから、

「失望の冬」

と揶揄されているわけです。

これでドイツ経済が停滞から抜けだせるわけがない。

景気がわずかなりとも上向きするのは、来年になりそうです。

トランプがまた何かしでかさない限り、、、

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執筆者:

nishi

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