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エネルギー価格の高騰 原因は政治家のナイーブさにあり?

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エネルギー価格の高騰 原因は政治家のナイーブさにあり?

日本でも

「7年振りのガソリン高値!」

とメディアが騒いでいるが、ドイツを含む欧州ではエネルギー価格の高騰 はそんな

「かわいい」

程度では済まない。

ドイツではガソリンは、リットルあたり1.755ユーロ(225円)だ。

ドイツ人が日本に来れば、

「7年振りのガソリン高」

を見て、

「日本のガソリンはなんて安いんだ!」

と感激すること間違いなし!

しかし高騰しているのはガソリン代だけではない。

エネルギー価格の高騰 原因は政治家のナイーブさにあり?

これから必要になる暖房で消費されるガス、デイーゼルの価格も同じく高騰中。

ドイツのガスとデイーゼルの価格は

「日本の比」

ではない。

デイーゼルの価格は、

「過去最高高値」

の1.554ユーロを記録した。

すでに低所得層では、

「暖房か食事か」

の選択を迫られるほど状況は悪化。

政治家は国民の怒りをそらすべく、その対策に追われている。

大領領選挙を控えるフランスでは、ガス価格の上限が導入された。

参照 : kontrast.at

 

そこまでドラステイックな方法に訴える勇気のないドイツの政治家は、

「世界中でエネルギー価格があがっているのだから仕方ない。」

と言い訳。

エネルギー価格が高騰しているのは事実だが、ドイツのエネルギー価格の高騰の原因は、政治家のナイーブさに(も)ある。

エネルギー価格の高騰を招いた地球温暖対策

エネルギー価格の高騰を招いた地球温暖対策

欧州では発電所、及び家庭での暖房に天然ガスを多用する。

質問
何故ですか?

 

天然ガスは石炭に比べ、燃焼の際に出る二酸化炭素の量が少ないからです(*1)。

ドイツはその戦術的に重要な天然ガスの半分を、ロシアからの輸入に頼っている。

参照 : dw.com

 

本来なら一極集中を避け、供給先をもっと分散させるべき(*2)。

何故、ドイツは経済制裁をお互いに課しているロシアに依存する形になっているのだろう?

それは政治と経済の癒着が原因です。

ロシアのガス会社と言えば、国営のガスプロム。

そのガスプロムの株式51%を保有する

“Nord Stream”

にドイツの(元)首相が取締役員として就任している。

ロシアはこのコネをフルに利用、ドイツはロシアからの天然ガス供給に依存する形になった。

Nord Stream 2

Nord Stream 2

ロシアの天然ガスは、パイプラインでドイツまで送られてくる。

途上でパイプラインはウクライナやポーランドを通過している。

ウクライナやポーランドは土地をパイプラインの敷設に提供することで、

「通過料」

を徴収、これが国家財政の大事な柱になっている。

しかしロシアとウクライナは、未だに戦争しているほど、仲が悪い。

プーチン大統領にしてみれば、ウクライナに

「塩を送る。」

ことは避けたい。

そこでロシアはウクライナを通過せず、北海の海底にパイプラインを敷設、直接ドイツまでガスを送る

“Nord Stream 2”

の敷設を始めた。

これに

「待った!」

をかけたのがアメリカだった。

アメリカは米国産の液化ガスを売り込みたい。

しかし”Nord Stream 2″が完成すれば、

「ロシアの安いガス」

に液化ガスは勝ち目がない。

そしてドイツは、アメリカ産のガスには一向に興味を見せなかった。

するとトランプ政権は

「”Nord Stream 2″に関連する企業に制裁を課す。」

と発表、工事が中断してしまった。

超ナイーブなドイツの政治家

この時点で政治家は目を覚まして、ガスの供給先をもっと安全な国にふるべきだった。

産油国ノルウエーはもとより、隣国のオランダもガスの輸出国だ。

さらには地中海には膨大なガスの埋蔵量がある。

しかし電力会社から大口の政治献金をもらっている政治家は、

「ロシアは安定してガス供給を約束している。」

と主張、”Nord Stream 2″の完成に執着した。

結果、新しい供給先を開拓しないまま、無駄な年月が流れた。

するとバイデン大統領は

「条件付き」

で”Nord Stream 2″の工事再開を許可した。

その数か月後、”Nord Stream 2″は遂に完成した。

後はその使用許可を下すだけになった。

正体を現したプーチン

2020/21年の冬は寒かった。

ドイツのガス貯蔵庫は空っぽになった。

そこで価格の安い夏の間に、貯蔵庫を満タンにすべくロシアにガスの供給を依頼した。

しかしロシアにしてみれば、1セントたりともウクライナに金をくれてやる気はない。

ポーランドやウクライナ経由でのガスの供給を、目一杯減らした(*3)。

もっとガスが欲しければ、さっさと”Nord Stream 2″の使用許可を出せ!

との意図が丸見えだった。

結果としてガス価格は、欧州で爆発することになった。

間抜けなEUは急所を握られてから、

「ロシアが独占的な立場を悪用してないか調査する。」

と言い出した。

プーチンはこれを聞いて、笑いがとまらなかったろう。

「ガス不足で悩むEUに今更何ができる?」

というわけだ。

政治家がここまでナイーブでなければ(*4)、ガスの供給先を分散化してエネルギー危機を避けることができただろう。

しかし政治と経済が癒着しているが為、これができなかった。

自業自得だろう。

注釈

*1       石炭を燃焼して発電すると、高い金を出して空気汚染証券を買う必要がある。結果として、ガス発電のほうが安くあがる。

*2      オイルショックの教訓です。

*3     ロシアはもっと高い値をつけてくれた中国にガスを送った。

*4       経済封鎖を解除させたい北朝鮮が「朝鮮半島の非核化」と言い出すと、これを信じる日本の政治家も同じくナイーブです。

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執筆者:

nishi

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