ドイツの達人になる 投資

投資額全損! 銀行からお金は取り戻せるのか?

投稿日:2021年10月17日 更新日:

投資額全損! 銀行からお金は取り戻せるのか?

投資に興味があるが、どうしたらいいのかわからない。

そんな人が頼るのが

  • 友人のお勧め
  • 銀行

のどちらか。

ちょうど友人の勧めで

「暗号資産への投資で、数か月後には2.5倍になる。」

との大嘘を信じて投資額を全損するケースが報道されたばかり(*1)。

このケースではお金を取り戻すのは無理。

でも銀行員を信じて投資、投資額を全損した場合はどうなるのだろう?

銀行に投資相談

銀行に投資相談

他人を滅多に信用しないドイツ人でさえ、

「自分の知識なしで投資したければ、銀行に投資相談に行け。」

と真顔でアドバイスしてきます。

2007/8年サプライム危機でまさにその銀行は、紙屑となるリーマン証券を

「安全な投資」

として売りまくった。

投資額が全損とわかってからも、銀行は顧客への救済を拒否した。

まだお金が残っている人は銀行を訴えて、何年もかけて失った金を取り戻す事を迫られた。

この例が示すように、銀行がやっている事は投資詐欺グループがやっている事と大差ない。

唯一の違いは、その後の処遇。

民間詐欺グループは刑務所行き。

銀行員は金融証券を取り扱う免許を持っていたので、無罪放免。

何故、銀行員は客を騙すのか?

では何故、銀行員は客を騙すのだろう。

それは客にも責任の一端がある。

客は

「投資の相談は無料」

だと思っている。

しかし銀行はスーパーと同じで、客が商品を買ってくれることで初めて利益があがる。

朝から晩まで無料で投資相談を受けていて、

「考えてみます。」

という客ばかりだと、銀行員はこっぴどく叱られる。

そこで投資詐欺グループの頭、もとい、銀行の支店長は、

「手段に厭わずに実績を出せ!」

と部下に要求する。

ひとつも売れない(真面目な)行員には、たっぷりお説教が待ってます。

これが原因で

「明日には紙屑になる。」

とわかっている証券でも、銀行員は客はおろか、同僚にまで売りまくります。

その代表格が

“Margin Call”

として歴史に名を遺したリーマンブラザースの素行。

投資相談 記録義務

それでもリーマンブラザースの破綻は無駄ではなかった。

これまでは銀行での投資相談を受けると、

「リスクについて説明を受けました。」

という書類に客がサインすることになっていた。

だから投資した証券が翌日紙くずになっても、

「リスクについて承知していた。」

ので、損害賠償請求をすることが困難だった。

ところがである。

「毎年、利息が支払われる程度の安全な投資がしたい。」

という客にリーマンの投機的な証券を売る銀行員。

ひどいケースでは口座の開設に銀行に来た80歳の女性に、20年間の投資期間をもつ特殊な証券を売った行員もいた。(*2)。

この無法状態をみた監督庁は、やっと重い腰をあげて法律を改正した。

参照 : Bafin

法律改正により銀行員は投資相談の後に、

  • 客の資産状況
  • 客の投資に関する知識
  • 客の希望する投資タイプ(安全か投機的)
  • 勧めた投資商品のリスト
  • 投資リスクの説明
  • 銀行員への手数料

などを記した書類を手渡すことが義務化された(*3)。

これにより80歳の老人に、20年間の投資期間の証券を売ることはできなくなった。

ワイヤーカード証券で 投資額全損!

もしこれで銀行での投資相談が安全になったと思った方は、いい鴨です。

2019年12月、ある客が銀行で投資相談を受けた。

「ゼロ金利の時代に、定期的に利子が入ってくればいい。」

という保守的な投資を望む客に、銀行員はワイヤーカードの株価に直結した証券を売った。

2020年、ワイヤーカードは企業ぐるみの粉飾決算詐欺が明るみに出て、倒産した。

勿論、証券もその価値を失い、投資額全損の憂き目にあった。

客は銀行に対して損害賠償を求めたが、相手にもされなかった。

ドイツでは、

“Recht haben und Recht bekommen – zwei unterschiedliche Dinge.”

と言います。

意訳すると、

「自分が正しいからと言って、その言い分が通るかどうかは別の話。」

という意味です。

ドイツで自分の言い分を通すには、弁護士に頼るしかありません。

銀行からお金は取り戻せるのか?

そんなことはドイツ人なら

「誰でも」

知ってます。

このケースでも銀行に騙された客は弁護士に相談。

弁護士は上述の投資相談記録を証拠に、

「安全な投資を求めた客の要望を銀行は無視、(手数料欲しさで)リスクの高い投資を勧めた。」

と銀行に、投資額の全額補填と弁護士費用の支払いを求めた(*4)

果たして弁護士は、銀行からお金を取り戻せるのだろうか?

非を認めた銀行

結論から言えば、銀行は非を認めて和解金額を提示してきた。

騙された客はこの示談提供を受け入れて、裁判沙汰にはならなかった。

原告にとって有利に働いたのは、すでに2019年1月以降、ワイヤーカードに関する疑惑報道が複数回あった事。

株価はこの報道により、最高値より20%以上下げていた。

これを銀行の投資部門の人間が、

「知らなかった。」

と言うのは無理があった。

このように銀行が非を認めることは滅多にないが、今回だけは

「裁判になったら負ける。」

ことが明らかだったのが幸いだった(*5)。

銀行員を信用しては駄目!

この例が示すように、今でも銀行員が狙ってるのは、

「投資をしたい。」

と、葱をしょって銀行にやってくる鴨。

ドイツの法律を知らない日本人は銀行員にとって、

「鴨鍋をしょった鴨」

です。

絶対に信用しては駄目です。

注釈 –  投資額全損! 銀行からお金は取り戻せるのか?

*1 なんでこんなに簡単に騙されるんでしょうね?ドイツでは”Gier frisst Hirn.”(欲は脳を食う。)と言います。

参照 : yahoo.co

*2   船、コンテナ船の建造費用にあてる投資です。

*3   契約が成立した場合に限ります。客はこれをチェック、間違ってる内容があると修正を依頼しなくてはなりません。

これをしていないと、全損になっても補償はありません。

*4   要求に従わない場合、訴えますという警告付きです。

*5   ドイツでは裁判に負けた側が裁判費用、及び相手側の弁護士費用も負います。なので負けるとわかっている裁判をすると、銀行が支払う金額が増し、評判も落ちるので示談に繋がった。

-ドイツの達人になる, 投資

執筆者:

nishi

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