ドイツの信号政権が遂に崩壊した。
もっともドイツ国民や野党にしてみれば、
「やっと崩壊」
だろうが。
日本では正しく報道されることはないので、何が
「樽を溢れ差す一滴」
になったのか、紹介したい。
この記事の目次
信号政権 危機の連続
そもそも
「社会的弱者の生活改善を!」
を目的に掲げる社会民主党(SPD)と、
「お金持ちをさらにお金持ちに!」
と目的に掲げる自由民主党(FDP)の
「ウマ」
が合うわけがなかった。
それだけでも難しいのに、
「経済よりも環境保護!」
と謳う緑の党が加わって、うまくいくわけがなかった。
ただ
「新婚の頃」
は、政権を奪取した喜びでうまくいっただけ。
ところが2年も経つと、相手の嫌なところばかり見えてきた。
しかし大臣職を失うのは、痛い。
そこで我慢してやってきたが、
「金の切れ目が運の切れ目」
とはよく言ったもの。
国家予算にぽっかり空いた穴。
これをどう埋めるかで、信号政権の争いは頂点に達した。
借金ブレーキ法で揉める信号政権
と言われても、日本の皆さんは
「赤字国債を発行すればいいじゃん。」
と思われるだろう。
ドイツでは
「今の世代が借金して楽な生活、これを清算するのは未来の世代。」
という赤字国債の発行はよろしくないという意見が一般的。
そこでご丁寧に
”Schuldenbremse”(借金ブレーキ法)
を制定して、政府が自由勝手に赤字国債を発行できないようにした。
その
「借金は悪者」
と唱える旗手がFDPなのだ。
そもそも国家予算に占める最大の項目が社会保障費。
言いかえれば、穀潰し、もとい、社会的弱者に大金が浪費されるのが我慢ならない。
そこで
「社会保障費を削れ!」
と何度も主張してきたが、SPDがこれを呑めるわけがない。
言うだけ無駄。
なのにFDPの党首リントナー氏は、主張を修正するどころか、まるで野党のように政権批判を始めた。
何故だかわかるだろうか。
FDP基幹党員の憤り
事の発端は最高裁判所の
との判断まで遡る。
今更、2024年度の予算変更なんてできるわけがない。
そこで信号政権は借金ブレーキ法を2024年に限り
「一時停止」
することにした。
これにFDPの基幹党員が激怒した。
彼らは
「ごく潰しの為に、お金を無駄使いしている!」
と叫び、信号政権からの脱退を評決する始末。
もし2025年の予算も
「借金ブレーキ法が守れない。」
となると党内反乱は必至。
しかし景気停滞で社会保障費は増大。
ロシアの脅威に対抗する為、軍事費用の増額は避けられない。
さらに!
道路や橋はボロボロで、ドレスデンでは橋が崩落する始末。
インフラ整備をしないと死人が出るのは時間の問題。
結果、2025年の国家予算にも
「ポッカリ」
大きな穴が開いてしまった。
FDP 最後通牒!
2024年11月1日、リントナー財務大臣は信号政権のパートナーに
「経済成長を可能にする世代に公平なプラン」
という書簡を送った。
この書簡でFDPは、
「ドイツ経済を再び成長軌道に乗せるには、この秋にこれまでの誤った経済政策からの回帰が必要である。」
と主張していた。
言い換えると、
という最後通牒だった。
この書簡はSPDと緑の党の責任者だけ送られた。
マスコミには一切、知らせることはしなかった。
ところがで
「あっ!」
という間にマスコミに漏れた。
明らかに書簡を見た誰かが、
「リントナーの振る舞いを世間に知らしめよう!」
とマスコミに垂れ込んだ。
信号政権 遂に崩壊 悪者は誰だ!?
こうして首相官邸で信号政権の緊急会合が行われた。
この会談でショルツ首相は、
「経済停滞により税収入が減るが、出費は増える一方。2025年も借金ブレーキ法を順守することはできない。」
と明言、リントナー財務大臣に翻意をうながした。
が、そんな煮え湯を氏が飲めるわけがない。
飲んだら、明智光秀になる。
リントナー氏が首相の頼みを拒絶した為、ショルツ首相は財務大臣の解任を伝えた。
“Das war’s.”(これで終わり)
というわけだ。
するとこれに怒った(前)財務大臣はFDP閣僚に
「即刻辞任」
を要求。
こうした3年間続いた信号政権は遂に潰えた。
よく3年ももったものだ。
選挙戦開始!ショルツ首相 怒りをぶちまける!
傑作だったのは、リントナー財務大臣を解任した後のショルツ首相の声明発表。
普段は、
「薄笑いを浮かべているだけ」
の首相、本当に怒っていた。
主な非難の内容は
- FDPは党の利益の為に国の政策をブロックし続けた
- 内閣で話し合う内容をマスコミに流してテレビ討論に発展
- 財務大臣は度々前言を翻し、寄せていた信頼を裏切った
の点に集約される。
最後にショルツ首相
「こんな人物とは働くことは不可能であった。」
と財務大臣をボロボロにこき下ろした。
まるで過去3年のうっぷんを、この5分間で晴らしたようだった。
もっとも総選挙を控えての
「選挙運動」
の一面もあっただろうが。
総選挙はいつ?
ようやく信号政権が
「歴史」
となった今、さっさと総選挙をして次の首相を選出してもらいたい。
さもないと、これからドイツはあのトランプと交渉しなくてはならないのだ。
しかし
「今、総選挙をしたら負ける。」
とショルツ首相は100も承知。
そこで
「信任投票を1月に、総選挙は3月末に」
と先送りするつもりだ。
しかこれに野党は黙っていない。
まだ2025年の国家予算は成立しておらず、ウクライナではプーチンの戦争が
「大事な局面」
を迎えている今、来年まで決定権のない首相では
「子供のお使い」
もできない。
野党は政策協議を拒否して、
「1月中の総選挙」
を要求している。
国会で過半数を欠く政府、おそらくは
「年内の国会解散」
を呑む事で
「最重要課題」
だけでも野党の賛成を受けて国会で議決することになるだろう。
総選挙の日程決定
野党(CDU)は当初、
「首相は来週、信任決議を!」
と要求を掲げ、
「それまで法案協議の協力はしない。」
と言い張った。
ところがである。
あの仕事の遅いドイツでは
「年内の総選挙」
なんて無理。
投票用紙の印刷から投票所の開設まで、2ヶ月では準備できない。
そこで野党は
「12月の信任決議、2月の総選挙」
に方向転換。
ショルツ首相もこれを呑み
- 12月11日の信任決議
- 2月23日の総選挙
という妥協案で合意した。
2月の選挙後、連立政権の話し合いに1ヶ月はかかる。
すると新政権の発足は4月。
それまで喫緊の課題である国内産業救済案は、先延ばしになるのだろうか?
お先真っ暗~。
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