ロックダウン解除の切り札 コロナ即席テスト 登場!
ドイツでは2020年11月からロックダウン中。にも拘わらず、上昇を続けるコロナ新規感染者数。
5度目のロックダウン延長が決まり、5か月目に投入した。
これ以上のロックダウンには産業が持たないので、
「感染者数が35人/10万人以下になったら緩和する。」
という約束を反故にして、政府は68人/10万人という感染状況にも関わらず、一部店舗の営業再開を許可した。
その際の免罪符(理由付け)として採用したのが、ロックダウン解除の切り札 コロナ即席テストだった。
この記事の目次
ロックダウン解除の切り札 コロナ即席テスト 登場! とは?
即席テストという名の通り、15分から20分で結果がわかる。
このテストは”für Laien”(素人用)と呼ばれ、訓練された人員の手助けなしで、自宅で誰もが簡単にテストできるのが特徴だ。(*1)
日本でコロナ即席テストと言えば、抗体の有無を検査するコロナ即席テストを指す。
抗体テストでは、
「過去にコロナにかかったかどうか。」
がわかる。
今、ドイツで導入が始まったコロナ即席テストは、コロナウイルスのたんぱく質に反応するので、
「今、コロナに感染しているかどうか。」
がわかる。
しかし日本政府は、
「精度が低い。」
と、このコロナ即席テストを導入する事を拒否している。
しかしコロナ即席テストを開発したジーメンスの研究結果では、なんと97%を超える的中率。
参照 : www.siemens-healthineers.com
使い方も、
「素人用」
と言うだけあって簡単。
ドイツ政府が、ロックダウン解除の切り札として投入したのも無理はない。
無料で コロナ即席テスト
ドイツ政府、正確には厚生大臣は、
「3月1日より国民は週一回、コロナ即席テストを無料で受けれる。」
と宣言した。ところがこの時点で厚生大臣は、十分な数のコロナ即席テストを確保できるという確証もないのに、
「手柄」
欲しさに先走りした。
公言してしまってから、
「とてもじゃないが、数がまるっきり足らない。」
と言われ、宣言をした数日後には、
「(ロックダウン延長後の)3月8日から。」
と修正を迫まられた。
ところがである。3月8日になっても、コロナ即席テストの数は情けないほど不足しており、多くの自治体では入荷待ち状態。
この日から全国で入手が可能になったのは、ドイツ大手の安売りスーパーのアルデイ/Aldi だけ。
ドイツ国民は
「無料でコロナ即席テストを受けれる。」
という厚生大臣のオファーを無視、朝の6時からアルデイの前で行列を作ってコロナ即席テストを手に入れようとした。(*2)
開店からわずか数時間で売り切れたコロナ即席テストは、5セット入りで25ユーロ(付加価値税19%込み)という、日本では信じられないような安価な価格だった。
これに怒ったのが、メッケンブルク州の州知事だ。
厚生省に市民のコロナ即席テストを注文していたのに、ほとんど届かなかったからだからだ。
州知事は、
「厚生大臣は約束したコロナ即席テストを届けることができない一方で、アルデイなどの安売りスーパーでは二束三文で売っている。」
と、その不満をぶちまけた。
原因究明
コロナ即席テストの調達が遅れた理由は、EUがコロナワクチンの調達で遅れた理由と同じ。
コロナ即席テストは医療用品なので、該当官庁の認可が必要です。
1週間ロックダウンが続けば、億単位の金が失われるので、
「緊急認可」
すればいいのに、1ヶ月もかけて通常の認可申請。
現在、50を超えるコロナ即席テストが認可申請を出していますが、3月8日までに認可されたのは中国製のテスト2つと、ジーメンスのテストだけ。
一方、オーストリアではすでに去年の11月からコロナ即席テストを導入、国民に無償で提供している。
今や数え来れないほどのコロナテストキットが存在している。
すでにオーストリアでその効果が確かめられたのだから、ドイツでも緊急認可申請をすればいいのに、ドイツの厚生省は通常の認可手続きに固執した。
テストの効果は限定的?
時間はかかるだろうが、3月末になればコロナ即席テストは(ほぼ)十分な数が確保できているだろう。
しかし肝心の問題は、
「コロナ即席テストの導入で、新規感染者は減るのか?」
という点だ。ここでも参考になるのは、ドイツの先を行って去年からコロナ即席テストを導入したオーストリアの感染状況だ。
3月10日の時点で、オーストリアの新規感染者数は(ドイツ同様に)上昇中。
ドイツでは人口10万人あたり、68人の感染者数に対して、オーストリアでは183と、ドイツのほぼ3倍。
参照 : orf.at
オーストリアは感染者数が減る前に辛抱できず、ロックダウンを解除して、店舗の営業を再開している。
一方、ドイツは5ヶ月目のロックダウン中。
という状況の違いはあるものの、オーストリアの状況を見る限りコロナ即席テストが新規感染者数を抑える効果は、見えてこない。
ドイツ政府はコロナ即席テストをロックダウン解除の新兵器として翠帳しているが、役立たず/ Rohrkrepierer になるかもしれない。(*3)
注釈
*1 それでも一人で出来ない場合は、訓練を受けた薬局の従業員により、テストをすることができる。費用は国が負担。
*2 ドイツでも国の仕事は遅いです。官僚的な考え方しかしない(できないので)為です。その一方、儲けが目的の民間は仕事が早いです。今回も国が失敗した調達を、デイスカウントスーパーが成功。
*3 Rohrkrepierer とは砲身の中で爆発してしまう砲弾の事で、期待していたのに、全く役に立たないものの代名詞として使われる。
参照 : de.wikipedia.org