ドイツの達人になる 詐欺、盗難

ドイツ版オレオレ詐欺 – 社長詐欺 & 警察詐欺

投稿日:2018年8月15日 更新日:


社長は中国に出張中?

日本で未だに猛威を振るオレオレ詐欺。ドイツでは日本式のオレオレ詐欺が通用しません。国民性の違いもありますが、お年寄りになっても頭脳明晰なので、ひっかるひとがまず居ないです。

しかしそのドイツ人でも騙されるドイツ版のオレオレ詐欺 – 社長詐欺が流行っています。こちらのページの定期購読者にはドイツで働いている方が多いので、今回はドイツで人気の法人詐欺を紹介します。

ドイツ版オレオレ詐欺 – 社長詐欺 CEO-Betrug

詐欺の名前は”CEO-Betrug“、英語の表現を使って “CEO-Fraud“(社長詐欺)、あるいは “Fake President” とも呼ばれる。ドイツ語でぐぐれば、この社長詐欺の例が多く表示されるので、どのくらい流行っているか、よくわかります。ある機関がこの社長詐欺に関して、無差別に選抜した500のドイツ企業に問い合わせたところ、なんと40%の会社がそのような「お誘い」を受けたという

参照元 : Handelsblatt

この詐欺がまだ「目新しい」頃、有名な会社が4千万ユーロも騙し取られた例がある。

参照元 : Spiegel

おそらくこれが「真似」をする輩を誘発した。最近では企業も社長詐欺対策を導入、100万ユーロを超える送金には、上司の承諾が必要とした。そこで詐欺師は詐欺の額を1億ユーロ未満に下げた。これが大成功。被害の上昇が止まらない。

中小企業はこの社長詐欺に遭っても、被害届を出さないことが多い。被害届を出してもお金が戻ってくるわけではなく、恥をさらすだけの結果に終わることが多いからだ。とりわけ面子を最優先する日本企業などは、この社長詐欺に遭っても警察に届ける事はないだろう。だから実際の被害例は、報告されている件数よりもはるかに多いと見られいる。

詐欺道具

社長詐欺に必要なのは、お金を受け取る銀行口座、インターネット、それにメールアドレスだけ。今時、これをもっていない人物を見つけるのが難しい。簡単に詐欺が出来て、大金が儲かるとなれば、誰もが真似をするのは無理もない。足がつかない銀行口座は、香港で”HSBC”に口座を開けばいい。

詐欺方法

では、肝心要の詐欺の方法を紹介します。まずはお金をもっていそうな会社を探して、会社のウエブサイトから経理の担当者の名前とメールアドレスをゲットしよう。ウエブサイトに載っていない?全く、問題ありません。会社の受付に電話、「貴社から弊社の口座に振込みがあったが、何かの間違いじゃないかと思う。」というだけ。すると経理に繋いでもらえるので、相手の名前とメールアドレスを聞くだけ。

一ヵ月後、「○○さん、今、中国に来ているんだが、すごくいい話があった。買収するために現金が必要だ。どのくらい会社の口座に残っているか調べてくれ。」と経理の担当者にメールを送ります。言うまでもなく、送ったメールが会社の社長のメールアカウントに見えるように工作しておくこと。今時の高校生でもできちゃいます。「話がもれたら、おじゃんになるので口外厳禁。」と書くのもお忘れなく。

このメールを受け取った経理は、「おかしい。」と思わないで、「社長自ら、私を名指しで呼んでくれた!」とすっかりハッピー。会社の口座残高を確認して、「社長」に返信。すぐに社長から返事が来て、「この口座に100万ユーロ送ってくれ。」と指示が来る。経理は銀行に行き、指示されたとおりの送金を指示。お金は広大な中国大陸のどこかに消えてしまう。

「騙された。」と気がついた経理の方の感情は、察するに余りある。「なんで上司に相談しなかったのだ。」、「なんでおかしいと思わなかったのか。」と散々非難されて、最初の警告をいただくことになる。「いい仕事をして自分の能力を見せたい。」といういい社員の前向きな態度を利用する絶妙な詐欺なので、被害が後を絶たない。

銀行が悪い?

この社長詐欺で170万ユーロを騙し取られた中小企業が、「銀行が送金を止めるべきだった。」として銀行に損害賠償請求を上げた。銀行がこれを拒否したので、裁判になった。原告側は、「経理には170万ユーロもの送金を行なう権限を持っていなかった。彼女が送金を指示しても、銀行はこの点を指摘して、送金をストップすべきだった。」と主張した。一方銀行は、「送金の依頼を受けたら、これを実行するのが銀行の仕事だ。」と責任を拒否。

判決が注目されていたが、カールスルーエの地裁は周囲を驚かせたことに、銀行側の落ち度を重大と判断、この銀行に170ユーロを払うように命じた。

参照元 : Handelsblatt

この判決は銀行業界にアラームを鳴らした。この判決が最高裁でも認められた場合、銀行は過去に起きた、将来に起きる社長詐欺の被害総額を負う事になるからだ。

警察詐欺

この機会にもうひとつ似たような詐欺を紹介しておこう。カテゴリーは社長詐欺の分野に入るのだが、その不法は全く別物。

詐欺方法

個人ではなく、会社にウーベ ベッカーと名乗る人物から電話がかかってくる。首相府で働いており、海外で誘拐されたドイツ人の人質を解放する資金を調達中だが、4千万ユーロ足りない。「あなたの会社から幾らか払えないか。」という見えすぎた詐欺だが、それも被害者が出てる。ドイツ人人質を助けようという善意を悪用したひどい詐欺で、ドイツの検察庁もホームページで警告している

参照元 : BKA

詐欺対策

警察は社長詐欺の予防手段として、一定の額を超える送金には同僚、あるは上司の了解を必要するシステム、通称、”Vier-Augen-Prinzip”(4つの目システム)の導入を奨励している。二人で送金を監視すれば、どちらかがおかしい気づく可能性が高いからだ。しか社長からのメールで、「誰にも言うな。話が漏れたらおじゃんになる。」という注意がこれが機能しないケースも多い。

 

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執筆者:

nishi

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