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消費者に優しいドイツのネット通販 Widerufsrecht / 解約権

投稿日:2014年7月13日 更新日:


インターネットに客を取られて営業不振のデパート

日本に帰国した際、会社の備品から始まって、テレビ、洗濯機、冷蔵庫、ありとあらゆる家具、家電をインターネットで注文。田舎に住むと、近くに店舗がないためです。ドイツで身についた習慣で、返品について契約条件をチェック。するとインターネットで注文した商品は、「返品不可。」という場合が通例。

返品が可能なケースでも、その送料は消費者が負担する事になっている!日本でも消費者の権利がドイツと同じくらい保障されていると思ったので、これはショック。

今回は消費者に優しいドイツのネット通販について紹介します。

消費者に優しいドイツのネット通販 Widerufsrecht / 解約権

ドイツではインターネットで注文した商品は、CD、DVD、食料品などを除き、返品可能です。開封したあとでも。というのもネットでは写真しか見れません。実際に商品を手にとって見ることができないので、2週間の返品期間が法律で認められているわけです。

品物を返品すると契約の解消になり、これを”Widerruf”と言います。ドイツではこの権利(”recht”)が消費者に認められており、この2週間の契約を解消する権利を”Widerrufsrecht”と呼びます。

(ドイツの)アマゾンなどはこの契約の解消権利をなんと1ヶ月まで提供しています。何という太っ腹。以前、固定電話機を注文。ところが使い勝手が悪い。構造上の問題で会話が聞き取りにくいんです。自然に受話器を耳に押し付ける事になり、耳が痛い。4週間使用した後で、アマゾンに返品。ちゃんと受け取ってくれ、全額返却されたから凄いです。

返品条件

ドイツでは40ユーロ以上の商品(送料抜き、消費税込み)を返品する場合は、「店が返品代金を負担。」という消費者には夢のような権利があるので、「お店はこれで会社が運営できるのか。」と不安になります。インターネット販売での返品率は平均50%と言われています。返品になりやすのは衣服、装飾品で、なんと2/3が返品になるが、家具は10%程度だという。これらの品が返送になることをあらかじめ計算して販売価格を決める。

消費税19%のドイツでは、商品の値段は高いに違いない。と思ったら実際には逆でした。例えばドイツで使用していたエスプレッソマシーン、送料、19%の消費税込みで90ユーロ。同じ物を日本で買うと、値段は1万8千円。日本ではドイツに比べ40%も高いです。別の言い方をすれば、日本の小売店はドイツに比べて40%以上も利鞘が高い。それなのに商品の返品は不可能。可能な場合でも消費者が送料を負担するという、消費者に不利な環境ある。

返品された商品の行方

話は変わりますが、返品された品物が一体、どのようになっているかご存知だろうか。開封、使用された品物も多く、これを新品として販売する事は難しい。さらには20~30ユーロ程度の品物をわざわざ中央管理倉庫まで返送して、ここで管理すると、返品管理にかかるコストは商品の代価を超える。

そこで大手の業者は返品された商品の中身を確認すると、返品専門の業者に処理を委託している。この業者は値引きされた価格で商品を大量に買い入れると、中古品として販売する。業者にしてみれば儲けはないが、売れない商品を一括して処理できて、少なくても赤字が回避できる。

アマゾンやオットーなどのような大手はそのような措置が可能であるが、インターネットで商品を販売しているのは、何も大手ばかりではない。在宅で営業している零細な販売業者が無数に存在している。こうした業者は返品が届くと、売れない在庫が増え、このままでは赤字である。

そこでこれをEbayで売るが、返品費用まで払っていると赤字になる事が多い。現行の法律、40ユーロの商品では販売は、会社の死活問題だ。その零細業者に、よりによって不必要な規制を課すことで有名なEUが、救いの手を差し伸べた。

欧州全域で共通な返品のルール

ドイツで一般消費者に優しい契約解消は、欧州で共通した規則ではなく、ドイツのみの規則。そこでEUは「加盟国全域で有効な規則が必要だ。」と考え、欧州全域版の契約解消の規則を導入した。

この規則は6月13日から施行されているので、すでに体験された方もいるかもしれない。新しい規則では、商品の値段に関わらず返品は基本的に有料となった。さらにこれまでは契約解消の理由を述べる必要はなく、商品を返送するだけでよかった(理由を述べたければ述べても良かった)。

今回からは返品の理由が必要になる。これに記入しないで商品を返品した場合、消費者が規則を守っていないので、業者は返品を拒否する事ができる。そして返品できる期間は消費者が品物を受け取ってから14日間となっている。さらに業者は、「返品された品物を受け取ってから、2週間以内に返金すべし。」となった(これまでは30日)。

この規則の変更により、零細業者の多くは、すでにAGB(利用規約)を書き換えている。アマゾン、オットーなどの大手は、一定額以上の商品の場合、無料での商品の返品を提供するそうだ。無料返品の境界線が従来通り40ユーロであるか、それとも場合の80ユーロになるか、それは業者が自由に決められるので、消費者がこれにとやかく言う権利は無い。

日本の消費者は契約規約を読まないで、注文する事が多いようだ。日本でこの調子なら、ドイツ語で書かれているAGBを読む人はほとんどいないだろうから、返品の融通が利く大手のインターネットショップを利用したほうがいいです。

オンライン販売戦国時代

話は少し横道に逸れますが、ドイツでも楽天のように自社では販売しないで、販売のプラットフォームだけ提供して業者に出展させて手数料で儲けている会社がある。代表的なのはEbayですが、Rakuten や MeinPaket.de なんてプラットフォームもあります。ここを利用すると確率でトラブルになる可能性が高いです。

上述のアマゾンなどからの返送品を安く買い入れて、「新品」として販売する輩、堂々と中国製の偽物を本物と称して送ってくる輩、全く違う(安い)商品を平然と送りつけてきて、「同じメーカー品だ。」という輩が目白押し。ドイツのアマゾンのマーケットプレース同様に危険が高いので、「弁護士保険に入っています。」という人でなければ、「ここは安いから。」と冒険しないほうが身のためです。

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執筆者:

nishi

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