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プーチンの戦争にウクライナが勝利するシナリオ

投稿日:2023年1月7日 更新日:

プーチンの戦争にウクライナが勝利するシナリオ

独裁者プーチンが、

「旧ソビエトの再建」

を夢見て始めたウクライナ侵攻。

ヒトラーが

“Lebensraum”(自給自足経済圏)を求めてソビエト侵攻に侵攻したのと、理由はほぼ同じ。

皆までいえば、日本が大東亜共栄圏という名目で侵略を始めた理由とも、ほぼ同じ。

同じなのは侵略理由ばかりではない。

まずは奇襲攻撃で広大な領土を占領、その後反攻に遭い、占領地を失い続けるという戦争経過も同じ。

「歴史は繰り返す。」

ものなら戦史から戦争の行方、とりわけ

「プーチンの戦争にウクライナが勝利するシナリオ」

を考察してみよう。

戦争初期の大成果

1941年春。

ヒトラーがソビエト侵攻を計画していることは、ソビエトの諜報部にはほぼ筒抜けだった。

300万人もの兵隊のソビエト国境への移動を、秘密にできる筈もなかった。

が、スターリンにはヒトラーがソビエトを侵攻してくるとは想像できなかった。

「ソビエトがドイツに輸出している原油なくして、どうやってドイツは戦える?」

と、諜報部の警告をすべて無視した。

お陰でドイツ軍の奇襲は大成功。

モスクワ以西の領土は、レニングラードを除き、ドイツ軍に占領されてしまった。

ドイツ軍は1942年に南部で攻勢をかけてさらに占領地を広げたが、以後は敗戦まで撤退に次ぐ撤退。

すなわち!

ソビエトは奇襲攻撃で失った領土を4年かけて取り返し、最終的にはヒトラーに勝利した。

 

ウクライナ侵攻でも、ロシア軍は奇襲攻撃で広大な地域を占領した。

が徐々にウクライナ軍がロシア軍を押し返し、領土を取り戻している。

これが独ソ戦と酷似している。

が、大きく異なる点もある。

それはかってソビエトがベルリンを占領して国会議事堂にソビエト国旗を掲げたような、

「完全勝利」

はあり得ない事。

ではウクライナがプーチンの戦争に勝つシナリオとは、どんなものになるだろう。

日露戦争タイプ

一番好ましいウクライナの勝利が、日露戦争タイプの勝利だ。

日本では、

「日本は日露戦争で勝利した。」

と教えられる。

が、実際には

「戦勝」

とは程遠い状況だった。

交渉の場で日本側は、戦争賠償金を要求した。

が、ロシア側はこれを拒否。

それどころか、

「何だったら、戦争を続けてもいいぞ。」

と脅してきた。

小村寿太郎がこれを日本政府に伝えると、

「賠償金は要らないから、すぐに終戦協定にサインして!」

と返電が来た。

これが日本史では

「日本の勝利」

となったわけだ。

もしロシア側があと半年戦争を続けていれば、日本は破産して戦争に負けていただろう。

このように実際の戦争では勝つ見込みがないが、

「交渉で勝つ」

のが日露戦争タイプの勝利。

必修条件

この日露戦争タイプの勝利に欠かせないのが、

  • 日本海海戦の勝利
  • 旅順要塞の奪取

に匹敵するウクライナ軍の大きな勝利だ。

さもないとロシア側には、停戦協議に乗ってくる利点がない。

ではどうすれば、ロシア側が停戦協議に乗ってくるだろう?

そのひとつがクリミア半島の奪取だ。

プーチンがウクライナ侵攻なんぞ命令しなければ、非合法の占領ではあってもロシアはクリミア半島を実行支配できた。

これが失われると、

「お前がウクライナ侵攻なんぞ命令するからだ!」

とプーチンの立場が危うくなる。

プーチンは保身の為にも、ウクライナと停戦を真面目に協議する必要が出てくる。

もっとも現在のウクライナ軍の装備では、クリミア半島の奪回は遠い夢、、。

ドイツの第一次大戦敗戦タイプ

ドイツの第一次大戦敗戦タイプ

次に好ましいウクライナがプーチンの戦争に勝つシナリオがコレ、ドイツの第一次大戦敗戦タイプだ。

皆さんは第一次大戦がどうやって終結したか、ご存じだろうか?

1917年、ロシアはドイツと講和条約を結んで、戦線から離脱した。

ドイツ軍は東部戦線に配置していた兵を西部戦線に移して、

「一気に決着をつける!」

と攻勢に出た。

が、これも成功せず。

それでも参謀本部は、

「一億総玉砕!」

と戦争を継続しようとした。

が、キールの水兵が、

「やなこったい。」

と反乱を起こした。

 

これがドイツ全土に広がり、

「戦争はもう辞めろ!」

と市民も軍部に抵抗。

こうしてドイツは白旗を挙げる事を余儀なくされた。

必修条件

ドイツの第一次大戦敗戦タイプが実現するには、

  • 兵士が命令遂行を拒否
  • 市民の反戦運動の高まり

という必修条件がある。

面白い事に召集兵はすでに、上官の命令に従うことを拒否している。

戦闘意欲が高くない召集兵が前線に配置されると、

「厭戦ムード」

は、コロナのように職業兵士に空気感染する。

古参兵まで厭戦ムードに感染すれば、もう戦闘は続けられない。

加えてロシア国内では10万人に上る戦士・戦傷兵で、戦争継続ムードはすでに落ち目にある。

この傾向をさらに加速させるため、ウクライナ軍は一人でも多くのロシア兵を

「戦闘不能」

にする必要がある。

もっともこれには時間がかかる。

ドイツ人は開戦時、

「早く行かなきゃ、俺が行く前に戦争が終わっちゃう!」

と戦争に熱狂していた。

そのドイツ人が

「もう戦争は辞めろ!」

と180度の方向転換をするまでは、5年の戦争が必要っだった。

ちょうどロシア国民も

“Z”

の文字をあちこちに掲げて戦争を歓迎している。

この国民が意見を変えるには、個人的な生活の困窮か身内の戦死・戦傷者が必要だ。

又、例外もある。

日本人は中国侵攻から数えると、10年以上戦争状態。

末期には二発の原子爆弾をくらい、満州はソビエト軍に席巻され、

「次は北海道か?」

という状況でも降伏を拒否、天皇の玉音放送を阻止するクーデターも計画したほど。

狂信的な国民が相手だと、ドイツの第一次大戦敗戦タイプは実現しない。

ベトナム戦争型

三つ目のウクライナがプーチンの戦争に勝つシナリオは、ベトナム戦争型だ。

軍事力、経済力、すべての面で北ベトナムに格差で優る超大国のアメリカが、ソビエトの後押しを受けた北ベトナムというちっぽけな国に負けた。

そもそも皆さんは、何故、米国がベトナム戦争に負けたのか存じだろうか?

敗戦の原因は

  • 敵の過小評価
  • ベトコンのゲリラ戦略
  • 米国民の厭戦ムード

にあった。

米国は戦争初期、

「赤子の手をひねるようなもの。」

と戦力を小出しにした。

そして劣勢になる度に戦力を増強するという、一番まずいパターンで戦争を長引かせた。

これが北ベトナムに戦争体制を完成させることを可能にした。

又、同じベトナム人なので、敵のベトコン(北ベトナム兵士)と友軍の南ベトナム兵士の区別がつかない点も、戦争遂行を困難にした。

ベトコンは私服に着替えると、戦線の背後で破壊工作を行った。

そして戦争が長引くと徐々に厭戦ムードが広がり、国民はベトナム戦争に反対。

米国はベトナムから撤退するしかなかった。

必修条件

ベトナム戦争型が成立するシナリオだが、すでに現在の状況は当時のベトナム戦争時と酷似している。

ロシアはウクライナを過小評価して、

「キエフ占領」

に集中しないで、各方面に兵力を分散。

兵力が足らなくなると、招集令で兵士を補充。

結果として戦闘の長期化を招いた。

又、ウクライナ人とロシア人は同じスラブ人で、区別できない。

ウクライナのパルチザンは占領地域ばかりか、ロシア国内でも破壊活動を遂行している。

そして銃後(ロシア国内)では、子供や父親を失った家族から、

「戦争を一刻も早く辞めて!」

という要求が上がっている。

プーチンが招集した

「30万人の召集兵」

が消費され、

「兵隊が足らない!」

とさらに招集をかければ、厭戦ムードはさらに高くなる。

そして2024年9月にはロシアで総選挙がある。

勿論、西側諸国のような公正なものではないが、まだ選挙があるだけマシ。

これで敗戦を避けるため、プーチンは2023年中に戦争を終わらせようとするだろう。

が、西側がウクライナへの戦車の提供を決めた今、

戦闘でロシアがウクライナに勝つのは難しい。

残る道は停戦交渉しかない。

もっともベトナム戦争は、終結まで10年も続いた。

ウクラアイナ侵攻が10年続けば、流石のロシア国民でも意見を変える。

が、この戦争が10年も続くとは思えない。

Es sei denn, ロシアによる2014年のクリミア占領を

「ウクライナ侵攻」

の最初に年にカウントすれば、2014年で戦争は10年目を迎えることになる。

例外のシナリオ プーチンの失脚

ウクライナの勝利を語るなら、避けては通れないのがプーチンの失脚だ。

戦況の悪化と共に、プーチンの求心力は低下しつつある。

今後、さらに戦況が悪化すれば、プーチンの後援者はいつまでプーチンに忠誠を尽くすだろう?

とりわけロシアでは、君主の暗殺が伝統となっている。

さらにプーチンの失脚に

「プラス材料」

となっているのが、その時期。

皆さんはベルリンの壁の崩壊が、

のいつの時期に起きたか、ご存じだろうか。

そう11月の寒くて暗い時期。

ロシアのアレキサンダー二世が暗殺されたのは3月。

ルーマニアの独裁者が失脚、即刻死刑になったのは12月。

キールで水兵の反乱が起きたのは11月。

そしてウクライナで民主化運動が起こり、新ロシア政権が崩壊したのは2月。

みなまで言えば、ロシア革命でツアーが権力から転げ落ちたのも2月。

何故か、暗くて寒い時期に政変・革命は起きる。

これから3月までが、プーチンの正念場になるだろう。

もっともこれまでの歴史を見る限り、戦争中に君主なり独裁者が暗殺されたケースは、かなり稀。

実際、ヒトラーは30回を超える暗殺を生き延びた。

スターリン、毛沢東も同じく。

この為、プーチンの失脚は可能性として存在しているが、現実となる可能性はそれほど高くない。

朝鮮戦争のパターン

プーチンの戦争にウクライナが勝利するなら、この4つのシナリオのひとつに近い形になるだろう。

プーチンがウクライナに完全勝利するというオプションが現実的でない今、残るオプションは両軍痛み分け。

戦史で言えば、朝鮮戦争のパターンだ。

ただこのパターンになると、戦争は2023年には終わらない。

戦史を見る限り、米国、あるいはソビエトからから全面支援を受けていたフルスケールの戦争が、1年で終わった例はないからだ。

輝かしい例外はイラク戦争だが、それはイラクは全世界から孤立していたから。

そう考えるとプーチンの戦争は、最低でも2024年まで続くことになりそうだ。

そんな事態にはなって欲しくないので、ドイツはけちけちしないで早く主力戦車をウクライナに提供して欲しい。

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執筆者:

nishi

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