ドイツの政治 ドイツの最新情報

ドイツ ウクライナに武装装甲車の提供を決定!

投稿日:2023年1月11日 更新日:

ドイツ ウクライナに武装装甲車の提供を決定!

ロシアによるウクライナ侵攻後、

「軍事支援としてヘルメットを提供する。」

と発表、世界から嘲笑されたドイツ。

大恥をかいてから、武器提供に方向転換。

もっとも、

「頑として」

戦車提供を拒絶していたドイツ。

そのドイツが、ロシアによりウクライナ侵攻からほぼ11ヶ月経って

「武装装甲車をウクライナに提供する。」

と、また方向転換。

どうしてこれまで戦車の提供を拒絶していたのか、そして何故、今になって心変わりをしたのか解説しよう。

戦車の運用方法

戦車を発明したのはイギリス。

そのイギリスやフランス軍では、

「戦車は歩兵の前進を補助する車両」

という位置づけだった。

戦車だけで作戦を遂行するなんぞ、

「あり得ない」

というのが当時の考え方。

その

「あり得ない事」

をやったのがドイツ軍の

“Panzergeneral”(戦車将軍)

として知られるハインツ グデーリアン大将だ。

 

グデーリアンは戦車を

「攻撃の矛先」

として投入。

敵の陣地を

「あっ!」

という間に突破すると、徒歩でヨタヨタと続く歩兵部隊に

「捕虜をかき集めておけ!」

と伝達するとさらに前進。

前線から30kmも離れた後方にグデーリアンの戦車部隊が出現すると、フランス軍は大混乱に陥った。

これが今日まで続く戦車の基本運用方法だ。

装甲車から武装装甲車に

戦車の弱点は接近戦。

何しろ視界が悪い。

塹壕に隠れた歩兵が手りゅう弾でキャタピラを破壊すると、ただの鉄の塊になる。

そこでドイツでは戦車の側面を守る

“Panzergrenadier”(戦車歩兵)

という新しい部隊が誕生した。

世界中の軍隊を探しても、戦車部隊専用の歩兵部隊があるのはドイツ軍だけ。

その歩兵を

「弾が飛び交う前線で、安全に輸送する」

という目的で登場したのが装甲車だ。

当然ながら兵士の輸送が第一の目的だったので、当初の装甲車には武器がなかった。

60~70年代になると装甲車を武装させて、

  • 敵の陣地を攻撃する
  • 敵の装甲車を破壊する

という新しい運用方法が考案されて、装甲車は徐々に武装装甲車へと姿を変えていった。

自衛隊の新型装甲車

しかるに自衛隊だけは、未だに装甲車を採用している。

2022年、自衛隊は性能が悪かったコマツ製の装甲車に変えて、ノルウエー製の装甲車を導入すると発表。

しかし未だに装甲車のまんま。

機関銃を

「武器」

と言えなくもないが、機関銃では敵の武装装甲車が出てきたら一目散に逃げるしかない。

ノルウエー産の装軌車には

「武装装甲車バージョン」

もあるのに、自衛隊では

「武装装甲車にすると、市民から苦情が出る。」

と、武装装甲車を見送った。

一体、何の為の軍隊なんだろう?

ドイツの武装装甲車 Marder

ドイツ軍が導入した武装装甲車が

“Marder”(マーダー)

だ。

 

日本のテレビ局は例外なく、

「マルダー」

と呼んでいた。

ここではドイツ語の正しい読み方、

「マーダー」

と表記します。

そのマーダーは、動物の「てん」を指すドイツ語です。

参照 : てん

 

ドイツでは路上駐車をしている車の配線を食いちぎる

「やっかい物」

として有名で、

“Marderbiss”(マーダーによる配線の切断)

というドイツ語も出来上がっているほど。

開発されたのはベトナム戦争中。

70年代から配備が始まり、今でも現役の武装装甲車だ。

ドイツ軍が導入してるバージョンでは、

  • 20mm機関砲
  • 7,62mm機関銃
  • 対戦車ロケット

を備えている。

もっとも対戦車ロケットは、

「オプション」

となり通常の車両にはついていない。

20mmの機関砲では戦車の装甲に

「ピンポン玉」

のように跳ね返される。

が、コマツ製の装甲車なら難なく破壊できてしまう。

乗員は3名。

かなり狭いが6名の兵隊の輸送もできる。

又、ドイツ製の武装装甲車の特徴として、装甲がかなり厚い。

米軍の武装装甲車 Bradley


米軍が採用している武装装甲車が

“Bradley Fighting Vehicle”

で、80年代に配備が始まった。

 

主な武装は

  • 25mm機関砲
  • 7,62mm機関銃
  • 対戦車ロケット

で、ドイツのマーダーよりも強力な機関砲が付いている。

「たった5mmの違い」

だが、これが戦場ではかなり大きな差になる。

戦車の装甲には歯が立たないが、旧型の装甲車ならいとも簡単に破壊できてしまう。

加えて対戦車ロケット弾を標準装備してるので、戦車に遭遇しても、

「逃げろ!」

と大急ぎで退却せずに、攻撃することさえできる。

敵の数が少なければ。

乗員は3名。

武装により運べる兵士の数が異なるが、ドイツ軍の武装装甲車マーダーよりも30cm短いので、最高でも6名以下だろう。

フランス軍の偵察戦車 AMX-10 RC

武装装甲車と戦車の間にある車両が、

「軽戦車」

あるいは

「偵察用戦車」

と呼ばれる車両だ。

自衛隊で採用されている16式機動戦闘車が、この偵察戦車に相当する。

フランス軍は偵察戦車

“AMX-10 RC”

を装備している。

その名の通り偵察(レコン)での使用が目的なので、機動性が重視されている。

その一方で、ウクライナ軍の18番、武装レコンができるように105mmの立派な主砲を備えている。

ロシア軍の主力戦車であるT-72を、

「当たる場所次第」

だが、破壊できる能力を持つ。

もっとも総重量は14,2トンと、滅茶苦茶軽い。

ドイツ軍の武装装甲車マーダーが35t。

その半分以下。

装甲は形だけ。

20mm機関砲でも穴が空く。

逃げ足の速さが、”AMX-10 RC”の強みだ。

何故、ドイツは戦車の提供を拒むのか

ここからが本題です。

何故、ドイツは戦車の提供を拒むのか?

ショルツ首相が言っている表向きの理由は

西側諸国では何処も戦車を提供していない。

 

第二次大戦の教訓から、

「ドイツだけ先走りすることは避ける。」

というもの。

実の理由は別。

首相官邸に、ショルツ首相にアドバイスをするシュミット長官がいる。

彼は首相官邸で、

「鍵十字の入った戦車が破壊されて、ロシア兵が喜ぶ姿がテレビで流れてはならない。」

と漏らしたことがある。

ドイツは世界で第三の武器輸出国。

目玉商品はドイツの戦車。

ドイツが大嫌いなトルコのエルドガン大統領でさえ、

「戦車はドイツ製」

と浮気をすることがない。

そのドイツの戦車が破壊されると、

「名声に傷がついて、輸出量が減る。」

という心配がある。

が、そんな本音は口が裂けても言えない。

そこで、

「第二次大戦の教訓から、、。」

と反省した模範生の役を演じているわけだ。

気配りの出来ないフランス

ところがである。

マコン大統領が

「ウクライナに偵察戦車を供給する。」

と言い出した。

これまでは、

「ロシアを辱めてはならない。」

などと、ロシア寄りの声明でゼレンスキー大統領を度々、怒らせていたマコン大統領。

なのに西側諸国の中で先陣を切って、フランス製の戦車を提供するという。

質問
その心は?

 

理由は簡単。

ドイツ製の戦車ばかり人気で、一向に輸出量が伸びないのおフランス製の戦車。

かっての植民地に

「特別料金」

で輸出はしているが、その数は微々たるもの。

が、ウクライナでロシア製の戦車を破壊すれば、

「フランス製の戦車もいいぞ!」

となる。

だからマコン大統領はドイツに気配りしないで、

「ウクライナに戦車を提供する。」

と言い出した。

もっとも何時までに、何台提供するか、一切言わなかった。

プーチン大統領を怒らせることを危惧しての事だろう。

ドイツ ウクライナに武装装甲車の提供を決定!

フランスがウクライナに戦車を提供すると発表されると、ショルツ首相の

西側諸国は何処も戦車を提供していない。

 

という言い訳が使えなくなった。

「ヤバイ!」

とショルツ首相は米国と協議、フランスの発表の翌日、

「ドイツは米国と共同して、武装戦車をウクライナに提供する。」

と声明を出した。

米国は50台前後のブラッドレー武装装甲車を、ドイツは40台前後のマーダー武装装甲車を提供する。

加えてドイツはパトリオット対空ミサイルシステムも、ウクライナに送る。

ただし1基だけ。

ドイツ軍はウクライナ兵の教育に

「8週間必要」

と声明を出してる。

この為、ドイツと米国の武装装甲車が前線で活躍できるのは、3月以降になる見込みだ。

ただし!

提供される車両は、独・米で合わせても90両ほど。

これでは戦況に与える影響は限定的。

ドイツ国内の反響

ショルツ首相の決定に対して、ドイツのメデイアは容赦なかった。

少子化対策で

「消費増税も」

と口をすべらした甘利政調会長のように、一斉ブーイングが起こった。

「ウクライナなんかロシアにくれてやれ!」

という

「自分さえよければ、後は俺には関係ない。」

という平和主義者から、

「ドイツの主力戦車をウクライナに!」

という現実派まで、異口同音に首相を非難した。

その理由は異なるが。

その中で現実派の、

「この決定が11ヶ月前にされていれば、大勢のウクライナ兵の命を救うことができた。」

「これ以上の失敗を繰り返さないため、レオパルト主力戦車の提供を!」

という非難が、最も的を得た非難だった。

イギリス主力戦車提供か?

四面楚歌のショルツ首相、

「レオパルト主力戦車もウクライナに提供するのか?」

との問いに、

西側諸国では何処も、主力戦車を提供していない。

 

とまた下手な言い訳をした。

そのショルツ首相をあざ笑うかのように、

「イギリス政府、主力戦車チャレンジャー2型の提供を検討中」

と報道された。

この報道が事実で、ひきつったショルツ首相の顔を見るのが何よりの楽しみ~。

編集後記

英国政府は1月14日、新たなウクライナへの武器援助を発表。

それによると

  • 火砲システム
  • チャレンジャー2型戦車

をウクライナに提供するという。

当社は12両程度になる見込みだ。

チャレンジャー2型戦車は、これまで実戦で破壊されたことがない英国の誇り。

それをウクライナに提供するのだから、立派。

これでショルツ首相の言い訳は、もう使えなくなった。

どうするドイツ?

-ドイツの政治, ドイツの最新情報

執筆者:

nishi

コメントを残す

アーカイブ