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ラインメタル社 過去最高額のオーダーゲット!

投稿日:2024年7月9日 更新日:

ラインメタル社 過去最高額のオーダーゲット!

プーチンの戦争で

「ゼロからヒーロー」

になったドイツ一の軍需産業ラインメタル社。

とりわけトランプが次期大統領になることが濃厚になってから、受注が加速した。

ここ数か月だけで

「ラインメタル社、過去最高額のオーダーを受注!」

というニュースを何度も読んだ。

しかし!

今回紹介するのは当分、抜かれることはない正真正銘の

「ラインメタル社過去最高額の受注」

だ。

詳しく解説します。

メインバトルタンク KF51 パンター

他の場所でも書きましたが、ラインメタル社のような軍需産業にとって

「一番儲かる商売」

は弾薬です。

ほぼ

「言い値」

です。

というのもしばらく戦争がなかったので、弾薬製造している会社が少ない。

その少ない会社も、規模が小さい。

とても戦時の需要を満たせない。

規模の大きな弾薬製造会社は、ラインメタル社が戦争勃発後に

「あっ!」

という間に買収した。

結果、大量に弾薬が必要なら、ラインメタル社以外に注文できる会社がない。

しかし!

軍需産業にとって

「一番売りたい商品」

はメインバトルタンク(主要戦車)だ。

「あの戦車を製造した〇〇社」

という名声が欲しい。

そこでラインメタル社はドイツ軍の受注もないのに、メインバトルタンク KF51 パンターを勝手に製造した。

Panther KF51 ラインメタル社 最新型主力戦車発表

最初のお客様はハンガリー陸軍?

最初にラインメタル社のKF51 パンターに興味を見せたのは、ハンガリー軍だった。

ハンガリー軍は第二次大戦中、ドイツと同盟を結んでいたためソビエト軍の侵攻目標となった、苦い経験がある。

「ブタペスト包囲戦」

だけで罪のない4万人の国民が惨殺された。

オルバン首相(ほぼ独裁者)は

「西側諸国で唯一のロシアのお友達」

だが、心の底から信用しているわけではなさそうだ。

目の前でロシアのウクライナ侵攻を見せられて、

「過去の苦い経験」

が思い浮かんだに違いない。

そこで国防大臣は将軍を引き連れてラインメタル社を訪問、KF51 パンターに乗車した。

乗車後、国防大臣は記者の質問に答えていたが、

「いたくご満悦」

の様子だった。

案の定、ハンガリー陸軍とラインメタル社の間で戦車の共同開発計画が調印された。

そう、試作車のKF51 パンターを大量生産レベルに引き上げるための研究開発費をハンガリー軍が支払うのだ!

そのお返しに、ラインメタル社は戦車をハンガリーで生産して雇用を創設する。

商売敵 クラウスマファイ ヴェーゲマン

よりによってドイツの軍需産業が開発した戦車を、

「国外」

で売るには理由がある。

ドイツ政府から

「メインバトルタンクは、ラインメタル社とクラウスマファイ ヴェーゲマンで共同生産しなさい。」

と言われている。

 

ドイツ政府は両者が公平に仕事を受注して、存続する事を望んでいる。

ところがである。

(前)メルケル首相は、

「開発費を抑えるために、独仏の軍需産業を合併すべき。」

とフランス政府に持ちかけた。

この呼びかけがきっかけになり

”KNDS”

という独仏合弁軍事会社が設立された。

そのKNDSの中身は、クラウスマファイ ヴェーゲマン社とおフランスのネクスター社からなる。

本社は何故かオランダ。

そう、ラインメタル社は

「置いてけぼり」

にされたのだ!

そこでラインメタル社は独自のメインバトルタンクを開発して、独仏合弁会社KNDSに対抗することにした。

犬猿の仲

ところがである。

ドイツとフランスの関係は、日本と韓国の関係に似ている。

外交上は仲良くしていても

「決定的な点」

になると、両者の意見が衝突する。

KNDSも同じ。

  • どちらが車両を製造する?
  • エンジンは何所から?
  • ミッションギヤは何所から?
  • 主砲は何所から?
  • 組み立ては何所で?

などなど、あらゆる点で意見が衝突。

共同の戦車開発など夢また夢。

Leopard 2 A-RC 3.0

これまで話が全く進まなかった

「独仏メインバトルタンク共同開発事業」

だが、メインバトルタンク KF51 パンターの登場で一気に状況が変わった。

「このままではラインメタル社に、メインバトルタンクの受注を奪われてしまう!」

と大急ぎで試作品の開発を始めた。

そしてKF51 パンターの登場から2年後、KNDSはメインバトルタンク

“Leopard 2 A-RC 3.0”

を公開した。

 

この戦車はKF51 パンターに対抗するための試作戦車。

この試作戦車、かっての旧日本軍の戦車のように装甲を止めているビスが見えるので、かなり大急ぎで製造したのが分かる。

KF51 パンターとは出来がまるで違う。

この為、性能をどうこう言っても意味がないが、乗員は

“Wanne”

と呼ばれる車体部分に乗り込む形になっている。

ラインメタル社 KF51 パンター改 公開

KNDSによる試作戦車

“Leopard 2 A-RC 3.0”

の発表後、ラインメタル社はKF51 パンター改を公開した。

過去2年間のハンガリー軍との共同開発により、試作戦車は大いに進化していた。

最初のモデルではまだ砲手と戦車長は砲塔の中に席があった。

パンター改では乗員はすべて車体部分に乗車するように変わっている。

かなり完成度が高く、あと1~2年で大量生産が始めれそうだ。

ラインメタル社 過去最高額のオーダーゲット!

独仏戦車同盟により

「蚊帳の外」

にされたのはラインメタル社だけではない。

イタリアの軍需産業レオナルドも同じ。

ちょうどイタリア陸軍の装備入れ替えの時期が迫っていることもあり、レオナルド社はKNDSに

「仲間に入れてくれ。」

と交渉を続けていた。

具体的に言えば、

「戦車の生産はイタリアで行い、雇用を創設してくれ。」

と交渉していたのだ。

が、KNDSは難色を示した。

そもそもドイツとフランスの間で、

「どちら側が生産する?」

と議論になっているのに、さらに生産拠点をイタリアに作ると、

「儲からない。」

というわけだ。

ここで

「漁夫の利」

を得たのがラインメタル社だ。

同社は単独生産なので、利ザヤが高い。

加えてイタリアにはすでに複数の生産拠点を持っている。

ラインメタル社が

「ウチなら戦車の60%は、イタリアで生産しますよ。」

とオファーした事で、レオナルド社はKNDSとの商談を打ち切った。

結果、ラインメタル社との間で過去最高額となる受注計画が結ばれた。

なんと武装装甲車両350両、KF51 パンター200両+弾薬を含めた200億ユーロ(邦貨で3兆3000億円)もの大型受注だ。

 

勿論、ラインメタル社創設以来、過去最高額の受注だ。

KNDSは地団駄を踏んで、悔しがったに違いない。

Schützenpanzer Lynx

ドイツ軍が採用している武装装甲車両は

”Puma”(プーマ)

であるが、

「故障が多くて使えない。」

と評判がよろしくない。

 

この車両はラインメタル社とクラウスマファイ ヴェーゲマン社との共同製作品。

ドイツ政府の命令で嫌々一緒にやっていたが、我慢の緒が切れた。

そこでラインメタル社は独自の武装装甲車両

” Lynx”

を製造した。

この車両は

「甲羅の部分を30分で交換できる。」

のが特徴。

戦況に応じて人員輸送用の装甲車から、120mm滑空砲を積んだ戦車にまで変身できる。

 

イタリア軍がこの武装装甲車両を350両もオーダーするのも、わかる。

これを見たKNDSが怒っているのは、言うまでもない。

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執筆者:

nishi

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