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朝令暮改 Gasumlage & 原子力発電所編

投稿日:2022年9月29日 更新日:

朝令暮改 Gasumlage & 原子力発電所編

政治家が避けるべきは、政令を政府の都合でちょくちょく変える事。

俗に言う朝令暮改だ。

これをやるとオオカミ少年と同じで、

「どうせまた変わるだろうから。」

と、政府、あるいは政治家の政策を真面目にとってもらえない。

ドイツでその見本のような例があったので、一人で楽しんでいないで、日本の皆さんにも紹介したい。

“Rein in die Kartoffeln, ,,,

ドイツ語で朝令暮改に相当するのは、

“Rein in die Kartoffeln, raus aus den Kartoffeln.”

と言う。

無理やり日本語に直すと、

「ジャガイモに入ったと思えば、すぐに出る!」

という意味。

語源は1885年に公開された風刺画。

軍隊ではとりわけ命令の取り消しが多い。

これを皮肉った風刺画で、

「ジャガイモ畑に隠れろ!」

と命令が飛ぶと、すぐさま、

「ジャガイモ畑から出ろ!」

という命令に変わる。

「どっちやねん?」

という皮肉を込めたこの言葉が大流行。

以来、ドイツでは朝令暮改を

“Rein in die Kartoffeln, raus aus den Kartoffeln.”

と言うことになった。

朝令暮改 Gasumlage 編

その朝令暮改を懲りなく繰り返してるのが、

「隠れた首相」

とまで言われて一番人気だったハーベック経済大臣だ。

皆さんのご存じの通り、ドイツ政府は

「メルケル政権の16年のツケ」

を払うために”Gasumlage”の導入を決めた。

ところがである。

一部国有化したウニパーが、

「これまでの財政支援では、到底足らない。」

と言い出した。

ドイツ最大のガス輸入元が倒産すると、ドイツは大混乱に陥る。

そこで政府が99%の株式を買い上げて、国有化した。

皆まで言えば、国有化されたガス輸入業者は、ウニパーだけではない。

その税金を使って国有化された会社に、国民からお金を絞りあげてつぎ込むのは、法律上 & モラルの上での問題があった。

ところがである。

経済大臣のハーベック氏は、

「それでもGasumlageは導入する。」

と、コペルニクスの向こうを張った。

ところがである。

財務大臣のリントナー氏が、

「Gasumlage導入は、賛成しかねる。」

と公言。

財務大臣 vs. 経済大臣の内紛が勃発した。

するとSPDまで、

「ただでもエネルギー価格の上昇に苦しむ市民に、国有企業への財政援助を請うのは賛成できない。」

と言い出した。

いよいよ、

「10月から導入!」

という9月末になって、

「廃止しよう。」

という話に流れが完全に変わった。

今は経済大臣の

「面子」

を保ったまま、どうやってGasumlageを廃止できるかが、議論されている。

原因探し

何故、経済大臣は政府内で、

「四面楚歌」

になるまで、必要のない政策を突き通そうとしたのだろう。

多分に、すでに一度、

「それはおかしい。」

とGasumlageの内容を指摘され、改正を迫られていたからだろう。

「今度は廃案になると、面子にかかわる。」

と、負担を強いる国民ではなく、自分の見栄を優先した。

朝令暮改 原子力発電所編

2022年12月31日をもって、まだ稼働してる原子力発電所が廃止される。

「嘘!」

のように高いガスを燃焼して、発電しているこのご時世にだ。

誰が考えても、

「原子力発電所をこのまま稼働させて、ガス発電量を減少させる。」

のが最善の策。

すると日本ではNHKを筆頭に、

「ドイツはエネルギー危機で脱原発を再考した!」

と報道。

「大きな嘘です。」

と、ここで反論していた。

日本の報道機関は、

「燃料棒を買い付けるには、1年半も前に注文する必要がある。」

という基本的な事実を見ようとしない。

その原因のひとつは、NHKのドイツ駐在員。

駐在員としてとっても羨ましいお給料をもらっているのに、

「大学でドイツ語を専攻しました。」

程度の日本人が駐在している。

だから報道のソースにするのは、ロイターから流れてきた英語の報道。

ドイツに居るのに、ドイツ語で情報収集をしない。

だからこんないい加減な報道になる。

原発は予定通り操業停止

ここでも話題を提供してくれるのは、経済大臣のハーバック氏。

この緊急事態に

「原発は予定通り12月31日に操業停止するが、電力が足らない場合のバックアップとして、来年の4月まで待機させる。」

と発表した。

この経済大臣の決定は、経済界、野党、そして与党内からも非難の声があがった。

プーチンの戦争で

「かってないエネルギー危機」

に陥っているドイツ。

市民は、

「この冬は食事か暖房か?」

という選択を迫られているのに、

「原発廃止は変わらない。」

という石頭。

これが緑の党の政治家の限界だろう。

野党は、

「さっさと燃料棒を注文して、数年間の継続運転を可能にせよ!」

と要求したが、馬の耳に念仏だった。

すると原発を運営している電力会社が、

「原発はスイッチを入れたら、すぐに休止状態から発電モードに戻れるものではない!」

と反対した。

が、経済大臣は聞こえないフリをした。

ところがである。

ハーベック大臣が

「足らない電気は、おフランスから買えばいい。」

と頼っていたフランスの原発が軒並み故障や

「定期健診」

のため、操業を停止した。

フランスのマクロン大統領が、

「不足する電気をドイツから輸入したい。」

と言い出すと、ハーベック大臣にもやっとわかった。

9月27日になって、

「稼働中の原発は、4月まで操業を続ける。」

と意見を変えた。

ハーベック大臣は平和時の政治家として一流だが、戦時の大臣としては不適格だ。

同じことはショルツ首相、リントナー財務大臣、ランブレヒト国防相、皆で言えば、ヴィッシング交通相にも当てはまり、全部まとめて落第点。

この冬、ドイツがどうなるか心配なので、とてもドイツに帰る気にはなれない。

倒産とは?

折角なので、ハーベック大臣の名声を地に落としたもうひとつの逸話も紹介しておこう。

政治家は一概に、自己顕示欲が強い人間だ。

だからテレビに出たがる。

そんな政治家がよく出演するのが、国営放送の

“Maischberger”

というトーク番組。

参照 : Maischberger

 

この番組で

「この冬には倒産する会社が多く出る事になるのでは?」

と、司会者のマイシュベルガー女史がハーベック大臣に尋ねた。

すると大臣は、

「会社が店舗を閉めて販売を辞めたからと言って、倒産とは限らない。ただ販売をしないだけだ。」

と、大臣独自の倒産論を展開した。

翌日にはドイツ中のメデイアが、

「ハーベック経済大臣は、倒産の意味もわかってない。」

と報じた。

この冬に倒産する会社が出てくる事実を認めたくないばかりに、おかしな倒産理論を持ち出して大恥をかいた。

かっては、

「次期首相か?」

とも言われていたが、これでは無理。

メッキが剥がれて、結局は経済を理解しない緑の党の

「ど素人」

というイメージが広まった。

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執筆者:

nishi

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