日本でも自嘲的に、
「ガラパゴス症候群」
と呼ばれる通り、島国に住む国民のセンス / 感覚は、世界の感覚から大きくズレている。
これを象徴するのが、日本の高校・大学の学園祭で登場するナチスの仮装。これが「マズイ」とは、教師でさえも理解できていない。
明らかに世界で共通するコモンセンス / 常識が欠けている。
結果、全世界から批判されてから、
「一体、何がまずかったのだろう?」
と未だに腑に落ちていないが、恥ずかしいのでお詫びをする。一体日本では、ヒトラー率いるナチスがどんな悪事を働いたのか、日本では習わないのだろうか。
この記事の目次
我が闘争 / Mein Kampf 悪魔の書 解禁!!
日本では角川文庫が販売していたヒトラーの口述著書我が闘争 /”Mein Kapmf”。
ドイツでは戦後から発行が禁止されていた。著作権の所有者であるバイエルン州が「悪魔の書」として発行を禁止した為だ。
この禁止にもかかわらず”Institut für Zeitgeschichte”(以降IfZと略)という歴史研究期間が、この悪魔の書の「解説判」の発行準備を始めた。2016年にバイエル州が持つ我が闘争の著作権が期限切れになってしまうからだ。
「誰かが発行する前に、ちゃんとした解説を加えた版を発行するほうがいい。」
という論理はバイエルン州の州知事の逆鱗に触れ、
「IfZ への補助金をストップすべきだ。」
と州知事が言い出して、アドルフが死んで70年以上も経つのに、またしても大きな政治テーマになった。
我が闘争 / Mein Kampf ベストセラーに!
2016年1月1日に著作権が失効すると、IfZは解説を加えた「我が闘争」の販売を、59ユーロという高額で開始した。
参照 : Amazon
「ベストセラーを目指すのではなく、またしても誤った思想の根源にならないようにすることが目的だ。」
という同機関の高貴な目標とは裏腹に、またしてもベストセラーになってしまった。
参照 : zeit
同時に自宅で埃が積もっていたオリジナル版の我が闘争を所持していたドイツ人は、これを合法に販売することが可能になって、大喜びした。
戦禍を逃れ、70年以上も生き延びたされなかったオリジナル版は今、なんと1500ユーロもの値段で売りに出されている。
この著書に、
「大衆は驚くほどナイーブで、誤った事実でも、これを繰り返し主張すれば信じるようになる。」
と書かれている。米国大統領のトランプ氏が、メデイアに全く同じ話を語っていたのは興味深い。
ヒトラーの著書を読んだのか、それともメデイアでの仕事により同じ結論に達したのか。
代わりの真実
大衆心理への深い理解に加えて、真っ赤な嘘をしゃあしゃあと主張する厚顔無恥を持ち合わせていたトランプは、これを武器に大統領選を戦い、次々に政敵を撃破、ついには大統領に就任してしまった。
大統領の就任式を見に来た市民の数が少ないと報道されると、すぐに得意技を発揮して、
「こんなに参観者の多かった就任式はなかった。」
と主張、メデイアは嘘を報道していると非難した。その後、メデイアがこの事実を数字で証明すると、大統領選の首席アドバイザーだったKellyanne Conway女史は、
「これは嘘ではなく、”Alternative Fakten”(代わりの真実)である。」
と主張した。
参照 : zeit
この現象は米国だけに限られたものではない。英国でも脱EU派は文字通り真っ赤な嘘を主張して、成功した。
嘘は気持ちがいい。「お綺麗ですね。」と言われて、怒る女性はいない。
かってヒトラーが、
「ドイツが戦争に負けたのはユダヤ人の裏切り/”Dolchstoß”が原因だ。」
と言い張り、
「ドイツが苦境にあるのも、すべてユダヤ人のせいだ。」
と代わりの真実を主張すると、ドイツ人は良心の呵責、
「戦争をおっぱじめた挙句に負けた。」
から解放された。
ドイツ人はこの代わりの真実を信じてまった結果、またしても戦争を始めてしまったが、こっぴどく負けるまで、現実を見ようとはしなかった。
全く同じ現象が英国、米国、ドイツ、フランス、オランダ、イタリア、オーストリア等で起きている。代わりの真実ほど、市民にとって気持ちのよいものはない。
2016年 流行語大賞 – 代わりの真実 / Postfaktisch
こうした背景があり2016年の流行語は、”Postfaktisch”が選ばれた。
参照 : welt
これはまさしく米国のConway女史が主張する「代わりの真実」という意味だ。
日本社会は農耕社会から発展したため、「村八分」になることを避け、メインストリーム(多数派)と同じ行動をしていれば安全だと考える。
結果、日本人は、
「他の人はどうしていますか。」という質問をとりわけ好む。こうした背景もあり、日本人はとりわけ代わりの真実に弱いので、ネット記事を読む際は用心あれ。記事を書く側が、読者に合う様に記事の内容を選抜していることをお忘れなく。