全然カッコよくなったオペル。
もう1年以上前の話になるが、米国大手の車メーカーGMは小会社であるドイツ車メーカーオペルを、フランスの車メーカーに売却した。過去18年間赤字を出し続けて重荷になっている子会社を手放し、親会社の採算を改善するのが狙いだ。一方、買い手のPSAは、「ドイツ車を買いたいが、BMWやメルセデスは高くて買えない。」という客層を掴むことを、このデイールに期待した。
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オペル改革案
PSA の思惑とは異なり、「オペルの持ち主がフランス人に移っても、赤字体質は変わりやしない。」という意見が支配的だった。そのような悲観的な意見に聞く耳をもたなかったのが、PSA の社長のポルトガル人。同氏は国の補助金で倒産の憂き目から救われたPSAを改革、他の車メーカーがうらやむような利益を出す会社に転換させていた。
にもかかわらず、「オペルは別格。GMが18年かけても改革できなかった会社を、改革できるどうか非常に疑わしい。」と誰もが思っていた。会社の所有権が移ると、ポルトガル人は早速、人員削減に手をつけた。労働組合との交渉の末、退職金をもらって自主的に辞めていく社員、早めに定年退職する社員、フルタイムから半日勤務への転換の希望者を募る人員削減方法で同意に達した。
参照元 : Frankfurter Allgemeine
この方法で削減されるのは3500人。この削減数はドイツ国内のオペル従業員の20%に相当する大掛かりなもの。労働組合はこの自主退職を飲む一方で、今後5年間はオペル内での人員削減をしないという約束をとりつけた。オペルの労働組合も、この交渉にオペルの将来がかかっていることを知っていたので、双方が我慢できる妥協案を見出すことができた。
オペル復活?- 敏腕のポルトガル人社長 20年ぶりの黒字達成!
そして2017年7月、PSAは小会社のオペルが2018年の上半期で5億ユーロを超える黒字を出したと発表、車業界、経済界を驚かした。
参照元 : NTV
というのも2018年のオペルの市場占有率は、去年よりも減退しているのだ。車の販売台数が減っているのに、このポルトガル人はどうやってあのオペルでこんなに高額の利益を出すことができたのか?その方法は、まさにポルトガル人の敏腕社長がPSAの改革で行なった方法と同じだった。
まずは人員削減で固定費を減らす。そしてグループで部品を共用、部品メーカーに大量注文することで単価を下げた。最後には車の販売台数ではなく、車を幾らで売るかという点に焦点を変えた。これにより販売台数は減ったが、台数あたりの販売価格が上昇、固定費、部品費用の削減が手伝って、オペルがほぼ20年ぶりに黒字を出すことが可能になった。
オペルの将来
オペルが黒字を出すことに成功した車は、前の所有者、GMの下で開発されたもの。今後販売される車両は、フランス人がフランスで開発、最後の仕上げだけはドイツで行なう。すなわち名前はオペルだが、部品からエンジンまで、中身はPSA。これによりさらにコストの削減が期待できるが、喜んでばかりもいられない。
オペルの今のイメージ/デザインが大きく変更されて、プジョーやシトロエンのような車になるのでは?と心配する声も聞かれる。これにより今までオペルを買っていた客が韓国車や日本車に乗り換える危険もないわけではない。果たしてオペルは敏腕社長の下で復活することができるだろうか。