スキャンダル

農産大臣 ネスレとコラボの広報ビデヲで大炎上!

投稿日:2019年6月12日 更新日:

ネスレのヒット商品「マース」

ドイツ人の悩みは肥満。男性のなんと60%以上が肥満体、すなわちドイツ人男性が3人いれば、二人は肥満体。これが55歳以上になるとさらに悪化、70%になる。女性は男性よりはマシで43%、すなわち半数が肥満体だ。

参照元 : MDR

「ドイツに行ったら、素敵なドイツ人の彼氏を見つけて、、。」と密かに期待している方、おでぶさんでも大丈夫なら選択肢豊富。この急激に悪化している肥満の原因は幾つかあるが、主なものは

運動不足

暴飲暴食

大量に砂糖が含まれている食品を摂る

だ。太っているドイツ人はほぼ間違いなく、「私が悪いんじゃない。遺伝のせいだ。」と言う。これが本当ならドイツ人の60%以上がそのような遺伝子のエラーを抱えていることになる。

実際には油分の多いものを摂り過ぎだ。そして食事と一緒にビールかコラーを呑む。ビール自体のカロリーは低いが、食欲を刺激するので大目に食べる。そしてコーラには大量の砂糖が含まれている。こんな物を毎日食べていれば、肥満体になるのも無理はない。

おいしく感じる魔法の調味料 砂糖

清涼飲料水という害のない名前とは裏腹に、コーラに大量の砂糖が含まれていることは既知の通り。製造元もこれに対応して、砂糖の含有率を減らすか、人口調味料に移行している。逆によく知られていないのは、スターバックスのコーヒーだ。フラッペの中にはコーラよりも多い砂糖が含まれており、ドーナッツを4個食べるよりも多い砂糖を含んでいる。もっとわかりやすく言えば、なんと9個もの角砂糖が入っている。

参照元 : Praxis Vita

もっとひどいのは、「エネルギードリンク」と呼ばれる飲み物だ。日本語の清涼飲料水と同じで、響きがいい。お陰で急速に社会に浸透したが、エネルギードリンク一缶には角砂糖が26個も含まれている!

参照元 : Handelsblatt

砂糖が含まれているのは、スタバのコーヒー、エネルギードリンク、清涼飲料水だけにとどまらない。ピザからスープ、キャベツの酢漬けにまで砂糖が入っている。なんで酢漬けにまで砂糖を入れるのか?それは砂糖は味の素と同じような作用があり、「おいしい」と感じるからだ。おまけに安い。まさに砂糖は魔法の調味料で、これを入れた商品はよく売れる。

こうした食品を、それもコーラやビールと一緒に大量に消費して、運動をしないドイツ人が太るのは、ごく当たり前。しかしおいしいのでやめられない。こうしてドイツでは毎年、肥満率が上昇しており、肥満大国アメリカに追いつくのも時間の問題だ。

砂糖の含有率を信号で表示

肥満に伴いさまざまな健康障害が生じており、医療費は増加する一方だ。とりわけ甘いものに目がない子供の肥満が問題になっており、なんとか手を打つ必要が急務とされた。ここでさまざまな団体が食品のパッケージに砂糖(それに脂肪)の含有率を印刷することを提供した。それもただ印刷するだけではない。一目でわかるように、赤、黄、緑の信号表示にする。

参照元 : BR 24

このシステムは家電に導入されており、電気の消費量が一目でわかるようになっている。効果は覿面だった。電気代が高いドイツでは、消費者は緑で表示されている製品を少々値段が高くても買った。少々値段が高くても、省エネ製品の方が安くなるからだ。お陰で各メーカーは販売を促進するために省エネの製品を作ることに努力、家電製品の電気消費量は毎年のように減少している。

同様に砂糖(脂肪)の割合を信号表示ではっきりと示せば、同じ効果が出る筈だ。この提案が出たのはもう10年も前。しかし未だにこの信号表示は導入されていない。何故だかおわかりだろうか。砂糖の含有率が一目でわかる表示が導入された際には、商品が売れなくなる。これを危惧した食品業界が政界に猛烈なロビイ活動をして、そのような規制を阻止しているからだ。

そして成功裡に信号表示の導入を阻止しているのは、CDU/CSU 出身の農産大臣だ。発癌性が疑われて製品の販売許可が切れかけたモンサント社の除草剤、グリフォザート(ランドアップ除草剤)の販売許可を独断で延長したのも、このCSUの農産大臣だった。

参照元 : ドイツの最新事情

10年前、ドイツ人の肥満率は男性でも50%未満だったが、政治家が大企業の言いなりになっている間、国民の健康は悪化し続けている。

食料品の信号表示導入!

ドイツでは食料品の信号表示が頑なに拒まれているが、導入に成功した国もある。欧州内ではよりによって、あの英国でまず最初に導入された。するとライバル意識を燃やすフランスに続き、これに続き(肥満に悩む)ベルギーで導入された。

参照元 : Foodwatch

英国で信号表示が導入されると。大手企業は赤色表示を避けるために、食品の砂糖の含有率を減らした食品を導入することを余儀なくされた。中には自主的に食品に信号表示を記載している大手もあるが、これには要注意。保健省が進めるように「100gあたりの砂糖の含有率」ではなく、「一人分の容量の砂糖含有率」にすり替えているからだ。

農産大臣 ネスレとコラボの広報ビデヲで大炎上!

このような背景があり、ドイツでは大企業は銀行であれ、電力会社であれ、食品メーカーであれ、好かれていない。豊富な資金源を武器に法律を操作、排気ガスの操作を合法化させた自動車業界の暗躍、食品の信号表示を未だに成功裡にEU議会で阻止している食品ロビーなど、その悪行の快挙にはいとまがない。

今、ドイツの農産(&食料品)大臣に就任しているのは、CDUの”Klöckner”女史だ。女史はNRW州の南にあるRheinland-Pfalz州のCDUのリーダーで、2011年、2016年の州選挙に州知事候補として立候補した。前評判では優勢だったのに、いざ選挙になると現職に(二度も)負け、政治生命が尽きた筈だった。

ところがメルケル首相が、ウルトラセブンの補助怪獣のように、ベルリンに召喚して農産大臣のポストに就けてやった。そのクレックナー女史、自身の仕事ぶりをツイッターで上げて宣伝している。その宣伝ビデオの一環で、世界を代表する食品企業ネスレの(ドイツ支局)社長と59秒のビデヲを撮影した。女史はこの短いビデヲの中で、ネスレの食料品に含まれる砂糖、塩、脂肪を減らす努力を絶賛した。

参照元 : stern

仏頂面のネスレの社長の横で、クレックナー女史がまるで使用人がご主人様に媚び入っているように見えるこのビデヲが公開されると、「農産大臣はネスレの宣伝をしている。」と各方面から猛烈に非難された。もともと大企業が嫌いなドイツ人は、その大企業の召使になっている大臣をこきおろし、大炎上している。

大臣はこのビデヲを公開することにより、「食料品業界が努力しているので、食料品の信号表示は必要ない。」と国民を説得したかったのだろうが、全く逆効果になった。国民が大企業の悪事を好ましく思っていないことさえも理解していない、大臣の軽率な行動だった。

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執筆者:

nishi

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