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メルセデスの危険な賭け 高級車戦略

投稿日:2025年3月24日 更新日:

メルセデスの危険な賭け 高級車戦略

高級車の代名詞 メルセデス ベンツ。

が、今や中国の電気自動車メーカーに

“Marktanteil”(市場占有率)

を取られ、販売台数は減少する一方だ。

ケレーニス社長が起死回生を目指して導入したのが、

”Luxus-Strategie”(高級車戦略)

だ。

詳しく解説します。

対抗策を打てないドイツの車メーカー

賢い中国人、

「内燃エンジンでは勝てない!」

と悟ると電気自動車に

”All in.”(総力戦)。

10年以上かかったが、遂にドイツの車メーカーを追い抜いた。

BYDは世界初の

「1000Vバッテリー」

を搭載した乗用車の販売を開始した。

この車、

たったの5分の充電で470Km走行できる充電が可能だ。

 

ドイツの車メーカーは

「敵を侮った」

せいで、周回遅れにされてしまった。

売れないメルセデスの電気自動車

ドイツの車メーカーの中で、電気自動車販売台数で一番出遅れているのがメルセデス。

というのもメルセデスが肝煎りで発表した電気自動車

“EQ シリーズ”

が見事にフロップした。

参照 : jesmb.de

 

メルセデスに限らないが、車メーカーは事前に

「売れるかどうか」

市場調査しないのだろうか?

それとも社長はアレを見て、

「これは売れるぞ!」

と思ったのだろうか。

あまりに売れないので、メルセデスは

「EQ シリーズ」

の製造中止を決めた。

 

当初は

「2028年にデザイン修正を行う。」

としていたが、

「EQ シリーズ」

自体ががお蔵入りになる。

それともすでに2026年の前半に。

後続モデルは1年前倒しで、2027年に導入される。

 

それほどまでに

「EQ シリーズ」

は売れていないのだ。

アデイダス メルセデスの対比

その一方で

「メルセデスの正反対」

をやって成功しているドイツ企業がある。

それがスポーツ用品メーカーのアデイダスだ。

通常、アデイダスでは新製品の導入前に高い金を払って、

「マーケテイング」

を実施する。

その結果に基いて、製造数を決める。

が、社長のグルデン氏は新しい靴を見た途端

「これは売れる!」

と直感。

時間と金のかかるマーケテイングを省いて、製造元に大量生産を命じた。

質問
どうなったの?

 

社長の予想通りアデイダスの

「レトロ スポーツシューズ」

は大ヒットした。

これがニコンなら、

「予想を上回る注文の為、在庫がございません。」

となる。

ニコンは何故 キャノンはおろかソニーにも負けたのか?

しかしアデイダスは社長の

「先見の明」

で、既に大量生産済み。

お陰で他社から客を奪い

「濡れ手に粟」

の商売をしている。

それもこれも

社長自ら販売予定の新製品を見て、その販売戦略を決める。

 

という経営姿勢の賜物。

ライバルのナイキとプーマは、メルセデスのような

「担当部署任せの商売」

を行い販売減。

社長の采配次第で、企業業績はここまで大きく差が出る!

設備投資でケチる!

さらに!

メルセデスはその生産体制に問題を抱えている。

今回のように

「EQ は売れないから、来週からはCクラスの製造に転換する!」

というわけにはいかない。

メルセデスは設備投資の際、

「EQ専用 製造ライン」

を導入したのだ。

その方が安いから。

お陰で内燃エンジン車を組み立てるには、製造ラインを全部、入れ替える必要がある。

これは巨額の投資と時間がかかる。

一方、ライバルのBMWは製造ラインの導入時に奮発、

「内燃エンジン車でも、電気自動車でも組み立てられる。」

という生産ラインを組んだ。

メルセデス上層部部の決断が、業績をさらに悪化させている。

 

メルセデスの危険な賭け 高級車戦略

四面楚歌のメルセデス、ケレーニウス社長はここで

「危険な賭け」

に打って出た。

それは販売台数が一番多い

  • Aクラス
  • Bクラス

の製造を辞めて、

「もっと高い車種に集中する。」

 

という戦略だ。

原因は怪我の功名

この危険な賭けはコロナ禍の

「怪我の功名」

が原因だ。

当時、どの車メーカーも半導体不足で車が生産できなかった。

そこでメルセデスは貴重な半導体を、

「一番高い車種」

の製造に使用した。

すると高い車はマージン率が高いため、メルセデスはフェラーリ並みの20%を超える利益率を達成した。

あれから4年。

コロナ禍はとっくに終焉。

半導体は幾らでも手に入る今、利益率は5~6%まで低下した。

これを見たケレーニウス社長、

「故意にコロナ禍の状況を作り出せば、利益率が回復する!」

 

と判断した。

これが成功すれば、ケレーニウス社長は

「メルセデスを立て直した人」

なる。

が、失敗すれば、

「第二のシュレンプ社長」

になる。

最も安いメルセデス CLA 発表

メルセデスではAクラス、Bクラスの生産中止により、

「最も安いメルセデス」

は、CLAというモデルになる。

3月中旬、メルセデスはその

”Brot-und Buttergeschäft”(日々のパンを稼ぐ商売)

となる新型CLAを発表した。

参照 : mercedes-benz

 

5月から販売開始だが、メルセデスは未だに価格を公表していない。

巷の予想では

「一番安いモデルが4万5000ユーロ」

と言われている。

日本なら800万円ほど。

こんなに高い車が

「馬鹿売れ」

して社長の目論見通り、メルセデス復活の

「のろし」

となるのだろうか?

高級車戦略が失敗する理由

今から予言しておきます。

ケレーニス社長の高級車戦略は失敗する。

 

その理由は簡単。

そろばんを叩けば

「成功するわけがない。」

とわかる。

メルセデスでこれまで一番売れていた

「量産車」

のAクラスは、3万2000ユーロだった。

それが CLA になると、一気に1万3000ユーロも上昇する。

これまでAクラス、Bクラスを買っていた客は200万円安い

  • BMW X1
  • Audi Q3

を買うだろう。

メルセデスの

「高い車を作れば、会社の業績は改善する。」

と思うのは大きな勘違い。

質問
でもフェラーリは?

 

そもそもフェラーリはメルセデスのように

「年間200万台の生産体制」

なんか組んでいません。

工場の数も社員の数も圧倒的に少ない。

だから年間生産台数が数千台でも黒字になるんです。

 

ケレーニス社長はAクラス、Bクラスの生産中止にも拘わらず

「200万台の生産体制を維持する。」

と強気。

しかし

CLAはその価格が故、販売台数はAクラス、Bクラスには遠く及ばない。

 

結果、200万台の生産ラインはフル稼働できず、マージン率は悪化する。

2025年の秋以降、メルセデスはまた

「業績予測の下方修正」

を迫られるだろう。

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執筆者:

nishi

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