
今回は世界最古の自動車メーカー メルセデス・ベンツ を取り上げます。
言わずもがな、
「子供でも知ってる会社」
ですが、その誕生史を知っている人は皆無。
皆無どころか、ネット上はデマが溢れています。
そこでドイツの達人が一肌脱いで、メルセデス・ベンツの誕生史を紹介します。
この記事の目次
メルセデス・ベンツ 世界最古の自動車メーカーの始まり
世界で最初に内燃エンジンを開発したのは、記録に残っている限りイタリア人です。
誰も知らないのは、あまり汎用性がなかったから。
その後、ヨーロッパ各地で同様の発明が相次ぎます。
ドイツ人の
“Carl Benz”(カール ベンツ)
は、その内燃エンジンを使って世界で最初の自動車を発明。
内燃エンジンを馬車の代わりに移動手段に使うという考え方は、奇抜でした。
世界最初の自動車

1866年、ベンツ ガスエンジン社(以後、ベンツ社と略)がパテントを取得した
”Patent-Motorwagen Nummer 1″(パテント 自動車1号)
が、世界で最初の自動車です。
もっともベンツ社が製造していたのはモーターだけ。
車体の製造は
「馬車製造会社」
に任せてました。
その後、ベンツは前輪を車軸で繋げ、これで方向転換をする技術
“Achsschenkellenkung”
を発明。
ガスエンジン
ベンツが世界で最初の車に搭載したエンジンは、4サイクルのガスエンジンでした。
そうなんです。
燃えるガスなら何でも使用できたので、汎用性があったんです。
ちなみに1879年、ベンツは
「世界で最初の2サイクル ガスエンジン」
も発明しています。
ちなみにドイツではガソリンを含む燃料を口語で
“Gas”(ガース)
と言います。
この為、ドイツ語で
「アクセルを吹かせ!」
は
“Gas geben!”(もっとガスを!)
って言います。
ここから派生して、
「もっと頑張れ!」
という意味でも使用されます。
私は初めて聞いたとき、
「何のガス?」
と聞き直しました。
ところがベンツは自身が作った会社、
”Mannheimer Gasmotorenfabrik”
を退社。
お金の問題があったようです。
ベンツ & チー ラインガスエンジン社
1883年にベンツは投資家と一緒に
“die Benz & Cie. Rheinische Gasmotorenfabrik”(ベンツ ラインガス エンジン工場)
を設立。
“Compagnie”(会社)
の略語です。
これが今日のメルセデス・ベンツの起源です。
ちなみに本社はマンハイム。
グーグルAIに尋ねると、
「マンハイムで彼の発明を実現化することが出来たため」
との事。
さっぱりわかりません。
最初の経営危機
「世界で最初の自動車、さぞかし売れただろう!」
と思いますよね。
確かに最初の数年は順風満帆。
多くの自動車は輸出されました。
ところが20世紀初頭、最初の経営危機が訪れます。
シュツットガルトに本社を置く
「ダイムラーエンジン合同会社」
が、性能の優れた自動車を販売開始。
お陰でベンツ社の売り上げが激減したんです。
ダイムラーエンジン合同会社

1890年、投資家の支援を受けて
“Gottlieb Daimler”(グットリープ ダイムラー)
が、
“”Daimler-Motoren-Gesellschaft”(ダイムラーエンジン合同会社、以後、DMG と略)
を設立。
話は横にそれますが、ダイムラーさんの生まれた際の名前は
“Däumler”(ドイムラー)
だったんです。
それがいつしかダイムラーに。
当時は役所もいい加減だったので、勝手に改名できたんです。
皆まで言えば、ヒトラーの父も生まれた際は、
“Hüttler”(ヒュットラー)
だったんです。
その後、勝手に
“Hitler”(ヒトラー)
と改名。
お陰でドイツ人は、
「ハイル ヒュットラー!」
と言わなくて済んだわけです。
電車の製造
当初、DMGはシュトットッガルト郊外の
“Canntatt”(カンシュタット)
にあった廃業寸前の
「錫工場」
を買い取り、ここで自動車ではなく電車を製造していたんです。
もっとも電車という言葉は正しくない。
ダイムラーは内燃エンジンで駆動する電車を製造してたんです。
その際の
「主任デザイナー」
が
“Wilhelm Maybach”(ヴィルヘルム マイバッハ)だったんです!
そう、メルセデス・ベンツの象徴の
「ハチの巣グリル」
の発明者です。
ところがです。
ダイムラーは自分の作った会社 DMG を退社。
電車ではなく、車を作りたかったようです。
もっとも1年とたたないで DMG に復帰。
その後、電車ではなくトラックの製造に舵を切ります。
そしてこの工場で働いていたのが、BMWの創設者になる
「カール ラップ」
だったんです。
4サイクルエンジンの発明
ダイムラーがそのトラックに採用したのも、4サイクルエンジンです。
その4サイクルエンジンをドイツで最初に開発したのは、
“Christian Reithmann”(クリスチャン ライトマン)
です。
ライトマンはバイエルン王国の王室で働く、
「宮廷時計マイスター」
でした。
パテントの取得は1860年。
又、ライトマンの4サイクルエンジンも
”Gasmotor”(ガス エンジン)
でした。
話がややこしくなるのはここから。
ケルン郊外で商人の
”Nicolaus Otto”(ニコラオス オットー)
が1864年
“Otto & Cie”(オットー社)
を設立。
間もなく4サイクルエンジンを発明して、プロイセンでパテントを取得。
そう、当時はミュンヘン王国とプロイセン王国は別の国だったんです。
その後、
「4サイクルエンジンのパテント」
を巡って法廷闘争に。
勝ったのは宮廷時計マイスター。
裁判所はオットーのパテントを無効宣言。
お陰でダイムラーやベンツは、
ちなみにオットーはその後、世界で最初のガソリン エンジンを開発。
以来、ドイツではガソリンエンジンを
“Ottomotor”(オットーモトーア)
と呼びます。
ダイムラーの発明
と聞けば、
「じゃ、ダイムラーはただの”Nutznießer”(漁夫の利を得る者)じゃない?」
と思いますよね。
ところがそうじゃない。
ダイムラーは今の言葉で言えば、
- “Zündkerzen”(スパークプラグ)
- “Auslassventil”(排気バルブ)
を発明したんです。
お陰でエンジンの高速回転が可能になり、馬力が上昇。
これがあったからこそ、ガソリンエンジンも初めて機能したんです。
ちなみにベンツのガスモーターは電気燃焼。
この為、回転数が遅かったんです。
メルセデスの誕生

1896年、DMG は世界で最初のトラックを開発。
もっともほとんどはイギリス向けの輸出用。
1900年にダイムラーさんが死去すると、DMG は役員たちによって運営されます。
DMG が最初に製造したのはトラックですが、自動車も販売してました。
厳密に言えば、他社が製造した車体に DMG のエンジンを積んだ形で。
ある DMG の販売店の店長、ダイムラーの車で自動車レースに出てました。
その際、登録名を
“Mercedes”(メルセデス)
にしたんです。
自分の愛娘の名前がメルセデスだったんです。
実はコレ、スペインで有名な女の子の名前。
日本で言えば
「ひとみ」
です。
レースの結果がどうだったのか記録は残っていませんが、何故かこの名前が好評。
そこでDMGは1900年以降、馬力アップした自動車モデルを
„Daimler-Mercedes“(ダイムラーメルセデス)
と名付けて販売。
これが大好評。
そこで DMG は1902年に
「メルセデス」
を商標登録。
1909年には
「メルセデスの星」
が登場して、こちらも商標登録されます。
ダイムラー・ベンツ の誕生
1920年代、ヨーロッパには無数の自動車メーカが群雄割拠。
今の中国のように次々に自動車メーカーが出現しては、消えて逝きました。
ここでドイツ銀行が
「厳しい競争に勝ち抜くには、業界トップ2社の合併が理想的」
と、助け船を出します。
両社も提案に同意。
1925年に両社が合併して、
”Daimler-Benz”(ダイムラー・ベンツ)
が誕生します。
初代社長にはベンツのキッセル氏が就任。
ただ会社の規模は DMG の方が大きかったので、株式は
DMG : BENZ = 2:1
の割合で再分配。
だから会社名もベンツ・ダイムラーではなく、
「ダイムラー・ベンツ」
になったわけです。
ヒトラーの愛車
ダイムラー・ベンツは幾つかの名車を生みました。
そのひとつがヒトラーの愛車
“Mercedes-Benz 770”
です。
なんと7リッターエンジンで200馬力。
重量はほぼ3トン。
このヒトラーの愛車、戦争を無傷で生き延びていたんです!
戦後、米国に渡ったんですが、ドイツ人の収集家が買い取り。
以後、未亡人が
「本当の正体」
を知らないまま、車庫に保管していました。
このヒトラーの愛車を発見した
「車ハンター」
が車の素姓を未亡人に伝えると、
「大量殺人犯の車に興味はない。」
と言うので、週刊誌にネタを売り込みます。
この記事を読んだロシア人の収集家が、プライーベートジェットでやってきてお買い上げ。
今でも所有しています。
メルセデス・ベンツ の誕生
以来、98年間は
「ダイムラー・ベンツ」
の名前で営業してきたんです。
ところが2022年、今の社長が
「自動車事業とトラック事業を分離する。」
と決定。
その自動車を売る会社名が
”Mercedes-Benz”(メルセデス・ベンツ)
になったんです。
“Dimaler Truck”(ダイムラートラック)
になりました。
まあ、ダイムラーが世界で最初のトラックを製造したので、
「理にかなっている命名」
ですね。
ベンツ社の設立が1883年ですから、メルセデス・ベンツは今年で創業142年。
ところが今、経営危機のど真ん中。
潰れないで欲しいですね。